初夏の海底


ノウチラス号にのり、初夏の海底を、和装で愉しんでみたいもんだ。
まるで必然のないシチュエーションながら、気分として、和服で海底にいるというのが面白い。
出来たら、沖縄の与那国島界隈の透明な海底がよい。
むろん、ノウチラス号はあくまでもネモの船であるから、どこへ行くかは彼に決定権があるのだけども…。
パッセンジャーの私としては、例の"海底遺跡"界隈をゆるり遊覧して頂けると嬉しさも増加する。
「天然なの? ホンマの遺跡なの?」
展望室の窓から眺めて頭を捻ったり揺すったりするのが… よい。
いや、きっと、ネモとても、この"海底遺跡"には興を持つに違いない。
布地を無駄にしない着物というカタチにも面白みを持ってくれるだろう…。
「いや、けども、それは動きにくいでしょ?」
ネモはきっとそう問う。
それでボクは、
「いやいや、着物は自己規制するものなんですわ。ある種の動きを抑制することで逆に優雅やら風雅を醸すわけで」
と講釈し、
「制約を課すことで反対に自由を得るという、いわば精神の衣装ですな。フォホッホッホ」
にこやかにお答え申しあげるのだ。
それでボク自身、ハタと、
「ノウチラスって、じつに着物が似合うじゃんか」
と驚いたりするんだ。