一日遅れのエイプリルフール

騙されやすいタチなのかもしれない。
そう痛切に感じさせられた事件が過去にあって、それは90年代の半ばだったか、アップルからジョン・スカリーが去って、アメリオというショボな人が経営責任者だった頃の某年の4月1日だ。
スティーブ・ジョブスがアップルに復帰!」
との情報がネットにあがって、ボクは狂喜して、アチャラの友やらコチャラの友にメールしたり電話したりして、何やら嬉しさを振りまいたのだけども、たちまちに、
「ぁあ、それ、エイプリルフールでしょ」
な、返事が届いたのだった。
ガッチョ〜ン。
それでたちまち、ボクは恥ずかしさと口惜しやな、イヤ〜な感じに一挙に見舞われて、腹も立つは、沈むような面持ちにもなるはで、
「グギ〜〜」
唸るやら吠えるやら、その頃に読んでたスカリーの自伝を床に叩きつけるやら、逃げ場を失った手負いのイノシシみたいに部屋をクルクルクルクル廻って、
「ワ〜〜ン!」
と、ほたえたのだった。
もっとも、この手ひどい事件の2年だか3年後だかにジョブスは本当に復帰してきて、ボクはそれである種の溜飲をさげたのではあるけれども、ともあれ、この事件を契機に4月1日は、アラートが鳴り響く日として、濃く印象づけられてしまったのだった。
以後、4月1日は危険極まりないと、外出せず、人に会わず、ネットも開かず、ひたすら部屋にこもって翌日の到来を待つといった、いわば厄日としてウッチャッてきたのだ。
で、昨日(4/1)が今日になるチョイ前。
ほぼ1日が終了しつつあるので、もうイイでしょ〜と、友達のブログを見たら、ライブの告知をしてるじゃない。
ご自身の子供時代の写真を巧妙に使っての告知だ。
ヤンチャな気配とかすかな昭和の匂いがミックスして、なかなか良い写真だった。
で、
「え? オルガンで次は演るの? そら〜、おもろい」
と、ボクは咄嗟に… ストレートに受け取った。
10秒と経たぬ内に、写真に付随のコメントを読んで、
「いっ」
「うっ」
「ええっ」
1本とられた間抜けな自分を自覚して、20年ほど前の暗い過去をよぎらせたのだった。
さすがに20年前に較べて我が輩は老人になっているから、もう策略に堕ちたイノシシみたいにクルクル部屋を廻らないし、タハハッと笑っちゃう大いなる大河としての内なるデカサも持っちゃいるのだけども、心の底では、
「きちゃま〜。なんでこんなコトにエネルギーを費やすっ!?」
引っかかってしまった間抜けを隠して、OH君ジョークを責めるのであった。
けれども同時に、ちょっと懐かしい気分もわいてきた。
本棚のアチャコチャをまさぐって、もう読むコトはないであろうスカリーの自伝を引っ張り出し… 
「メチャに大昔じゃなかったんだな〜」
感慨に耽りつつ、スカリーとジョブスは… 思い返すと、エイプリルフールのような関係だったな〜とコジツケタ。