わずか10分で

ちょっと前のニュースで、国際宇宙ステーションのきぼうと米国の観測衛星スウィフトがほぼ同時に、過去にエックス線が見られなかった場所から強烈なエックス線が10分ほど放射されたのを検出したというのがあった。
39億光年も遠方での出来事だ。
こういった観測データをライブで得られたのは、はじめてのコトらしい。
ライブといっても、39億光年という遠方ゆえ、早いハナシ、それは39億年前の現象をいま見た、というコトではあるのだけども、すごいハナシなので、ちょっと茫漠とした。
ブラックホールに星が吸い込まれて破壊されたワケなのだ。
星というのが、どれくらいのサイズなのか、幾つも惑星を従えた恒星なのかも判らないけれども… ともあれ星が1つ、たった10分で粉砕された証拠を人類は得たワケだ。
たった10分というのが、すごい。
仮にそれが地球サイズの地球的な星と思えばどうだろう。
この地球がたった10分で壊れ、断末魔の悲鳴としてその10分の間、エックス線を放射し… それでジ・エンド。
跡形もなくなるんだ…。
この壮烈っぷりは、規模がでかすぎて想像が及ばない。
A.C.クラークはかの「幼年期の終わり」の末尾でもって崩壊する地球を描いていて、それはそれで濃い衝動と詩篇的イメージでもって何事かをボクに植えてはくれたけども、どうやらブラックホールに呑まれる星の10分間は… クラークの描いてくれた地獄絵よりはるかに強烈かつ強靱なもののようである。
実にチマチマとした日常の中にボクらは身をおいて、それに一喜一憂を繰り返しているのだけども、眼を遠方に向かわせると、宇宙ではそういった壮大で苛烈で、けれど法則にのっとった事象が刻々に起きているようだ。
なので何だか、日常がアホらしくなる。
いっそ、10分で崩壊してしまえばイイやと… 少しヤケっぱちな感情も湧いたりする。
でも、その10分前に、せめてゲソ天のっけた天ぷらうどんは喰いたいな… とアホなことを思ったり。