花火大会の夜はふけた

岡山市の花火大会は年々に打ち上がる本数が減っているというのが通説で、例によって今年もいささか頼りなげだった。
そこいらのマンションよりも低い所で花咲くし、川沿いにいてやっと見られる仕掛けだのは、あんまり多くの人には見えない代物だ…。
開始から終了まで1時間ながら間髪入れずとは云いがたく、実質はその半分くらいな時間でもって夜空に花が咲く。
他県他地域の1万発を越える数字を思うと、その半分以下4000発で"光のシャワー"だなんて…、ホントに"大会"なのかと、つい笑ったりもした。
「大会ならば、やはり数量でしょう。ドン・ドーンの音の連鎖でしょう」
もちろん、そうやって笑いつつ、"大会"なるを定義してみたりで、愉しんでいるのではあるけれど。


ルネスホールを見下ろす好立地な、我が友のビルの屋上。
中国銀行本店前の交差点に陣取った女性の"DJポリス"の声が拡声器を通して常に聞こえてる。
30万人の人出だったそうで、確かに… もう花火が終わろうとしてるのにまだ会場側へ歩む大群がビルの下に見える。
いつもならこの5階の屋上にドリンク&フードを置いての見物なのだけど、今年、友人夫妻はビルの2階を改装してパーティルームを設えた。
なので、ビールサーバー含めフードはその2階。
必要量を皿にして屋上に出るという新スタイルになった。


フードは皆なの持ち寄り。
我が輩はケンタッキーフライドチキンをば。
大半は皆さんの手作り手料理。
なので美味しい。
つい食べ過ぎる。
飲み過ぎる。
今回、ボクは奇妙な眠気に誘われて、"大会"後、皆なが降りて階下でワイワイやってる頃、屋上で眠ってしまってた。

ハタと気づいた瞬間に、
「あれ?」
天井のない視界に、
「んっ?」
暗天の雲が雲にみえず、ただ茫漠とした空間にいるようで、
「ここはどこ?」
頭の中が混乱しちゃって、でも、それが面白かった。
たぶん15分そこらの甘睡だったんだろうけど、SFだかミステリーの主人公めく、幻惑で自分を失った感触が、面白かった。


眼下の人の波はもう遠のいて、誰からも声をかけられなかったのでツマンナ〜イっぽい浴衣の女のコ3人組がダ〜ラダラと宇野バス本社前を歩いてた。
それを見遣りつつシガレットに火をつけて、一服。
「花火大会だもんな〜。ドラマチックなラブストーリーの予感がするよな〜」
「でも、君たちは残念だったな〜」
などと、考えるでもなくボンヤリした思いを浮かべる。
過去の自分の小さき幻影とダ〜ラダラ歩いてる3人のコをダブらせてみたりする。

2階に降りたら宴はたけなわ。
皆な盛大に飲んで食べてらっしゃる。
でもってチョット笑われる。
壁の時計をみると、もう12時まえじゃんか…。
というコトは… 15分ばかり眠ってたんじゃないのね。
「んっ、そんなバカな」
SFの世界に迷ったような感触がチョビリ。
思えばこの赤い新規の壁。なんだか『時計仕掛けのオレンジ』のようじゃある。



四五人に 月落ちかかる 踊りかな
秋の句じゃあるけど、なんかそんな感じだった今年の花火。