早朝のエビ天

東京と岡山間を新幹線で移動するのと車で移動するのと… どっちがヨロシイかといえば、
「どっちもどっち」
なアンバイで、出向く目的によってそれは違うワケゆえ、片方を強く推薦は出来ないけど、自由度と荷物の制限幅のデカサでは車に軍配があがる。
10年ほど前の高速道路は、SAとPAは明確に違っていてPAは文字通りのパーキングエリアに過ぎず、トイレと自動販売機がチョットあるきりだったけど、いまどきのPAはいずこもSAとさほど変わらない。コンビニもあればマクドナルドもある。
だから真夜中に駆け、ちょっとPAに立ち寄っても、20年前、10年前に感じた夜の閑散と寂しさはチョビッともない。

最大の変化はおそらくトイレかな。
名神も東名もどのSA、どのPAも、よく掃除され、かつ充実の気配りがなされていて、気持ちがヨロシイ。幼児を連れたままに用足しが出来る"個室"も男子用トイレにあるのが素晴らしい。
幼児も用事もそこにないけど、そういった装備が眼にとまると何やらな安堵をおぼえる。
なので、いっそ、PAに立ち寄るのが楽しい… といってもよいくらいで、立ち寄るか通過するかを毎度決めるのも面白くって、そういったことは新幹線ではありえない。
新幹線の定時から定時の移動は、SEIKOの時計のように精緻で、たかが数分の遅れが生じただけで、
「遅れましたコトをお詫びいたします」
な、車内アナウンスがあったりもして… 何やら機械仕掛けの大掛かりな"運動"に身を置いて、どこかビジネス最前線といった趣きもあって、目的最優先な空気に包まれてしまうようなアンバイなんだけど、車での移動にそれはない。
おおよその到着時間はあっても、数分の進みや遅れはどうでもイイ。
新幹線での移動が1本の硬い棒なら、車でのそれは柔らかで伸縮自在なグンニャリしたゴムの棒みたいな、同じ移動ながら感知される時間の顔がまるで違うから、そこが面白い。
10数年前は、ただひたすらに時間のみの短縮を念じて駆け、6時間で着いたとか7時間で帰って来たとか… それを誇らしく思ったりもしたけど、今は悠々に12時間〜13時間をかける。
SAに寄っては、買いもしないのに土産モノの数々を眺め、感心したり笑ったりする。
新東名の新たなSA「しおや静岡」にはタミヤバンダイが出店しているし、「清水SA」ではまるでスーパーのように買い物カゴがあって、それに土産モノをば入れるというカタチになっていたりして、品の充実と目新しさに、
「あらま〜」
てな感嘆をおぼえたりさせられる。
一方では、その新東名が出来上がって利用者が1/2になったせいか、「浜松SA」のかつての充実が消失し、朝のバイキングもなくなって、実にもうつまらないサービスエリアに成り下がってるのもあって… こういう諸々を"見学"しつつゆえ、旅路は12〜13時間が、かかる。
遊びに出向いてるワケでなくあくまでも仕事に出向いてるのだけど、ギュ〜ギュ〜カツカツな仕事一途をボクはもう、好まない。
車での移動は相応に疲れもするけど、時間の変化を身に沁ませる効能と効果は高い。
早朝の「大津SA」でエビ天うどんをすすっている内に夜が緩やかに明けだして、眼前に琵琶湖が現れてくる感動は、夜を惜しむ気持ちと明ける解放とが天秤の左右で絶妙に揺れて自分の中にある種の複雑さを産み出してくれ、600円のエビ天うどんを1800円くらいの価値有りなものに変えてくれる。


※ 上の写真は足柄SAで足を休めてるの図…。下は大津SA。ガラス越しゆえチョット判りにくい写真なり。