食事するなら…


2001年宇宙の旅」のこの食事は、一度は食べたいとは思うけど、朝昼晩何ヶ月も続くと思うと… やはり勘弁して欲しい類いのものではなかろうかと考える。
メニューは各種あるのだろうけれど、なにしろペースト状だ。消化にはもってこいだろうし栄養価もキチリとしたものなんだろうけれども、こんな食事ばかりだと歯も胃も腸もすっかり軟弱になって、地球に戻った時に困るぞ… と心配になる。
映画「2001年…」は撮影中から、MGMでとんでもない作品が出来つつあるというコトで、諸々の宇宙関係者にとっては気になる存在であったらしい。
実際、NASAからは飛行主任のディーク・スレイトンやジョージ・ミューラーといったお偉方が撮影見学に出向いてる。

「2001年…」が撮影されている頃にはすでに宇宙ステーションの計画もあったワケだから、逆にNASAも映画に触発されるというコトもあったろう。
ジョージ・ミューラーは見学の感想として「これは東のNASAだよ」と驚きを隠さなかったそうだ。(ピアーズ・ビゾニー著「2001:FILMING THE FUTURE」)

スカイラブ計画は、米国初の宇宙ステーションというコトもあって、"宇宙での食事"に気が配られた。
なんせ"食卓"が用意されたのだから、素晴らしい。
意外なことに、スカイラブは現在のISS国際宇宙ステーションよりもはるかに広い空間を持ったステーションなのだった。
総面積では国際宇宙ステーションがはるかにでかいのだけども、人間の身動きが可能な空間の広がりという点においては、スカイラブはとっても大きな空間を要したステーションだった。
それゆえ、こんな写真が撮れるワケだし、船内において"船外モジュール"の実験も出来ちゃえたワケだ。
宇宙滞在中の野口さん達の写真を見ると、スカイラブのような広さがないのは一目瞭然でしょ。
ちょっと話をそらすけど… 人ってさ… どうなんだろ? 
数ヶ月を体育館の広さの空間で過ごしたさいの心のありよう…
数ヶ月を狭い四畳半ぽい空間で過ごしたさいの心のありよう…
どっちが嬉しいものなんだろか?
絵画的なもの、詩歌的なものは、どっちから濃く生じてくるんだろ?
ボクは宇宙ステーションでの科学成果なんぞよりも、人が感じる空間の広さに興味がある。人の感性というのはその環境の中でしか発芽しないワケだし、そうすると当然に、その人が知覚する空間がもたらす影響というのは絶対的な存在とも思うんだ。
狭いよりは広い方がイイ… と思ってる。
で、その広い空間をもったスカイラブの食卓。(o^_^o)
「2001年…」のそれとはまた違った感じがあって、これまた一度くらいは、この食卓で食べてみたいと思う。ヒーターも付いてるから熱いシチューも味わえる。

液の浮遊を防止するお醤油チュルチュルみたいなドリンク容器も"頼もしい"。こんな仕掛けで液体は浮遊しなくなるんだね〜。問題は、眼の前で反転したまま食べてる人かしら…。
この写真で宙返りしてるのはアラン・ビーン船長。(スカイラブ3・第2次クルー)
浮き上がらないように人を固定させる装置(足先をフックに固定した上で腰の部分も固定させる)がついた豪華な食卓ゆえ、NASAABCテレビを通じて食事の様子をテレビ中継したのだった。
宇宙ステーションでの生活が地上と変りませんよ〜、と宣伝するためだ。
けれど、NASAの思惑とは裏腹、ビーン船長はその装置は使わず、オチャメにも… 逆さまの宙ブラリンで食事するのだった。
その宙ブラの、アポロ12号で月に行った大ベテランの船長を前に新人宇宙飛行士で医学博士であるスカイラブ3のギャリオット氏とルースマ氏は神妙な顔で食べていらっしゃる。
なんか懸命に… 眼の前の宙ブラリンを見ないよう必死な思いでパンにバターを塗ってるように見えるぞ、この写真。
正直なところ、とても気持ちが悪いであろう光景だと思う。お酒を呑み過ぎると天と地がグルグルと廻って、アヘ〜〜ってなコトになっちまうのだけども、酒を呑まずとも、理性として無重力は解せられるけれど、感覚としての向きや位置関係が狂おしいからね… 眼の前のビーン船長を見てりゃ… 気分が悪くなるのではなかろうか…。
じっさい… この2人はひどい宇宙酔いにかかるんだ。
で、おかしいのはね、ビーン船長もひどい宇宙酔いにかかるんだよ、このアトに。
\(^-^)/
視覚としての広さが、この場合は逆に作用して宇宙酔いを引き起こしたのかしら…。