8分間

劇団・燐光群の岡山公演。
駅のプラットフォームが舞台。自殺しようとする男とそれに気づいて阻止しようとする男を中心に諸々な人がからむ群集劇。
8分間ごとに時間が戻る、いわばタイムスリップなSF仕立て。
なので同じシーンが幾重と繰り返される。
けれど決して同じシーンじゃない。
少しづつ様相が変わってく。

数年前に観たダンカン・ジョーンズ監督の『ミッション:8ミニッツ』に似たシチュエーション。
といって、別に盗作とかコピーとかいったもんじゃない。符合として、8分という時間とパラレルタイムの扱いが一致しているけれども、当然まったく別なもの。
8分ごとの暗転とまた繰り返される同じシーンの連打によって、徐々に、その光景が、かの3.11、地震で激しく揺らぎ、不安の焦燥にかられた日であることが判ってくる。
都内の電車が全部とまった、あの日。
ボクの義兄は埼玉に住んでいて都内に勤め、あの日、彼は何100人かの人と肩を並べ、黙々、6時間だか9時間かけて鉄路を歩いて帰宅した… ことを芝居を観ながら思い出した。
鉄路は道なのだと、思い出した。
でもって、あの日を境に、大きく変わると思われた諸々もまた、思い出す。
穴のあいた原子力発電所に水をかけるべくヘリコプターがバケツをぶらさげ接近している、ブラックな冗談のようなTV映像に、
「もはやこの国ではこの発電方法はペケだぞ」
と多くが思ったし、事実そう望んだはずだったけど… 今や、どうもそうでないらしい。
と、そんなことまで思い起こされた芝居。

開演前のロビーで、市の文化担当のK嬢が駆け寄って、
「講演、いけなくてゴメンなさい」
詫びるので、どこに行ってたの? と問うと、
「ウフッ。道後温泉
と、答えられ、したたかに笑う。
ロビーというのは1種のプラットフォーム。思いがけない人にも会う。某落語家氏にも遭遇し、
「おやおや、こんなトコロで」
「いやいや、お互いさんで…」
と、また笑う。
今週末のサンデーの午後に予定の、"プチ寄席"。
楽しみにしていたのだけど… 予期しない、意味しない選挙に… 車椅子必要な年寄りを連れていかなきゃならなくなってる。
時間がだぶる。"プチ寄席"に行けない可能性が高くなってる。
それを思い出し、気分が曇る。
寄席に行けない上に選挙の結果もあらかた判ってる… いわば2重のグッタリ。
徒労とはこれだ。けども… 棄権すべきじゃない。