生まれてはじめて「同窓会」に出た。
小学校の同窓会。
ほぼ50年ぶり再会。
会場に着くなり、フイにいきなり男子連は、
「オオ〜、ヤ〜モト〜!」
呼び捨てだ。
ま〜、これは1つには、「山本が初めて来る」という事が既に話題になっていたようで、それゆえ一斉着目での「ヤ〜モト〜」なのだろうけど、その男子は概ね50年前の面影がどこかにあって、記憶と現在が合致する。
けども女子は、これがさっぱり判らない。名を告げられて、ぁあ、あの子か… とはなるけど、昔日と今の顔カタチがさっぱり合致しない。予想以上の浦島効果。
ずっとボクは、同窓会というカタチに、人生後ずさりみたいな、懐古以外のナニモノでもないじゃんかな思いがあって、なのでただの一度も出席せず、誘いのハガキも無視し続けてきたのだけども… ある年齢に達したらそれを解禁しようとは密かに思ってた。
その解禁の年が今年2015年なのだった。
この年齢だ、も〜、突っ張らなくてもイイじゃないかと、ツッパリ棒を1本外し、はじめてノコノコ出かけ、
「オ〜、ヤ〜モト〜!」
いきなりに、一瞬は鼻白んだけど、だんだん溶けてった。
歳月の垣根が低くなり、個々の今の顔の輪郭が多少に見えてきて、50年という時間が造った何事かに今さらに感慨しつつ、杯を重ねるごと、どんどん溶けてった。
ボクの脳内には小学生のままの男子と女子が、あられもないジジとババになっている現実。
小学5年の春の陽気と"敬老会"めくな集まり、この陰陽がゴッタ煮になって、そこが可笑しい。
こちらは自覚もしていなかった自分と彼ないし彼女の小さなエピソードを持ち出されたりして、
「へっ、そんなことあったん?」
淡いビックリを幾つか味わう。
そうか、これが同窓会か…。
感慨深くして、気づくと、食べることは忘れてひたすら呑んでレラ。
この先、年に一度なら、こんな酒席も良いじゃんかと眼が笑いだし、気づくとお銚子の山。
されどまた、水面は満ちず引かず、大きな変化が自分の中に生じたとも思えない。感激よりも間隙…。
意外と淡々と受け入れた50年。
その50年の谷間あたり、38年前の1977年に描いた小品。
これまた久しぶりに引っ張り出し、シゲシゲ眺める。
F3キャンバスにシルクスクリーンとアクリルを併用。
今はもうこういうのは描かないしキャンバスに眼も向かない。
自分の中の変化した部分とそうでない部分。頑迷と柔軟の境界…、そこはあんがい朦朧な流体なのに気がついた。
それでボクはガスの惑星たる木星の表層を連想した。