満月の早朝にステーキを平らげる


日曜の朝4時。
外はまだ真っ暗で沖天高くに真ん丸な月が光ってる。
あと数時間後に、自分は巨大なロケットの先端に乗って、そこへ向かう…
という想定を念頭に描いて、アポロの時代をしのぶ。
この場合、肉を焼かねばいけない。
ステーキを食べなきゃいけない。
以前にも書いたけど、アポロ計画では、飛行士たちは発射される当日の早朝、ステーキを食べるコトになっていた。
マーキュリー計画で米国初の宇宙飛行に成功したアラン・シェパードが、打ち上げ当日にステーキをたいらげ、以後、これがいわばゲン担ぎとして、定着した。
起きて、すぐの時刻に、コーヒーと共に肉を食う。
今の、スペースシャトルの時代になってからはこの習慣は取りやめされ、"健康管理"に基づいた軽い食事が出る。
なので… つまらない。
寝起きのステーキの豪快と爽快がない。
今に残る、アポロ時代の写真を見ると、早朝の寝起きだというのに、それぞれ飛行士たちは元気いっぱいな様子でナイフとフォークを持っていらっしゃる。

それを真似、朝の4時に肉を焼いた。
ジュジュジュジュジュ〜〜〜。
コショウふりかけ、ジュジュジュジュジュ〜〜〜。
アポロ飛行士たちの肉は、ぶあつい。
ボクのは… 薄い。
ご予算の都合で、薄い。

が、気分はアポロだ、宇宙飛行士だ。
肉を喰らって元気だす!
この70年代風味な活力が、いいでないの。
スペースシャトル時代になってからは、飛行士たちはお揃いのシャツを着せられ、朝食時の光景は撮影されず、食後だか食前に、お人形みたいな笑顔で記念撮影されたりしていて、実にま〜、お気の毒。
去勢されて温和しくなっちゃった感が濃厚で、それもまたつまらないのだった。
システム化された強大な装置の中にあって、”人間個人”をさほどに感じられなくなってしまった気もして、それが残念に思えるのだった。
なので、ボクはアポロ時代をしのんで、朝の4時にお肉を食べる。
残り物のサラダをそえ… ついでに発泡酒も1本。
酒気帯びの確信犯ゆえ、これで月に向かうロケットに搭乗出来ないけどさ。

※ 写真:NASA
上から順に、アポロ11号、13号、15号のクルー達のステーキ朝食の様子なり。