みたき園


ほぼ1年ぶりに鳥取は智頭の山の中にある「みたき園」に行ってきた。
この場所とその佇まいの素晴らしさは、昨年度の、岡山ジャズフェスティバルのブログにも記したけど、ボクはやはり、ここを訪ねるや、体内に溜まっていた澱(よど)みめいた何事かが清浄になっていくような治癒される感覚を、またおぼえたのだった。
今回は、飲み仲間たる気心知れたオジサンにオバサン達(^_^;という構成でもっての7人で1台の車で出向き、車中においても「みたき園」においても終始ガヤガヤワイワイ、かの白雪姫の7人の小人どもが旅に出たみたいな、
「ハイホ〜、ヘイホ〜♪」
な、賑やかこの上ない道中であったのだが、「みたき園」の場所と佇まいと味の良性に、いずれの小人どもも大いに満足し、かつ、堪能し、かつ、いずれもがそれぞれに何事かを清浄されたのであった。
岡山市内から「みたき園」までは車で3時間はかかる。
だから往復で6時間。
「みたき園」に滞在するのがだいたい3時間くらいだから、朝10時に集合して出かけても帰りは晩の7時過ぎというコトになる。
お昼ゴハンを食べに出向くというのが目的だから、この目的達成がためにほぼ1日を費やすというコトになってしまうんだけど… ぜ〜〜んぜん、問題ない。往復6時間を費やす以上の価値をボクや他の小人ら〜もが認めているからだ。
ここの食材は当然に山菜と川の魚なのだが、徹底して地産地消の地場のものだ。
早朝に採られたものが卓に並ぶ。
今回、ちょうどたまたまに、鳥取の地方紙『鳥取食探』の編集部の方が取材にお越しで、その旬な食材を写真に納められていた。
それでボクらは、お越しになった編集部の若くて綺麗な女性2人に、ま〜るで白雪姫にまとわる小人みたいに、やはり、
「ハイホ〜、ヘイホ〜♪♪」
賑やかかつ騒々しくに、ボクらなりの親愛を示したのであったけど、彼女たちが写真に収録していた食材を、ついでゆえにパチリとデジカメに便乗で納めたりした。
竹の大きな笊(ざる)に乗せられた食材のこの豊穣はどうだ!
普通、取材において、これ程にたっぷりと盛られた食材というのは、あんまり出てはこないもんだ…。
ジャズフェスのブログにも記した通りに、ボクは基本として肉食を好むタチで、淡麗とか山菜の滋味といった味覚にはやや… うとい方なのだけども、ここ「みたき園」ではそれが変化する。
すごく美味しい!! とビックラ・マークが2つつく程に舌が、その味覚を喜んでしまうのだから… 不思議なのだ。
その地で採れたものをその地で味わう。
ここ数回、ボクは「海底二万里」におけるノーチラス号のコトを記しているけれど、ノーチラス号船内における食の光景は、まさにその地産地消なのだね。
海で採ったものを海の中で味わってるワケだ。
「みたき園」は山の中で、山で採れたものを味わってるワケだ。
………
今回の来訪で、久しぶりに女将の挨拶を受けた。
ボクより1つか2つか3つは歳が大きいように思うけども、ボクは日本で一番に綺麗な人と勝手に思い決めている。
立ち居振る舞いがすごく優雅な方であるが、その上、こっそり盗み見るに、眉のカタチや化粧には、"田舎の人"ではない華麗さが加わっていて、ボクは彼女の中に見事なグローバリズムを見いだしたりもするのだったが、鳥取を、智頭を、すごく愛していらっしゃる気配のカタチが姿に顕わになっているし、何よりも彼女の采配による肌理(きめ)の細やかな接待(ここのスタッフ達の立ち居振る舞い)は、ちょっと類例がないのだった。
堆積した澱みが拭われていく感覚は、だから山菜の美味だけでなく、ここの、女将とスタッフ達の見事なコラボレーションによるものと思えて、何だかホントにウズウズするくらいな嬉悦をおぼえさせられるんだ。
かのノーチラス号船内には当然に美しい女将はいないけども、アロナクス教授や彼の助手や銛打ちのネッド・ランドが味わった海の産物の豊穣な味覚の素晴らしさの、その感覚をボクは山の中の「みたき園」でもって、似通う嬉悦として味わうのだった。
ふき、たけのこ、里芋、うど、鱒(ます)の刺身、ヤマメの木芽焼き(きのめやき)などなどの巧妙にして絶妙な味覚…。
今回、ボクはそれですっかり気持ち良くなって、その上に、女将からの差し入れとしての竹筒に入った冷酒を頂戴したもんだから、これでいっそうに上手に酔ってしまって、園の中にあるカフェでボクはストーブのぬくもりに暖まるまま、仲間に、
「おい、起きろ〜」
揺さぶられるまで、コックリコックリ寝入ってしまうぐらいなのだった。
この日は、お天気が安定しなくって、雷がまざった雨降りで、山の中の中たる「みたき園」界隈は寒く、囲炉裏と灯油ストーブが灯されていたんだ。
以前に、ボクは女将から、
「ここの滝も、アレもコレも」
と「みたき園」の増築過程を、
「けっして自然なものをそのままに利用したワケではない」
という旨のことを聞いてもいたけど、1971年頃より構築されて早や40年を経過する、その屋根の上が苔むした佇まいは、もう充分に"自然そのもの"なのだった。
「みたき園」は、何しろ雪深い地にあるから、12月頃から3月いっぱいは閉園されている。
季節に準じて、閉ざされてしまう… というのもとてもイイ。

当然にここにも電気が通っているんだけども、このような良き環境を担う電力は、やはり今の危なっかしい原子力発電ではないのが望ましい… と、ボクはまたぞろヒッソリ思ってしまったワケなのだ。
実のボクは、ホントはこの「みたき園」を多くの人に紹介したくないという変な気持ちがある。
ノーチラス号ではないけど、『ボクだけの秘密の場所』めく感覚があるんだ…。