雨の日の文化祭


文化祭。
この三漢字、昔から、接するたびに「?」が浮いてた。
そも、『文化』をうまく説明できない。
"人間の生活様式の全体。人類が築いた有形・無形の成果の総体"
と、辞書にあって、ズイブン判りにくい。
説明しているようで何も解いてくれない。でしょ?


ましてそれが "祭" になるんだから、「?」が離れない。
ふんわり大きくみえるが実体のない、文化祭の模擬店で生徒らが売ってる綿菓子みたいで、だからボクは時にこの"文化祭"の三文字に滑稽すらおぼえる。
もちろん一方で、文化祭がずいぶんと楽しいコトも承知する。
押井守が『ビューティフル・ドリーマー』で描く通り、いつまでも終わって欲しくない感が濃いイベントだ。
だからそれゆえ、学校の文化祭というのは落ち着かない空間なのだ。
鍋は食材を煮込むコトで統一の滋味が深くなる容器だけども、文化祭はそこが難しい。
少なくとも、じっくり座って講義を聴くような場ではない。


岡山市立後楽館高校・文芸部にゲスト講師として招かれ、大きなプロジェクターも用意され、じっさい、その方向で持って"講義"する計画で準備してきたけども、やはり、文化祭という場で、60分から90分ハナシをするというのは… そぐわない。
フタをあけてみるに、やっぱり、文芸部の大きな部屋へは来訪者が出たり入ったりで、常に流動して落ち着かない。
それで急遽に、担当の先生と相談し、展示模型の説明を個別で行うという方法に切り替えた。
雨天ではあったけど、一般参加オッケ〜の日ゆえ、そこそこケッコ〜な人。
同じハナシを数時間繰り返すのはオウムのようで多少はがゆくもあるけど、手応えというか先方の反応がオモシロかった。



とにかく女子(やや高齢者も含め)は闊達。
模型に接したほぼ90パーセントの女子が、何らかの声をだす。
同校の生徒か…、ド金髪の16歳くらいなのが、似たような女子と共に、
「屋根がこんなにペチャな寺があるもんかぁ」
一瞥で哄笑するのを、
「その塔は寺じゃなくって、明治の時代に、これがオマエさんの後楽館高校(旧)の場所にあったものなんだぞ、入場料はらって中に入って登って、岡山の街を見下ろせる仕掛けだぞ… あ〜だこ〜だ…」
説明してあげると、
「えっ!? うそ!?」
彼女の中で何かが変化し、小さな火が点灯するのを、ボクは頼もしく見る。
一瞥で通り過ぎる予定であったろうド金髪はこうして10分ほど、ボクとしゃべる。
明治の電気も水道もない時代の"物見の塔"とその周辺の数多の娯楽施設に彼女を連れ込み、彼女は連れ込まれ、意外性に束の間、心をひらき、さいごはちょっとはにかんだ笑みを浮かせて極く小さく一礼して去っていく。


生徒、生徒の母親… 女子の反応は頼もしい。
その場で受けた情感をストレートで出してくれる。


一方で、こたび呆れたのは、男子の反応である。
それは生徒も父兄も、視察に来たらしき教育機関の人も含めて、全部、男子はダメ没な個性をしか垣間見せない。
こちらの解説にもおしなべて表情に変化なく、質問もない。
女子がほぼ総じて、
「写真撮ってもいいですか?」
と、むろんこれはボクを撮りたいのではなく模型を撮りたいという次第ながら、そうやって声を出すのに対し、男子一同全員、こちらは無言でカメラ(携帯ね)で、ほぼ隠し撮る。
だから、興味を喚起されなかったワケではない。
その、こちらとの距離を隔てて自己中心的に完結なさったまま、その場を離れていく。
いちばん印象的だったのは、これは父兄かしら? 
女子複数にボクが解説し、女子がいくつか質問をしてくれたりして、いわばトーク・キャッチボールをしているのを、ただその背後から眺め、途中でニヤリと笑った40代前半のヒト…。
で、女子が去ると彼も同時に別方向へと向かってく…。
どうにもその反応は、参加せずに参加してる… みたいで気持ちが悪く、こちらとの距離の取り方がボクは気にいらない次第なのだ。



ここ数年、たとえばジャズフェスのイベントやOH君のライブ活動のヘルプで感じることがある「男子力衰退と女子力アップ」を、ここでもまた感じてしまったワケなのだ。
なので、つい数日前に管官房長官が、芸能人の福山なんとかの結婚ニュースにかこつけて、
「女性は結婚して子供を産んで国家に貢献してくれ」
という、トンデモ発言があったにも関わらず、これが一向に問題視されない世の流れにもまた、2重の"男子力衰退"をボクは思わずには入られないのだった。
1元的に男女の相違を分別したくもないし、自虐的に男女の差異を語りたくもないけど、けども… こたびの文化祭で感じた最大は、シャイとはまた別次元なふがいない男子の姿と明朗闊達な女子の、その熱エネルギーの高低差だった…。


ともあれ、終了し、模型を撤収。
外はケッコ〜な雨。
紙の模型だから雨は点滴じゃなくって真の天敵!
こたび最初から最後まで同行してくれたYUKOちゃん(12月講演のフライヤー・デザインを担当してくれる)に、大いに助けられ、彼女は濡れたが模型は水害から逃れて無事に帰還。
女子力、ありがたや… なのである。


でもって、明日は中国銀行本店前広場での『JAZZ NIGHT 2015』。
女子力に頼るっきゃ〜ないかァ、なのである。⇦オーバーですけど、な。
いささか不思議を憶えたので、以上、一筆。