名の知れぬ植物


ふた月ほど前、庭の片隅で見慣れない草が生えだし、ひっこ抜くことなく放置していたらズイブンに大きくなって、今やボクのおへそより高い位置まで背が伸びている。花をつけている。
おそらく、鳥が運んで来たか、風がイタズラして、種子をそこに置いたのだろう。
雑草にしては妙に花が綺麗だし、市販されるようなものかもしれないけど、いかんせん、名が判らない。




牧野富太郎植物記・野の花』に、コナスビというのがあって、葉の形や花色にやや似通うところもあるけど、実のつきようが違う…。
他の手持ちの植物図鑑にあたってみたけど、該当のものがない。
というより… 図鑑は膨大な量で埋まってるからピタリ一致の写真を見いだせない。見落としている可能性も高い。


といって、必死に名を探さなきゃエライことになるワケでもないから、
「ぁ〜、ワカンね〜」
で、結局はおしまいだ。


でも、それではやや哀しい。
この顛末は、あれこれ大いに流された果ての何ぁ〜にも得られない人生… そのものではないかと大袈裟にブレーキを踏みたくもなる。



ではどうする?
この場合の方策として妥当なのは、これに名をつけりゃイイわけだ。
自分にしか通じない名で、けっしてご近所に吹聴できるものではないけど、『十五少年漂流記』の子供達が島やその御崎やアレやコレに名を勝手につけたのと同様、名がないより名を与えた方が、なにかと都合がいいというか… 名をあたえることで、この花ある植物が自分の中で定着もする。
誰にも通用しないけど自分では、
「あ、あの花ね」
と、ま〜、そうなる。
閉じた宇宙的にイビツじゃあるけど、このさい、それで行こうじゃないか。


というわけで命名した。


思えば、いったい誰がタンポポタンポポの名をあたえたか?
誰がユスラウメにその名をあたえたか?
なのでそれと一緒と思えば… 新種の発見でもなんでもない未知との遭遇だけの話だけども、いささかの決着をつける事が出来たようで、ちょいと安堵したりは出来る。
無知を晒しあげくに自己勝手をやってるんで、カッコ悪いけどね。

『ロクガツノヒルヒナカ』

と、実に判りやすい名をつけた。
観察するに、朝でなく昼過ぎ頃にイチバン良く開花するんで…。
しかもこの花は午後5時には閉じて店じまい。24時間コンビニが啞然とする短時間営業なのだ。
おそらく、この特性に検索のヒントがあるんだろうけど、ま〜、いいや。
『白昼開花科・ロクガツノヒルヒナカ』でこれは自己登録だ。