5対1 〜袋入りラーメンの話〜

異常が常態化してるような今日この頃。雨だらけの連続で早々に冷え込んで来たせいか… 松茸がいささか早くに採れるようだ。
先日、頂戴したのは随分にでかい。
これの市場価格なんて〜のは興味ないけど、頂戴したんだ、ありがたい。
まずはスキヤキじゃな…。

で、今回書くのは、そのスキヤキではなくってインスタントなラーメンだ。
近頃、不満なのだ。
インスタントラーメンが単品で買えないコトだ。
店頭にあるのは5袋はいったヤツね。
1ケ売りしている麺チャン、ないことはないけどヒジョ〜に少ない。
欲しい品がない。
単身でラーメンと向き合ってる身の上として… 5袋というのはきついんだ。
「これを5回も食べなきゃいかんのか」
と思ってしまうのだ。

同じメーカーの同じ麺のみをお食べになって早や10数年という方もいらっしゃるんだろうけど、ボクの袋入り乾麺はそうでない。
イトメンのチャンポン麺。
ニッシンのチキンラーメン
エースコックのワンタン麺。
サッポロ一番塩ラーメン。
ハウス食品うまかっちゃん
だいたい以上なものをローテーション的感覚と間隔でもって、食べているんだよ、ひっそりと。
貧相で、それこそクールな今時のお天気に準じて… 寒々しいと笑われそうだけど、ホントなんだからしかたない。
カップ麺は好まず、袋入りの場合もゴマ系は食べない。いやもちろん、これらは晩のゴハンじゃないよ。昼の4時とか朝の4時とか、一作業終えて体内の空気を入れ換えようという時に食べてるんだよ。なんかDVDとか観ながらね。

そりゃま〜、告白するがその5点でもって清廉を装っているかといえば、そうでもない。
浮気もする。
例えば「ラ王」とか「中華三昧」とかみたいなもんと浮気をする。けども、これらはあくまで特例。すなわち御近所のスーパーの特売だか何かで、単品として棚に並んでるんでツイ手が出ちゃったという程度な浮気なの。


愛知は三河のキリン家庭用ラーメンとかペンギンラーメンも好もしいけど近所では売ってないから、これは除外として… そもそも乾麺はごく日常の環境で買えるモノという前提をまずは置かなきゃいけない。あくまで即席、いわゆる"ご馳走"ではないんだから、近場の店で入手可能なものが前提。通販で買ったりしない。
そういう最低限のルールを課して、これを美学と北叟笑んで… インスタントラーメンを位置づける。
したがって単品がよいのだが、単品でない5食セットのヤツともなれば、上記の5品、最大25袋もが、キッチンに置かれることになる。
これって… 脅迫感も増量じゃないか。積み上がったインスタントラーメンというのはヒジョ〜に貧しげだし、重圧だ。
幼児のオムツならまだしも、食品だぞ。
なにゆえ5食も買わなきゃ1食にありつけないのか…。
月に4回は食べてもいいイトメンのチャンポン麺はまだしも、月に1度だけ食べたくなるチキンラーメンを、なんで5つも買わなきゃいけないのか。この場合、5つめは買った5ヶ月後に食べるコトになるんだぞ…。

なんでそうなったかといえば、メーカーの都合とお店の"効率"でしょ、これは。
そのうえ、5つもあるから早く使わなきゃという気も起こさせるって〜仕掛け。
だから、裏返せば、いわば、"流通の都合と再購買の迅速化" に合わせた食生活を余儀なくされているんだよボク達は。
そう思えば、しゃくに障るね。
そりゃ、家族として3人とか4人の場合、5食セットは安いお得な買い物になるんだから文句は出ないハズだし、セット歓迎なんだろうけどさ、世の中、1人淡々とラーメンに向き合ってる、真な意味合いでの"孤独なグルメ"もいるんだからね。
いずれ、そりゃ5袋は食べてしまうものとしても… 先に書いた通り、心理的負荷をおぼえるんだよ5袋という量には。
なので、単品売りの復活を心底お願いする次第。
1番によろしくないのは… その"流通の都合"に知らずこちらがすり寄って、馴れてしまうコトなんだと思うな。
たとえ5袋セットがお得であっても、それがあたりまえになっちゃ〜イカン。
美しくないじゃないか。心鎮めたる茶会の席で誰が5杯も飲みましょうや。
お買い物の時点ですでに1という単位でもって邁進するのが美しく清らかなのだ。
インスタントラーメンをそこそこ愛してる身の上として、ここは声高に、日本即席食品工業協会と御近所のスーパーに、「1袋売りの復活」をうったえたい。


以下余談。


イトメンのチャンポン麺が全国で売られているかどうか知らん。
東京には空とイトメンはないと智恵子はいう。我が盟友だったマンガ家の故マタンゴ石井もかつて都内のスーパーを物色し、やはり、ないと結論してたっけ… なのだけど、ここ岡山じゃ容易に手に入るので、これを美味しく頂戴する秘訣を教えましょう。
といって、この麺がまずいのではない。元々おいしいのだ。
ボクはかれこれ50年近く食べ続け、おつきあいを続けているけれど、いまだ飽きることを知らないし、我が舌もこの味をよく覚え、お口に運んでやると、すっかり安心しきった風情で尾をふる。いったいどんな舌だ、そりゃ… と思われても困るけど、まっ、それっくらいによく馴染んでおりますというコトね。
このそうでなくともおいしいチャンポン麺をさらにうまくする方法。
キャベツとか白菜とかニンジンを加え煮る、といった大袈裟じゃない。
チューブ入りのワサビを添えるのだよ。ちょっと多めに。
おつゆに溶いちゃ駄目だよ。器のね、おつゆとの瀬戸際にニュ〜っとつけておいて、チビチビ小出しに、すなわちお箸にチョイとつけ、麺にからめて、啜るのさ。
そうすると、淡麗なふくらみの中に1本の澄明な芯が入って、それが鼻にぬけるんだ。
おつゆの風味と小エビ(たぶんオキアミ)の風味にワサビがマッチお似合い、チューブのワサビだけでビルマの竪琴でツイスト出来るくらい美味くなるんで、いっぺん、やってみてチョウダイ。清廉な天女のふとした仕草に悪女を見いだしてイッソウ惚れるような新鮮があるデヨ。
これをボクは『イトメンの瀬戸際援交』と名づけてるんだ。