月火水木金… ファンタスマゴリア

月曜日。
模型の図面描きを早々にきりあげ、午後、K歯科で定期検査。ハミガキの指導を受ける。これがあんがいオモシロイ。先月時より良い数値が出たから余計に。


火曜日。
岡山シティミュージアムで「輝ける番町線」展示の撤収作業。期間中には県外の思わぬ遠方から来訪くださった方もあったようで、感謝。
夕刻に某フリーペーパー誌より取材申し込み。番町線のことかと思ったら、明治期の某所について。フムフム。
スイスにてギーガーが死去との報を友人のメールで知る。
ギーガー、エイリアン、リドリー・スコット、と連想して『プロヴァンスの贈りもの』が何故か念頭に浮く。宇宙生物も出ないしSFでもないけどもスコットが監督してラッセル・クロウが軽快。アンガイによろしかった葡萄畑主題の映画。
ふ〜む、葡萄ね〜。

夜12時頃にベッドにはいって「アルセーヌ・ルパン」のつづき読む。


水曜日。
シネマクレールで映画『ブルージャスミン』。
ウッディ・アレン作品を観るのは久しぶり。ケイト・ブランシェットはいいね。2度目のオスカー像となったのも判る熱演。
ただし… ボクはこの悲惨な顛末を求めて映画館に出向いたか? といえば、けっしてそうでない。同じセレブなら『ロビン・フッド』での彼女がダントツに好き。

同行者との待ち合わせは喫茶 B三共。
ビーサンキョウ。不思議な名。いまどきのカッコ良いカフェじゃなくって昭和時代半ばから続く喫茶店
妙に落ち着くのは、店内の古びた感触ゆえにだろうか。映画の前、ちょうどお昼だ。ポークカツを食べる。ライスとお味噌汁をつけ食後にコーヒーで1000円ジャスト。

このビーサンキョウで来週、「古市福子朗読の午後」がある。
常々に彼女に鏡花を演ってくれと申してる。その甲斐あっての『高野聖』。やっと聴ける。

映画鑑賞後、喫茶ダンケに出向いて、さぁ、観たばかりの映画のハナシをばという直後に、取材の電話。
たまたま双方が近場にいることが判って、「では…」と急遽お会いすることに。
よってケイト・ブランシェットを語れずで、やや不満。ダンケ店内にて複数枚撮影されたけど… 限りなく普段着。


夜11時にベッドにはいって「アルセーヌ・ルパン」のつづき読む。


木曜日。
朝から小雨降ったりやんだり。
実家の南側の窓辺。グリーンカーテンとしての植物を諸々考え… もはやゴーヤはありきたり、葡萄とカボチャを最有力候補とする。窓際にカボチャというのは意外だろう。面白そうだ。
ただしカボチャは即効性が高くって今年の夏に茂るけど葡萄はそうはならない。人の背丈より葉が茂るのは2年を過ぎるだろうから、そこが思案。どないしょ? 『プロヴァンスの贈りもの』がまた念頭に浮く。
水曜の丸善で買った彭丹(ほうたん)著『中国と茶碗と日本と』の最初のあたりをパラパラ。

ボクがいささか不思議に思う信長や秀吉の時代。功労有りでどこぞの土地の領有権を与えようとのさい、例えば滝川一益の事例のように、1地方の殿様になるよりも信長所有の茶器を欲しがったという当時の価値の置き所。
かたや敵方の首を奪って持ち帰る首狩族めくな蛮習と、茶の湯に代表される洗練の、このギャップの狭間にある何事かの不思議… その辺りの何かを教えてくれる記述が本書で出てきたらよろしいのだが。


夜10時にベッドにはいって「アルセーヌ・ルパン」のつづき。1ページと読まぬうちに甘睡にとける。


金曜日。
まだ暗い朝4時に外に出て、絶妙に雲がかかった月を眺める。
雲がかかるというよりも雲のベールの向こうに月がある。雲をスクリーンにして背後の月が映っているといった趣き。
雲模様が動いて、見慣れた丸じゃなく、異界な、まるで木星を近くで見ているよう。
19世紀はじめのヨーロッパでは、幻燈機が発明されてこれが見せ物になって大ヒット。
ベルギー人のロベールが革命後のパリで興行したさいは、ルイ14世の幽霊を灯影してみせて大騒ぎになって警察が劇場を封鎖して調査するという珍事も起きた。ロベールは通常の劇場ではなくヴァンドーム広場近くの廃墟となった修道院を劇場として使ったから余計に幻燈効果が高かった。(C・W・ツェーラム『映画の考古学』)

蝋燭の光源、レンズ、切り絵。今の眼で眺めるとドッテ〜ことはないもんだけど、19世紀の人の眼にはビックリたまげの驚愕だった。
転じて光学的なイリュージョンのことを「FANTASMAGORIE」と呼ぶことが流行ったけど… まさにその「ファンタスマゴリア」な感触ある月。
空想として、
「あれは月じゃない。ガス状惑星だわさ」
みたいな戯言もいえる雰囲気が醸されてた。
この光景をパチリと撮れるカメラを持っていないのが残念。

某所に某資料とりまとめて送付。
と、書くは容易。実際は整理下手ゆえ取り揃えに大変苦労。アレないソレない、どこへ置いたか… 早朝から午後までアタフタ。自分に苛立つことしきり。
何事かを根本から変えないとこの整理下手は治らない。
そう判っていて出来ないのは結局… モノに浸食され過ぎてどこから片付けていいのか、さて困ったゾ〜ンな堂々巡りゆえ。
何もない空間としての茶室に憧れるのはこの反動だろうか。むしろ何もない方が何かを創り出せそうな予感。
夕刻にホームセンター。
カボチャの苗を2つ購入。うまくいけば掌サイズの実がつくグリーンカーテン。葡萄の苗木は思っていた品種がなかった。通販で求めるしかないか。


夜10時にベッドにはいって「アルセーヌ・ルパン」のつづき。金曜の夜だというのに…。
ちなみに今週読んでる「アルセーヌ・ルパン」は『黄金三角』。


土曜日。
前夜のような月になるかな? と朝3時半に外に出たけど残念。そう都合よく雲はわかないや。ややありきたりのほぼ満月。
都合よくといえば… 近頃の世の中… どうしちゃったんだろ? 
額のせまい首相の顔と「悪魔が来たりて笛をふく」というフレーズが浮かんじゃ消える。何か大事なものを失いそうで怖くてしかたない。『ブルージャスミン』は見栄と虚栄ゆえに滅ぶ女や男の映画だったけど、世の流れに似通う虚栄の跋扈を感じる。
ぁあ、頭が重い…。
なぜって、髪の毛多いから。
ほれほれ、それが虚栄だ、見栄だっつ〜の。