車はガソリンで走る…

ほぼ日本中がカッコいいテニス・プレイに夢中になって、その勝敗の行方を今か今かと待ってる頃、地方都市・岡山では1人の男がボ〜っとなっていたのだった。

キーを廻しても車のエンジンがかからないんだ。
何度かトライし、数日前の雨天の真夜中に乗って以来の事を思い出し… ハタと、気づいた。
「ガソリンないじゃん」
これほどカッコよくね〜〜コトもない。
完敗。


その昔、エッソオイルだかのTV-CMで加藤和彦が実に頼りない声音でもって、
「クルマはガソリンで走るのです〜」
と云ってたけど… いやはやその通り。
ガス欠になったのはこれが実は3度目なのだけど、前回はるか数年前はなんとうまい事にガソリンスタンドの真ん前でエンストしたのでチョ〜ラッキ〜なのだったけど、こたびは自宅のガレージだ。


なんせ20年近く前に買った英国車。新車で購入とはいえ、すでにその時、クラシカル・エレガンスな代名詞と謳われてた旧車中の旧車。
メーターなんてアテにならないのだ。
アバウトざっくりで、「ま〜だいたいこんなもんでしょ」な動きしかしてくれない、大方の目安としてのメーターなのが英国車なのだ。速度計もマイル表示だし…。
(今はそんなコトないと思うけど)
もちろん、そこが面白いから好きなのじゃあるし、車に"馬のような個性"があった時代の醍醐味なんだし、機械の本質を常に忘れさせてくれない意味でもこの車はダンコ名車なのじゃあるけど… いざ出かけんとしたさいの不動はやはり… その…。

この特性を重々わかってるから日頃より気をくばり、早め早めのハイオク給油を心していたけども、この夏の長雨… シガレットを買うためにチョイと乗るといったごく短距離チョイチョイ乗りを繰り返し、ガソリンのことを忘れてら。
いや、ホントは忘れてたワケでなく、習癖と化してるから、メーターの頃合いは見ていたつもりなのだ…。
確かに左寄りにハリが傾斜しちゃいるが、従来の感じじゃ、まだ7〜8Kmは駆けるであろうと踏んでたんだけど、それが外れた。


そこはま〜、テニスとて、左に打ち込まれると察して左に駆け出すと、ほぼ同時に右に打ち込まれた〜なんてコトはあるんだから、それはシャ〜ないけども、さても弱ったのは、近頃はガソリン販売が厳密になって、容器なしにスタンドに出向いても、ガソリンを売ってくれないのだ。
「じゃ、車に入れに来てよ」
と申せば、
「別途で配達費1080円かかるけどイイすか」
なのだ。
ガソリン・スタンドと我がガレージの距離は直線でたった700mほど。
「そんな、アホらしい…」
ではないか。
JAFの会員さんなら配達料は無料になりますぜ」
と教えてくれたけど、こちらJAFの会員でもないタダの人。


それで、およそ1.4キロ離れた、割りとよく利用している顔馴染みなスタンドに自転車で向かってみた。
7年だか8年前の新幹線高架下道路上でのガス欠時では、そこの奧さんが、フラスコみたいな小さなポリ容器で駆けつけてくれたんだ。
けど、やはり状況は変わり、
「今はそれをやると、営業停止になるんすよ〜」
対応に出てきたオーナー(奧さんの旦那ね)が申しワケなさげに云う。


では、どうすれば良いかといえば、結局は、『ガソリン携行缶』を持ち込めば、5リットルであれ10リットルであれ売ってくれるのだ。
早い話、総金属製の『ガソリン携行缶』なる代物がないとガソリンは買えないし運べないのだ。
致し方なし。
アマゾンでみつくろい、翌日到着急ぎの便として、ポチッ。
思えばついこの前、自転車チェーンも買ったばかりじゃないか。
なにやら… 駆動系なもんばかり。
ツイてないのか。足腰弱ったか…。

で、今朝に届いた、いかにもガソリンタンクなマッチョぽくカッチョ良いデザインの缶を自転車にのせ、今度は無事、楽勝のアドヴァンテージ


でもね。
ま〜、たしかにガソリンは灯油とは違うね。
携行缶に10リットル買って持ち帰って、気づいたよ。
すごく気化するんだ、ガソリンは。
特にこの場合、粘度柔らかなハイオクだ。
缶のエアバルブを開けた途端、
ブシュ〜ッ!
けっこうな音と圧でもって気体化したガソリンがあたりに噴射されるんだ。
こりゃ確かに、危ないですな。まさに引火物って〜感じが濃いよ。


アポロやスペースシャトルの発射直前の映像をご覧になると判る通り、機体周辺に相当な煙が見えてるけど、あれは発射塔から放射されてる火災防止の膨大なシャワー(水蒸気)に加え、ガソリンよりはるかに引火率が高い燃料がドンドン気化してるビジュアルなのだ。
気化するからドンドンつぎ足してる。
秒単位で何リットルも気化するんだ。
だからそのためのパイプ類がゴッチャリとロケットに取り付いてて、このつぎ足しは点火直後まで続いてるんだから、だから実に危ないんだ、本当に。
気化した燃料は重いからロケット下方に溜まり気味になってて、ロケットが点火されたらこれにも引火して、だから打ち上げ時の炎の量がビックリするくらいに猛烈なのは、漏れた燃料も一斉に爆発的引火を起こしてるというワケだから… どっかのお祭りでガソリン使用の屋台が爆裂したというのは、あたりまえなのだ。
なのでドンドコ法律が厳しくなる。

ま、そんなコトをあらためて体感出来たので… このガス欠事件は錦織選手の活躍と共に… しっかと刻んでおこう。
彼いわく、
「次ぎがあります」
前向きだな〜。良いな〜。
記念にと、錦織仕様なユニクロのシャツなんぞは買わないし、ラケットも持ってないけど… 携行缶を買ったんだ。
次ぎのガス欠を楽しみにしようじゃないか。