ノーチラス-01


ボクはず〜〜〜っと、子供の頃には女の子も男の子も同様な本を読んでいたと思い込んでたよ。
海底二万里」や「15少年漂流記」や「トム・ソーヤーの冒険」なんぞを、だから女の子たちも読んでるだろうと思い決めてたワケだ。
ところが、どうもそうではないらしい。
試しにと某夜、バーに居合わせた女性陣に、30代もいたし40代もいたし50代もいたんだけども、何気なく聞いてみるに、ことごとくが、
「タイトルは知ってるけどね」
「読んでないわ〜」
な反応ばかりで、彼女たちが子供の頃に読んだのは、「アルプスの少女」だったり「フランダースの犬」だったり、「小公女」だったりするのだった。「にんじん」というのもあった。
逆に、ボクはそれらに接しない。
そこれそタイトルは知っているけれど、子供の頃には、そ〜〜んなモン読めるかよ〜なアンバイだったのだ。
目線が違うんだね。
なので… ジュール・ヴェルヌを女の子たちが"愛読"していなかったというのはちょっと小さなショックではあったよ。(^_^;
海底二万里」に関して申せば、
「潜水艦で戦う話でしょ」
と告げた人もいたんで、フッフッフッ… 俯いて苦笑するしかない。
ネモという、実に不思議で魅力ある男が出る小説なのにな〜… とひっそり思ったりするけど、これだけはシャ〜ないですな。
で、そのかつての少女たちの誰もが読んだコトのない「海底二万里」に登場のノーチラス号なんだけど、近年、再読を繰り返す内に、実にカッコ良い船に思えてきた。
もちろん、原作でのノーチラス号だ。
子供の頃には実はさほどにカッコ良いとは思えなかったし、むしろディズニー映画のあのカタチこそがベスト最高と感じてた。

実際、ディズニー映画のノーチラス号は素晴らしい。
あれは映画史における船舶デザインの頂点に思える。
SF映画という括りの中での乗り物として、デザインとしての金字塔をあげるなら、ボクは下記を列挙したい。
ディズニー映画「海底二万里」のノーチラス号
宇宙戦争」(1953年)のマーシャン・ウオー・マシーン。
2001年宇宙の旅」のディスカバリー号
も1つオマケとして、「ブレードランナー」のポリススピナー。
だいたい、こんなもんだ。
そのディズニーのノーチラス号は、されど決して原作に忠実というカタチではないね。
エッセンスの抽出が高度にうまく働いた例証としてのカタチだ。
原作はかなり違う…。
海底二万里」が刊行されたのは1870年(明治42年)だ。
なので、同書は141年前の小説なのだから、そのカタチは今の眼で見ちゃうと古風なのだ。
でも、その古風が逆にボクには鮮烈なものに映り出してるんだから、オモチロイ。
30代や40代の頃はそうは思ってなかったんだけども、50代になってから、この原作版のカタチに強い新鮮をおぼえだした…。もう1度、チャンとしたカタチとして模型に定着出来ないかと思いはじめた。
カタチとしてどうかしら? と、その視点でのみ再読してみると、あんがいと、ヴェルヌは細かく船を描写していて、それを抜き書きして図にまとめるコトが可能なのだった。
資料として残っちゃいないけども、ヴェルヌは小説を書くさいに、おそらくは、内部図解的なものを含めて、ノーチラスの絵を紙に描いていただろうと推測する。
本文中に船内の部屋の位置やサイズが出てくるけれど、それはことごとく図化出来るんだ。頭の中だけにあったイメージではなくヴェルヌ自身が、たぶんにラフなものではあったろうけど、絵を描いてると想像出来るのだ。
基本のカタチはここに紹介するような葉巻型だ。
全長は70m。
今どきの潜水艦の大きさを知っている眼としては、けっして大きくないのだけども、141年前の"空想"としては実にデカイ物体なのだった。
ちなみに当時の最大の乗り物はグレート・イースタン号という蒸気船で、これは全長が211mあり、ヴェルヌはこれに乗船したことがある。
この乗船時にたまたまなれども、本船で大西洋海底電線の敷設作業を担ったサイラス・フィールドが乗っていて… ヴェルヌはその船旅(米国への旅行)の間、サイラスにインタビューを繰り返したようである。
この時のインタビューで得た造船の知識が「海底二万里」の基本となっているらしいのだ。