あれっ?

数日前。
朝一番。
坊さんがやってきて、春の法要。なき父の仏前で読経。
お線香の香り。
このお寺さんから、数週前にお手紙がきて、お寺の駐車場配備について1500万近いお金が必要で… 檀家の皆様に御協力を願う… との内容。
一口3万円なり。
正直なところ、嬉しくない申し出。
でも…。
う〜ん…。
は〜…。
結局、協賛したものの、宗教法人って、イイよな〜。"有り難い"よな〜…。
で、読経の"礼金"もチャンとにこやかにお受け取りになる。


土曜の午後。
懇意にしてる某ミュージアムの館長がこたび定年退職というワケで、記念という次第でもないんだろうけど、彼の講演が行われた。
同館の立ち上げ時からズ〜〜ッと彼は館の運営に携わってもいるし、その立ち上げの過程でボクもごく末席ながら参加して、当時の市長にア〜ダコ〜ダと申してもいるから、あれこれ個人的にも思いは深い。
なので、ひょっとして面白いハナシもあるかと思ったけど… 無難なラインでハナシは終始。
ひどく面白いというコトもなかったんだけど、幾つかの数字がハナシに登場して、多少、
「ほ〜っ」
ってな感じではあった。
市長が変わり、館そのものが、いわば事業仕分けの対象となった顛末などなど… いささか考えさせられる事柄もチラリ。

黒字か。
赤字か。
という単純な線引きでミュージアムを括ってはいけないのではあって、そこのところが決定的に重要なのに、アンガイと… 理解されない諸々に彼はちょっと… 哀しげである。
けども、大人だ。
ストレートにそれを嘆かない。
あらためて思うに、100万の人口を抱えた政令市政都市たるこの岡山市で、岡山市そのものが運営する博物館が幾つあるか…。
実はたった2つだ。
オリエント美術館と岡山シティミュージアム
この2つのみ。
岡山県そのものが運営の博物館もあるから、総数はもっと多くなるけども、市という組織が運営しているのは、たった2つなのだ。
なんだか、誇れないじゃないか。
比較としてあげるには何だけど… 例えば、ドイツはベルリンに幾つ、ミュージアムがある?
な〜んと、55だ。
美術館も博物館も市立も私立も含む総数だけど、なんだ… この違いは?
我が岡山は、"市立"はただの2つ。
その僅かに2つの内の1つを、"赤字"を理由に潰そうという方々の発想の貧困に… 驚く…。
『文化』というのは、赤だの黒だののお金換算の土俵にあげちゃダメなのに、さ。
そうでなくとも、ミュージアムの年間運営費はひどく小さい。
億を超える額面のみをみれば、ある人からみれば無駄に見えるだろうけども… 光熱費から人件費から維持費から企画運営いっさいを含めての1億数千万だ。
変な比較ながら、同じ市が運営している某音楽祭はたった数週で1億には満たないけども億に近いお金が費やされる。
ボクは音楽祭も重要で良きお金の使い方と思ってるけど、1つのバランスとして考えると、ミュージアム運営に費やされるお金はあまりに、あまりに! 少なすぎる… と、思ってる。


講演後にジャズフェスの事務局長と某中華屋さんで合流。食事ケン打ち合わせ。
夕刻4時過ぎという時間だからお客は少ない。
厨房界隈から、中国語の、賑やかな、ケンカしているんじゃないかと一瞬思っちまうくらいのオシャベリ。次いで、女性の高らかな歌声。
ここのスタッフは中国人のみ。
あまりの堂々の唄いっぷりに事務局長とハラを抱えて笑う。
ムロン、大口あけてガハハッとは笑えない…。
二人、存在を秘めるがごとくに背を丸め、
「ククククッ」
忍び笑いでハラをゆする。
いや〜、このおかげでビールと酢豚定食が実にうまかった。
彼女と会うのは実に5ヶ月ぶり。去年のジャズフェスを終了させてから会ってない。
だのに、そんな5ヶ月がチビリとも感じられない。
そのコトを互いに告げ、また笑う。
こまめに会ったり、メールで日々連絡せずとも、結ばれている信頼についてを、話す。
そこにジャズフェス委員長から電話が入る。
それでなんだか、おかしなコトなれど、裕福な気分になる。
ジャズフェスという"組織"構築のために、委員長がいて、事務局長がいて、ボクは副委員長。
この3人によるトライアングルは、常時会わずとも、顔つきあわせずとも、けっこう良い感じな三角形を形成しているな… と、密かに思う。
バミューダの魔の三角トライアングルじゃないけども、不思議なパワーがあるようにも思える。
なにより、信頼関係かな。
いや… なにより、この日の彼女がミニスカートだったからかな。


