深海の銀色・大王イカ


「深海の超巨大イカ
一部はすでにネット上の映像として見てはいたのだけども、NHKスペシャル番組は迫力があって、愉しめた。
何より嬉しかったのは、巻頭でジュール・ヴェルヌのかの挿絵が登場したコトだったのだけど、この番組の前々日だかに、本ブログのコメント欄にてこのダイオウイカに触れていたもんだから余計、感慨も大きかった。
番組内でも1つの驚きとして語られていたけど、ダイオウイカの金属光沢は、何か変な表現だけども、「自然のものには見えない」感触があって、これにも眼をはらされた。
何年だか前に、彫刻家と彼の知り合いの船でママカリを釣に小豆島近くに出かけ、エサのないハリだけの道具で何匹も何匹も何匹も釣って釣って釣り上げて、
「いったい、この海の中にはどれだけのママカリがいるんだ?」
と驚愕に近い鮮烈をおぼえたことがあるのだけども、その時の、海中から大気中に出てくるママカリの銀色を、ボクは思い出した。
それはホントに、シルバーな、金属めいた光沢でピカピカに光っていて眩しく、その時も、「自然のものには見えない」感じにうたれたのだけども、よもやダイオウイカもそうであったか… とオドロイタ。
真っ暗闇の深海に、このシルバーでなければいけない理由があるんだろうか?
それほどに、テレビを見ているだけでも、まばゆさめいた感じがあってオドロカされた。

今回撮影されたものは全長がおよそ6〜8mのものであったようだが、記録に残る最大のものは全長が18mであったという。
というコトはそれを上廻る、まさに"超大型"なヤツが生息しているコトはほぼ確実であろうから、ブログのコメント欄にも記したA.C.クラーク幼年期の終わり」に登場の、このイカとクジラがからんだ模型をカレレン総督が欲して母星に持っていこうとする件りが、またぞろボクの体内でピカピカ光るようなアンバイなのだった。
この超巨大な深海の、文字通りの大王たるイカは、されどクジラたちのエサでもあるワケで、その辺りの消息をクラークは短くも端的に実にうまく記していて、いまさらながら、その洞察には感嘆させられるんだけど、我らがジュールス・ヴェルヌは100年以上前に、このイカを小説中に登場させて1つのクライマックスとしているんだから、やはり偉いじゃなイカ…。
このでっかいイカの足と多々付随する吸盤の、ものすごい威力をヴェルヌは書いているんだけど、今回のNHKディスカバリーチャンネル合同企画番組では、それをマッコウクジラの顔で描いてた。
取材された大きなマッコウクジラの顔面に幾重にも傷がある。
規則正しく点々とした痕跡として、そのマッコウクジラの眼元には傷があって、それはこのクジラとダイオウイカの格闘を物語っているワケなのだ。
上記の通り、ダイオウイカは常に被害者の位置にある。
一見、イカの方が手強く見えるのではあるけれど、深海での死のダンスは常にクジラが勝利するようなのだ…。
とても興味深かったのは、その顔に傷あるクジラに苦労してムーヴイカメラを取り付けて、行動を観察するというシーンだ。
予想の通りに、クジラはエサを求めて急速潜行する。
どんどん一気に潜ってく。
それを映像として観られたワケだからビックリだけど、仲間のクジラがどうやら、その異物たるカメラに気づいたようなのだ。
で、仲間がどうしたかといえば、急速に潜りつつ、このカメラがくっついたクジラに体当たりをするんだ。
それでカメラが外れて… クジラの視線からのイカとの遭遇はオジャンになるんだけど、いいじゃないですか…。
仲間(家族か)思いのクジラの行動は観られたワケだ。
と、それにしても… 深海。
今回の撮影は800mを限界とする潜水艇でのものだったけど、ダイオウイカは当然に800mが限界じゃない。
やがてカメラから離れ、静かに、よりディープな真闇に消えていったイカの姿には、何か一種の荘厳さがあって、これまた心うたれたのだった。
いったいに何mの深さを根城にしているんだろうか? と単純に思いつつ、ボクはジェームス・キャメロンの「アビス」も思い出してた。
これは海をよく知ったキャメロンさんゆえのシーン満載の映画だったけど、より深い場所へと未知なるものが移動していく件りに、ホンモノのダイオウイカのシーンとが奇妙にダブッたりもした。
このNHKのウラ番組は彼の「アバター」だったけど、この偶然もまたオモチロイや。

近頃、これは私事ながら、濃い関連なものがある種の偶然で結合するような化学反応めいたコトがよく起こっていて……、このブログのコメント欄に記してたら、こんな番組がすぐにあったり、年末頃から急にデビッド・ボウイを集中的に聴き出してたら彼が10数年ぶりに新作を発表したり、これも年末のことだけども、ある仕事の依頼を受けて、「これは久しぶりだな〜」と思ったら、その翌日に、この仕事の大本となる英国の某プロデューサーの訃報に接したりと……、なんだか不思議がよく起きる。