雨の赤穂城

おとといの27日で播州赤穂駅・東西連絡通路ギャラリーでの展示が終了。
現在のJR赤穂線が敷かれるまでの界隈の鉄路の歴史をまさぐる、良い展示だった。


終了の前日、当初の予定はJRで出向いて用をこなし、昼からオチャケも愉しむつもりでいたけど、残念、朝からしっかりの雨。
向こうでの移動を考えると車がいい、という次第でワイパー振り振り、車でGO。
着後すぐに担当者さんと談合。なぜか赤穂にあった古い番町線(岡山市内を駆けてた路面電車)の写真。その使用権を頂戴してニッコリ。撤収作業後の諸々を打ち合わせ、あとは自由時間。
うまい具合に雨がやんだので傘なしで赤穂城を散策できた。


天守台はあっても天守閣は造られなかった赤穂城
それで2006年からは毎年、12月14日の"義士祭"用に、鉄骨で天守が造られてこれが巧妙にライトアップされ、いわば"存在しないものを幻視"出来るという仕掛け。
でも白昼に近寄るもんじゃない…。あくまでもライトの光具合でもって演出されるもの。
準備中のそれを見上げ、同行者は一瞬に息をのみ、ついで、
「高い高い」
と笑みた。



城内の散策コースに植わった樹木は皆な雨に濡れ、色彩も沈んでる。けども、1点、広い敷地内中央の低木がめだつ。
そのカエデを前に同行者はまた大いに笑みて、
「赤い赤い」
と、写真を撮った。
じっさい、よく熟(む)れたもみじ。
雨天でなく日差しがあれば、いっそう「赤い赤い」に輪がかかったであろうと思うと、少し残念だったけど、塩ラーメンを食べた後のお腹ごなし散策。良い紅葉にめぐりあえた。



赤穂なのだから塩。そのラーメン…。
はんなり品良い塩の味。濃くなく、薄くなく、加減がメチャ絶妙に良い。例えるなら波際で海を感じるのではなく、少し下がって望遠で海を感じるような…。
でもって、麺やや硬め。すなわち我が好み。
店名は忘れた。
ちょうどタイムサービスの時間とぶつかったので、これにたっぷりなゴハンか、たっぷりな野菜サラダが無料でつく。それはいらない… というのは惜しいので同行者はサラダ、こちらはゴハンも食べてしまい、よって散歩してお腹を落ち着かせる場所として赤穂城は実によろしい立地なのだった。

城内の入場料200円のミュージアムに入ってみると、1階は赤穂の塩の歴史でしめられ、その中にコスタリカだかどこかの大きな岩塩の石柱がある。
そのデカイ塊の上にフダが乗っていて、
『舐めたらあかん!』
と、書いてあって、
「舐めね〜よ、こんなもの」
楽しく笑う。


散歩中にまたポツリポツリと降りだしたので、城を出て、近場の瀟洒なカフェに入り、くつろいだ。
夕刻近い刻限だったからか客は我々しかいなく、オーダーをこころよく受けてくれたノチ、カフェの方々は手書きの大きなメニュー表を作り出しはじめる。
何かと問えば、きたる12/14の"義士祭"での1日オンリーのメニューだそう。
「まだ3週間近くもあるじゃないの」
と、いいかけ、やめる。
人口5万のこのささやかな街はすでに"義士祭"色に染まって、それを住人一同、大いに愉しんでおられるようで、あちらへ行ってもこちゃらへ行っても、
「今年も松平健さんが来るんですよ〜」
なのだった。
彼が大石内蔵助に扮し、46人の同じ装束の方々と市内をパレードするのだ。
受け入れ準備そのものを、早々に愉しんでいる… その時間の使い方がやや羨ましい。


数百年前の悲劇を、ここでは、いっそプラスな思考で何事かに転じさせている不思議なチカラの街と人。
祭と選挙が同じ日になったことで行政は人員割り振りで大問題と、赤穂市は全国ニュースになったらしいけど… それもなにやら、足し算的思考で、賑わいに拍車がかかる… みたいなアンバイで地元は実際は愉しんでいる気配。
駅ギャラリーに展示されているこちらの企画展がすむと、次はあんのじょう… 祭とリンクした赤穂浪士関連の展示となるようだし、リオのカーニバルめく、1年はいっさいこの祭のために… という風情もあり、それが熱狂としてでなく自然体的な慣習として体内時計に組み込まれているような感もうけて、それがまた多少、羨ましい。
討ち入りの歴史的実態(吉良さん1人ならともかく、吉良屋敷では襲撃の47人の手で、未成年の茶坊主を含め死者23名、負傷16名がでたヨ)はともあれ、足場がしっかりした堅牢な日常をおくってらっしゃるなと感じられて…、ある種の羨望がつのる。


高いビルはない。街規模も小さい。
松平健の行列に興味はないけど、だけど居心地いい赤穂。
この日あいにくの雨ながら、空の面積が広いのもいい。
近頃気づいたけど、街には、こちらをソッとしてくれるのと、そうでないのとがある。
赤穂はその前者。
たぶん、空の面積と人の密度具合と速度がこちらの波長に合うんだろう。
プラス加えて、きっとボクが小さな街を好みにしているコトも赤穂を良好なものに感じさせてるんだろう。


同行者が塩味饅頭未経験ゆえ、
「ちょっと、こんなテーストは味わえないぞ」
押し売り屋みたいに勧めに勧め、暗くなって、閉店間際のかみや本舗に出向いてみると、極めて残念、本日分は売り切れだった。
それで代わりに… 初体験の和洋折衷なのを1つ。