そのあと、ミュージアムに取って返す。
馴染みの小料理屋で関係者と身内なパーティ。
ビールに焼酎に日本酒。3種チャンポンの愉しさよ。
チャカポコチャカポコ♪♪


日曜の午後。
ルネスホールで芝居。
『月の鏡 うつる聲』
脚本も公募、出演者も公募というカタチでの同ホール主催の、わりあいと重要と位置づけられている感触アリの舞台。
頑強なコンクリート作りの元は国立銀行
それを大改装してのホールがルネスホールで、姿カタチ、申し分ない。
ジャズフェスでも何度か使ってるし、今後も使う予定なり。
しかしながら、コンクリートゆえの悲哀あり。
音の残響が半端じゃない。
大袈裟にいえば、お風呂の中のように… 声がこだまする。
だから、ミュージックはまだしも… 芝居には向かないタイプのホール。
あんのじょう、うまく聞き取れない。
役者が何をいってるんだか… わかんない。
そのうえに、脚本がつまらない。
またぞろ… 桃太郎。
温羅伝説(ウラ伝説・鬼)。
朝廷と吉備王国。
目新しい要素もなく、まして、出演が20〜30代の方々のみ。
若さの溌剌は了解出来るけれど、芝居としての年齢の厚み感がなくって、その上で音声の聞きにくさがつらい。
観た感想として申せば、いっこうによろしくない。

お席は満席。
同館を運営する理事長が、巻頭挨拶でもって、スタンディングオベーションを説明する。
感動したら立って拍手するというやつ…。海外でのそれを何故に意識するのか… そこが判らない。
それも、観劇の直前にだよ…。暗にそれを誘導するというのは、いかがなものか。
それが今回の表題「あれ?」なワケだ。
出演者にボクの知人がいて、実は懇意にもしているのだけども… この芝居は、とにかく総合得点として点づけるなら、ヨロシクない。
上演後、あんのじょう、多くの人が席から立ち上がって拍手をおくる。
「ぅううむ」
皆さん、ホントに良かったですか?
いいと思ったんですか?
総数にして30人に近い出演の皆さんに、ボクは拍手はする。
熱演だったし、個々、素晴らしかったとも思う。
音響を担当していたA氏の、密かで目立たないけど、ステージに合致させた仕事(種々の効果音をその場で"演奏"されてた)も良かった。
けれど、トータルとしてボクはとても立って拍手はおくれない。
このホールをボクは大好きだけども、こと芝居に関しては… まったく不向きと思う。
だから、立たず、いっそうシートに身を沈ませてた。
すると、今度は何やら、座ってるのが変じゃないか… 右と左と背後から妙な視線をも感じたりして、居心地わるかった。


上記の、ミュージアムがらみ、あるいは芝居のあったルネスホールがらみで… 岡山市姉妹都市になってるサンノゼ (San Jose)市はどうかしら?
そう、ふと思い立って同市のホームページを見てみる。
おなじ100万人クラスの都市。
いわゆるシリコンバレーの、近隣に位置した都市。
すると… 博物館、音楽ステージ、芝居のステージなどなど、市での"文化活動"を総合的に紹介するページがキチリと用意され、駐車場の案内やらライブ後の食事の場所など、極めて細やかに紹介されていて、
「おやおや!」
と、感心させられる。
我が岡山市にもムロンにその手のホームページはあるのだけど、いささか… 厚みが違う。細やかさが違う。
サンノゼ市のこの文化欄ページは毎日更新してらっしゃる。

"文化"のとらえ方の根本が違う。
そこには食事までが含まれる。
Dining&Nightlife、といった項目まであって、何軒も店が紹介されている。
ミュージアムなりコンサートなりの観覧の後までフォローしてるワケだ。
中には、日本酒専門の店もある。
それも、個々の店やらイベントを数行の記事で紹介、というのではなくって、リンクがはられ、けっこうな情報量だ。
その日本酒専門のBARのホームページにリンクで飛ぶというのではなくって、市のホームページ内でもってページが移動し、きっちり紹介してらっしゃる。
アート、ミュージック、ダンス、芝居… 食事、ホテル… 生活に密着した上での"文化事情の濃さ"やら"文化情報の発信力"が窺えて、
「へ〜」
と、溜息だ。
海外じゃスタンドオベーションが常ゆえに私らも同様に… とは思わないけど、なんだかチョット、層の厚みとその"あたりまえんじゃんか"な気配の具合が、羨ましくはある。