バスが通り過ぎてゆく


ものすご〜く久しぶりにバスに乗ろうとした。
雨天。
午後1番で、市主催の某音楽祭のための会議があるのだ。
本職は模型をプランニングなのだが、そんなのにも深〜く関わってるのだ。
いつも、この会議へは自転車で出向く。
でも今回は、雨だ。
それでバスを選択した。
宇野バス。
時間を調べ、小銭を用意してと、意外とコマメに準備する。
小銭はポケットに入れてスグに出せるようにする。
実に細やか。
傘さしてバス停まで歩いているさなかにも、1度か2度、そっと、ポッケに触れて、
「うん、入ってるな」
確認したりする。
緻密と繊細が洋服を着て歩いてるようなもんだ。
用水路脇を歩き、民家を左右に少路を抜けて、バスの路線に出る。
がぁ、しかし、横断が出来ない。
雨天ゆえか車の通行が多い。
と、左からバス来ちゃった。
こちら、乗るためには道を横断しなくちゃいけない。
でも、渡れない。
宇野バスは速度を落としたものの、停留所に人がいないを確認して、そのまま… 走ってった。
「うっそ〜〜〜」
周到な準備と計画がダイナシだ。
驚愕と失望と落胆と腹立たしさを抱えて取りあえずバス停まで歩を進め、時刻表をみやると、ネクストは35分後だ…。
我がダンドリにネクスト便の搭乗はないゆえ、これは調べてもいなかった。
「会議、間に合わんじゃん」
平静を装いつつ、歯噛みしつつ、引き返し、カーポートの車に乗った。
雨天に車を運転するのは好きでないのだ。というか、雨天では車の量が増えて駐車場に入れるさい待ち時間有りが嫌いなのだ。
ゆえにバスでGOGOを選択したのだったが… ダンドリ丸つぶれ。
苦々しいったら、ない。
その昔、若い織田信長さんは2千人の兵でもって、2万人(5万という説もあるけど)の大軍団を率いた今川義元さんを討ち取ってしまったワケだけども、その今川さんの口惜しい気持ちが… こういう場合、チョイわかる。
その時も雨だ。
準備万端整えて2万以上の兵を従えて、小さな織田家を潰しに出て来たのだよ。
2万 VS 2千という量で圧倒的勝利は眼に見えてたのだよ。
だから悠々、織田の領の直前でご飯。ランチ・タイムだ。

2万人のご飯を炊く。
どえらい量だね、これは。
薪を拾い、火をたく。
でも雨だからね。
火、なかなかつかない。
煙ばっか… 出る。
やっと、つく。
その頃にはもうデッカイ鉄釜やら小っちゃい鉄釜やらが幾つも幾つも幾つも幾つも… 用意されて、お米も研がれ、お水も頃よく張られてたでしょ、な。
なので今川軍はお水がある場所でランチ・タイムだぞ。一説に桶狭間の高台で休憩したというのがあるが、ボクは逆と思う。谷間(たにあい)な川の流れがないとゴハンは研げないぞ…。
お1人様1合として、およそ150g。
それで足りる? オカズないよ。
「これっくらいの〜〜♪ おベントバッコで〜〜♪」
と、遠慮しちゃいかん。戦の前だよ、腹ごしらえは充分でなきゃ。
じゃ、2合を食べるとして300g。
これが2万人だから、全部で6000Kg。
米俵は概ねで1俵は60Kgだから、この場合、100俵が消費されたろうな。
エッサホッサとこれをそこまで運んだ馬にも食べさせなきゃいかんし、ともあれ、2万人の野外食は大変だ…。
で、釜が煮える。
フタから白濁の泡がこぼれる。
グツグツして香ばしい匂いがそこいら中に広がる。
そこへ、やって来ました〜必死の形相、信長さんと2千の兵。
今川さん他2万の皆さんは、
「うっそ〜〜!」
だったでしょな、やっぱり。
ビックラして皆な逃げる。
ア〜〜ッという間に信長さん達の馬は本陣をつく。
「うっそ〜、やだよ〜っ」
と、云う間もない勢いで首と胴体が分離した今川さん… ダンドリだいなし。ご飯食べず。
で、
「せめて茶碗にいっぱいは…」
の、残念がバスに乗れなかった残念に結ばれるワケ。(^_^;
この2つは規模のデカサがあまりに違うけどもさ、「非常に残念」であったには違いないワケ。今川さんの場合は、非情でもあったワケで。
ま、そのように、会議に向けて運転しつつ考え… 自分を慰めたというコトで今日は、おしまい。