点と線

テレビ朝日が開局50周年を記念して二晩連続放送のTVドラマを作った。
放映は昨日と今日。
松本清張原作の「点と線」だ。
ビートたけしさんが主役の刑事になり、高橋克典さんと共演する。
ご存知の通り、「点と線」は鉄道トリックのミステリーの傑作だ。
ゆえに鉄道が多々、出てくる。
8月にこのドラマの撮影が岡山であり、ど〜いう次第か、ボクはたけしさんや高橋さんが乗る市電に乗り合わせている50代の和服の人物・・ という設定でもってロケに参加した。
岡山で撮影しているが、シーンは東京だ。
それも昭和30年。
岡山の市電会社に今は使われていないけど非常に古い車輌が一台あって、これに乗っての撮影だった。
乗客役は全部で10人で、ボクとピアノ調律師のYさん以外は地元岡山で演劇活動をやってる人たちだった。
知ってる方は知ってるだろうけど(笑)、ボクは日常ほとんどテレビを観ないので、最近の役者さんの顔も名も知らないのだった。
そんな失礼なヒトがエキストラとして撮影現場に出向いたワケだ。
ボクは初老のおじさん役として着物姿になった。
開局50周年を記念するというコトであるから、割りと予算もついてたのだろう。撮影日の一ヶ月前くらいに、こちらの肉体的サイズを問われてウエストサイズやら身長やらやらを通知してたら、撮影にはちゃんと衣装さんがついて着付けてくれた。
メーキャップの方も2人いて、市電に乗る役の人全員が昭和の30年代風な感じのメークとヘアに頭を加工された。中にはモミアゲをその場でカットされた人もいる。
ボクもなんぞ、加工されるかしらと期待したら・・、
「あなたはもうピッタリ!」
と云われてメークも髪型の変更もない。

なワケで、和装になってもメーキャップされるコトがないので、いささかヒマなボクはタバコを吸いに、ロケ班がたむろしてるトコロに行って、用意されたでかい灰皿の前でプ〜カプ〜カと一服だ。
二枚目っぽいエキストラさんが既にそこにいて、タバコをプ〜カプカやってたので、
「おい、今日は暑(あち)ぃなぁ〜」
と、岡山弁で一言声をかけ、
「あんたもウラジャ祭りなんか興味ね〜でしょ。うらじゃの日に撮影をあてたのも人だかりが出来ないコトを狙ってのこっちゃろ〜ね〜、ケケケ」
などと、その日に市内で開催される祭りの話をば、その人物にモノ申していたのだけど・・ それが高橋克典さんだった。
スマン。
知らなかったのだ。
てなワケで、たけしさんと克典さんを中心にして10人の我ら無名も古き良き市電に乗り、スタッフも乗り、撮影とあいなった。
設定は秋。
撮影は真夏。
したがって冬物の着物だ。
電車にはクーラーも扇風機もない。
驚いた事にちゃんとこの市電を走らせる。
いつのまにやら、通過の沿道には辻々にスタッフが立ち、一般車輌を規制しての大がかりな撮影であった。
しかし暑熱のさなかだから、汗がダラダラダラダラ・・・。
朝の6時過ぎに集合して撮影本番は9時過ぎから11時過ぎまで。

電車をおりて控え室にいる間はクーラーがあるからまだイイけど、とにかく撮影は汗との戦いとなってシンドイことこの上ない。
着物はビショビショだ。
カメラが廻らない間は、たけしさんと克典さんはスタッフが6人も7人も取り巻いてウチワでガンガンあおいであげてるのだが、こちらエキストラ10名は2人のスタッフが10名をあおいでくれてるだけだから、自ずと1人あたりの風量は少ない・・。
でも一方で、そのスタッフさん達も怒濤の汗なのだから文句はいえないのだ。
まして、いざや本番というさいは彼らスタッフは電車内に這いつくばって忍びの権化と化す・・。
これだけの苦労をした撮影だから、どのようなアンバイになっとるかしらと、昨夜の前半部の放映をば観た。
すると、岡山でのロケシーンは僅か数秒で、ボクはといえば、首から下が一瞬映ってすぐに次のシーンとなる・・。
ハッハッハ。
久しぶりにテレビをみて笑った、ゾ。
http://www.tv-asahi.co.jp/tentosen/

ちなみに、たけしさん、好演しております。いい感じ。