判らない酒の名前が判っちゃった

このブログを読んでくれているらしい東京の鎌田さんという方からメールを頂戴した。
にゃ〜〜〜んと、前回の記事で、ボクが不明だと言ってたお酒を見つけてくれたのだ。
鎌田さんのお父さんがお酒をコレクションしていたらしく、その中の1本が、ボクが紹介したものであろうというコトで… 写真を撮っておくってくれたんだ。
う、嬉しいな〜。
こういうのはハッチャメチャに嬉しい。
ここに載せるのは、その鎌田さんからの写真。


鎌田さんは、ずいぶんと以前に出版した『スピナー読本』も読んでくれているようなので、さらに嬉しい♡
『スピナー読本』は、昨年のはじめ頃だかその前だか、iPad用のドキュメントブックとしてデジタル版を出そうという話があって、"ブレランの新関"君たちとゴソゴソ相談したもんだ。
でも、眼の前の作業に追われてユトリがなくって、企画を動かせないまま今に至ってる。
ま、その話は置いといて(^_^;……、Dimple。

ディンプル、というスコッチ・ウイスキーだったのだ!
それでスグに調べてみると、今も洋酒屋さんに、これはあるじゃんか。
が、今のは… ボトルのアートが昔のよりも劣る。
なにやら網がボトル一面に入っていたり、文字の部分もいささか装飾過多で意匠が過剰に思える。
なので、この鎌田さんの写真に映るボトル(30年くらい前のモノらしい)がより映画のそれに近いんだ。
同じお酒だけどパッケージ・デザインは年々に変化してるワケだ。


銘柄がわかったので、たちまち、もっと深い部分も見えてきた。
Dimpleはヘイグ社のブランドであり、お酒の名でもある。
品名としてDimpleとPinchというのがある。
Pinchは米国向けの品名であったようで、ピンチは凹み(へこみ)のことらしい。
3角形にも見える、括れたボトルゆえにのコトなんだろね、これは。

ちょっとヤヤこしいけど、だから、ディンプルとピンチは同じ中身なのだ。
日本には、昭和の30年代頃には「ピンチ」の名で入荷していたようである。
当時は高額。
ボクがCLINCHかもと思ったのは、PINCHと書いてあったワケだ。
というワケで謎が解けた。
掲載した翌日にご連絡を頂戴したワケだから、謎の解凍はずいぶんと早い。
思わぬ展開。
果報は寝て待てというけど、一夜にして、だよ。
鎌田さん。ありがとうございました。>^_^<


ボトルのデザインが昔のものに較べて良くはないけど… これが今も飲めるというのも判ったんで、尚のこと嬉しくもある。
たちまちに買いに走るというホドに足腰強健ではないけども、次回、酒屋さんに出向いて、もし、それが有れば、もし、ポケットに3000円ばかしのユトリがあれば、なんだか衝動的に買っちゃいそうな感じになってきた。
思えば、最近、ウイスキーは飲んでないしな〜。
と、思ったら、何か… グレーな霧の彼方の記憶に、実はこのお酒をかつて飲んだコトがあるような感触がわいてきた。
ずいぶんとはるかな昔、大学生の頃…
同級の田口君のアパートで。
当時のボクはビール一杯で顔面マッカで呼吸もフ〜フ〜ハ〜ハ〜になっちゃうようなアンバイだったんだけど、その田口君は高校の頃からの愛飲家らしくって、当時は高額であったジョニ黒だの赤だの、ボクの知らない洋酒の数々を室内に置いてた。
でもって、田舎たる岡山から大阪に出て来てるボクに、いささかの自慢を込めて、
「これを飲め、それを飲め… どや、美味いやろ」
関西弁(大阪なので)で勧めてくれたんだ。
その中の1つに、妙にボトルに特徴があるのがあって…、
「ほんじゃ、これを」
と、飲んだような… 気がするのだ。
それが、ひょっとして、このピンチだかディンプルだったんではないかと、デジャブじゃないけど、思い返す。
そういう風に思い返すと、余計に、なにやら、
「うん、そうだ! あれがピンチだったんだ」
と、自分にいい聞かせるようなアンバイになって… これはヨロシクないですな。

映画『ブレードランナー』の中でデッカードがグラスのウィスキーを舐めつつ、譜面台のところに夥しい古い写真を配したピアノに向かって、短音を、ポツンポツンと人差し指で奏でつつ思いに耽り、自己の記憶をまさぐって… あげくに、奇妙なユニコーンの疾走を思い浮かべるように…。
でもって、後年に、このシーンを編んだ監督リドリー・スコットが、シーンを根拠として、
「実はデッカードレプリカントだったんだ」
と、ドキュメンタリー『エッジ・オブ・ザ・ブレードランナー』で語ってしまったような、"コジツケ"が、わいて来ちゃうんだ…。
記憶、というのは薄っぺらい氷のようなもんだね。
ボクはひょっとしたら、40年近い昔の大阪の友達の部屋で、ディンプル・ピンチを飲んだかもしれないし、飲んでないのかも知れない。
自分のことなのに、薄氷はすでに溶けちゃってしまって、もはや判らないんだね。
リドリー・スコットめく、「俺、飲んだよ!」とも断定出来ないし、思い出の中にいっそう沈んでいくと、やはり、「あれがそうだった!」とも云えてきそう。
少なくとも、この曖昧模糊とした記憶ゆえに自分はレプリカントだ、とは思わんけども… 『北極の基地 潜航大作戦』から『ブレードランナー』へとつながっていくのも可笑しいね…。
ともあれ、1つの謎は解けました。
謹んで鎌田さんに感謝であります。
いっそうに『北極の基地潜航大作戦』を好きになりましたよ。
右上の写真は現在のDimple Whisky。ボトル全体にアミ目のデザインがある…。


左写真は原作となったマクリーンの『北極基地/潜航作戦』。
ハヤカワ文庫。
映画ではマクグーハン演じる諜報員はジョーンズ博士という名で登場するけど、原作ではニール・カーペンターという名だ。
くだんの酒のシーンは、原作では米国の提督が潜水艦に乗り込んで、携帯用の水筒からショットグラスに注ぎ入れてカーペンター博士(原作は彼の一人称で語られる)に差し出して、映画とは逆に、諜報員たる彼の方がやや訝しむ… という形になっている。