ゆすらうめ2012


今年も、ユスラウメに花が咲いた。
剪定しないから、たくさん花がつく。
だからこの花が落ちて葉が茂れば実もたくさん成るのだろうけど、味は悪い。
去年がそうだった。
粒の甘みを増すには、容赦なく枝をカットして、ある種の抑制を樹木に強いらなきゃいけない…。
それが嫌だというワケでもなく、ただただ無精で放ってるのが実情だけども、花がつくと、やはり、なんだか、
「春がきましたな〜」
てな感じが濃く感じられ、嬉しい。
小さい庭だけども背の高いシュロがあるので、花を見つつ、シュロを見つつの、束の間の"花見気分"も味わえる。
去年は、この花が咲いた頃は、震災の苛烈が進行中で、壊れた発電所がもたらした害悪を毎日テレビやらネットで見たり読んだりするたびに、波紋めいた憂鬱をおぼえ、一方で、何事も知らぬげにそうやってユスラウメに花がついているのを、ちょっと不思議に思ったもんだった…。
それで1年がどうにかうつろって、また花が咲いた。
シュロも背が伸びた。
なぜかボクは、東京の新しいタワーにまったく興味をもてず、ましてやカッコいいとはチィ〜〜ッとも思えずで、タワーの王者は今もって「東京タワー」だと密かに思い込んでいる。
車で東京に出るたびに、目的地がビッグサイトやら幕張メッセの場合は、首都高で必ず東京タワーに接近するから、いつもボクはそこで、
「ぁあ、東京だ〜ァ」
な、感慨を湧かせる。
東京タワーに最接近出来る六本木界隈を通過するのはアッという間ではあるけど、左側に見える赤い塔の存在を意識しつつの、そのアッという間にはたらく感情の動きが… ボクは好きだったりする。

で。
シュロ。
ユスラウメ満開の背後のシュロ。
悪くない。
先日のような強風時には、倒れるのではないかと不安もあるのだけども… 日々の中の景観にこれがあるのは… 嬉しい。
東京タワーへの憧憬とこのシュロへの愛着は、たぶんどこかで通底しているんだろうとも思う。
______________________________
近頃は、諸々に失望をおぼえるコトが多々で、それが日増しに増加していて、どんどこどんどこ鬱屈し、くわえて怒りの色合いさえ染み出してきて、
「もう、ホントにこっから逃げ出して〜〜!」
な暗い気分に浸食されて、
「これはやばい」
と、バカな子供がするような、『住んでみたい国はどこ?』みたいな連想ゲームをこっそりヤッてみたりもする。
気分のバランスをとらねばな反撥作用と判っていつつ、しばし、そんなバカな夢想に浸って、その結果、
「あれ? どこにも住みたい国がね〜じゃんか」
の、結論にいたって、またガッカリガックリの輪がボヨ〜ンと広がるのだった。
逃げ場がないのか… との結論にションボリしつつ、でもまた、眼前で、陽光を浴びて葉を茂らせたシュロやら花満開のユスラウメに、ちょっとだけ救ってもらうような安堵をおぼえたりと… 気持ちは春の天気みたいにコロコロ揺れる。
『梅咲きぬ どれがむめやら うめじゃやら』
蕪村はすごい。
__________________________
さてと、今夕(4/7)は城下公会堂でのライブ、「クレーの天使」。
谷川俊太郎の詩を、ピアノの矢野誠とキーボードのひらたようーこが謡う。
どんなライブになるか、愉しみだ。
日本語はやはり良い。
それを再確認したいとも思う。