せんだっての二夜連続の放映でいたく関心を寄せたのは、53歳という年齢は、昭和の32年頃にゃ、すでに定年退職直前のオトシだったというコトであった。
ビートたけしさん扮する刑事さんは、上司から、
「もう無理しなくてエエ。もうじき定年だ」
と、肩を叩かれてる。
な〜んか愕然色の黒〜い雲で澱んでくような感じを、ボクはおぼえたね。
たかだか50年前じゃん・・。
その頃にゃ、定年は55歳だったのだ。
55歳になると、第二の人生を歩むという図式が社会の根底にあったんだ。
この前、このブログに、江戸時代には『初老』なるは40歳になったコトを指すのだと報告して、ある種の感慨を浮べたんだけれど、こたびの松本清張原作のTVドラマでは、なにやら痛切な痒みめいた感慨をボクは沸かせたね・・。
人間の寿命が伸びたんで、結果として定年も10年くらいノビちゃった〜って次第なのだろうけどね、寿命の伸びとは反比例で精神の年齢は遅延してんじゃん・・ と感じたワケなのだ。
何を隠そう、いま、ボクは53歳。
いいのかな〜、こんなんで・・ ってな哀切な気分がムクモク沸くわな。
今が昭和の32年頃であるなら、自ずとワガハイは退職間際の人物というコトになりまんがな。
ジョ〜ダン、キチ〜〜〜〜。
あ!
キツイという漢字って・・ ないのね。
・・ともあれだ。覚悟もなく自覚もなく53歳という年齢を生きてるボクは、昔の人は53歳の頃にゃ、覚悟も自覚もきっちりと内に秘めていたのであろうなと思って、痛烈な羞恥をおぼえるのだった。
誰でもよい・・ 1957年(昭和32年頃)に53歳だった人と、2007年を生きるボクは”53歳”という共通項のみを頼りにして、時空を超えて会ってみたいと思う。
彼、あるいは彼女はボクというカタチに驚くだろうし、ボクはボクで、その存在のデカサに、とりわけ、その精神面の部分でもって驚愕めく衝撃を受けると思うのだ・・。
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朝の4時とか5時に起きてる人は、いま、東の空にピカ〜〜ッと輝いてる星が一つあるのに気づくと思うのだけど、ど〜よ?
あなた、見たか?
そんな時間にゃ寝てるってか。
ボクは朝の4時とか5時は絶好調の時間なんで、このピカ〜〜をよく見る。
まるで遠方の強力な懐中電灯の光ってな感じなのだ。
この時間帯になると冬の星座の王様たるオリオン座も西の方角に傾きかけて精彩がないけど、ピカ〜の光芒を眺めるだけのために、ちょいと外に出るというコトもある。
むろん、寒いから、一瞥する程度で部屋に直ぐに戻るけど・・ そこに金星が光ってるというコトに何か意味もなく喜色が沸くのだ。
天文フアンでも星覗きの趣味もないけれど、暗天の、それも朝に近い時間に、誰のためというワケもなく、炯々黙々として輝いてる姿に、な〜〜にやら、凛(りん)とした豪奢をボクはおぼえるのだ。
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早や、12月だ。
数日前、某BARで新進のフラワーアレンジメントの作家に出会った。
この日本では誰もが知っているであろう高名な方を祖父としつつ、その重みの不快と愉快を充分に体感の上でパリに渡り、あちゃらの活け花を身につけて、この6月に帰国したという。
知らないコトであったけど、活け花というのは日本にのみあるワケじゃないのだった。
日本のそれが"家元"であったり"道"という、いわばはみだしたちゃイケナイ諸々の縛りの中で生息しているモノであるなら、おフランスでもって彼女が体得したのは、より自由で、より"活ける"の意味を皮膚の感触として伝えるものであった。
でだ。
彼女が某大手のデパートでおこなった家具と花のコラボレーション作品の写真を見せてもらって、フッと・・ 来年のコトをボクは思った。
自身にテーマを一つ与えるとするなら、『花』かも知れない・・ と思ったのだ。
ビートルスの「サージェント・ペパー・ロンリー・ハート・クラブバンド」のあのジャケットが、最近、3時間に一回くらいの割り合いで明滅していたのだけども・・ アレンジメントの作家に出会って触発され・・ おぼろに、テーマというコトに気がついた。
「サージェント・ペパー・・」はオ〜君起案による来年のジャズフェスのメイン行事の核となる構想の一つをボクが勝手に思いを膨らませていく工程でもって、フイにカツ〜ンと去来して、そのまま頭の中に居座っているイメージではあったのだけど、この若い作家に出会って、
「花だ!」
の、思いが強毅になった。
併せて、彼女にも魅了された。
こんなクリスタルな光芒をきらめかせる女性が、この岡山に居るのかと、いや、この岡山に帰って来たのかと感じるとヒシヒシ嬉しさが沸いた。
ビーナス、だ。
誰知らず真空の天空で、密かに、けれど絶対的な光度と硬度を放つ金星だ・・ と53歳は嬉しくなった。
てなワケで・・ この人をオ〜君に紹介したいと、ボクはイノイチバンに思ったな。