1月の初雨

岡山市地域は今年初の終日の雨。
寒いけども、この久々の雨(ホントは6日か7日の夜中にちょっとだけ降ったけど)、悪くない…。
路面、屋根、車… すべてが濡れているのを見ると、
「ぁあ〜、水の惑星」
ってな感じをシミジミ感じる。
雨なんて、ありふれた自然現象なのだけども、これはあくまでも地球という環境における"ありふれた"カタチなのであって、すくなくとも太陽系ではウオーターが降る環境はないのだから、だから視点を遠く遠方に置くと、これは希有な現象というワケだ。
何かが降る… というコトならば、例えば木星の衛星タイタンでも雨は降る。
きっとマチガイなく、今この瞬間にも、タイタンのどこかでは大粒なのが降っている筈だけど、これはウォーターじゃなくってメタンだ。
透明度の高いメタンが大きな粒になってジャバジャバ降っている。
地面には水たまりというか、メタンだまりが無数に出来てる筈。
メタンはウォーターとは分子構造が違うから、これはウォーターのように何にでも容易に混ざるというモノではない。
水は何にでも混ざりやすいから、だから濁る。
色々なモノをすぐに含み入れる。
メタンはそうじゃない。
お醤油をたらしても、それは混ざらない。
赤いインクを落としても、それは溶けてくれない。
なのでメタン水は、徹底して透明だ。
どこまでも澄んでいて、だからメタンの雨がどっちゃり降って、水深100mの水たまりになっても、100m先の底はクリア〜に見えている。


ボクら人間の眼は、大気や水のよどみを見て、遠近を掌握する仕組みになっているから、タイタンの徹底した透明なメタンの海やら湖やら水たまりに接したら、おそらくは困惑をする。
「なんか、風情が違うわ〜」
と、つぶやきたくなる筈。
地球では、池がよどんでいるから、ボクらはそこに"物語"を見いだして、詩なり句を編む。
ウォーターが何にでも混ざるという性質が根底にあっての。詩句だ…。
タイタンは様相が異なる。
見えそうで見えないといった神秘な感触がない。
まざってくれないから、ボクが点じた赤インクはいつまでも赤インクのまま、メタン水のどこかで浮遊する。異物として、浮くか沈むかするだけだ。
一方で、この景観はやはり、ちょっと魅惑的だろうとも思う。
巨大な木星がそばにいるから、その反射光は受けつつも、太陽からは遠いので地球のように明るくはない。
赤紫かオレンジ色か、そんな紅っぽい淡い色調に全体は染まっているらしい。
だからメタン水にもそれは反映され、我らの眼には赤っぽく、あるいはピンクっぽくうつる筈。
淡いピンクの徹底して透明な海。
芭蕉や蕪村を連れてツアーに出たら、彼らはどう句を編むだろうか?
「これは詠めませんな」
と、蕪村なら拒絶するかもしれないな…。
「人がいての句ですぞ」
と、睨まれるかな…。
そんなコトを、スーパーに買い物に出かけて車の中から、煙るような初雨を眺めて思った、よ。
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写真:NASA