早朝の宝石

今頃。
朝の4時くらいに外に出ると、東の空の下の方に金星が登っているのが眼に映える。
眼を少し右上に転ずると、そこに明るく海王星が輝いている。
さらに視線を右へ泳がすと、月がやや低い所にいるのだけど、海王星と金星の二つの小さな光点がこの時間は王座にあるよう感じる。
金星のちょっと左下あたりには火星もいて、太陽系のお仲間大会って感もあるのだけど、なによりも海王星の輝きが濃いから、ちょっと見蕩れてしまうのだった。
天文の本によれば地球の4倍くらいのデカサらしい。
13個の衛星を従えた海王星ボイジャー2号が撮影した写真で見ると宝石めいたコバルトブルーに染まって美しいけれど、太陽からは45億kmも離れているから温められず、表面の温度はマイナス220度というから… 寒いなんて〜ものじゃない。
核がありマントルがあり、そして地表があるという火星や地球と違い、海王星はガスの層がとても厚くマントルの上に粘るような濃さをした水素ガスやらメタンが覆っていて地表やら地殻がない。
だから、遠方から眺めると、なるほどコバルトブルーの球体なんだな〜と判るけど、いざ実際にそこに出向いたなら、感覚としては、どこが表面やらよく判らないといったアンバイではなかろうかと思われる。明快な硬さが表層になく、ぶっちゃけていえば、人間の尺度では降りて立つコトが出来ない。
氷があるらしいから正しくは降り立てないワケじゃないけど、星を形成している1/3以上が濃密で冷たいガスゆえ、感覚としての表面はないに等しい。
梅の実を透明なゼリーにくるんだ丸っこい食べ物があって、海王星はそれに似通う姿なのだろうけど、ゼリーと違って表層がガスであるから、
「ここからゼリーで〜す」
ってな明快がない。
宇宙からユルユルと海王星に降りていくと、降りてるって感じじゃなく、いつのまにか潜っているみたいな感じになってるのじゃなかろうかと思われる。ズルズルと中に入って、やっと氷の上に到達というコトであろうと思われる。
その辺りの曖昧さが面白い。
曖昧でありながら確固たる惑星であるのが面白い。
観測によれば大気層では時速2000kmというトンデモない風が吹いているそうだ。
風速40mでも人間は大いにビビっちゃうけど、時速2000kmといわれると逆にピンとこないくらいに… すごいね、それは。
そのすごい惑星が朝の4時に東の空にいるんだから、見て損はない。
ほぼ永劫に降り立つことが出来ないゆえに価値ある宝石を眺めるワケだ。