リスボンに誘われて

予定していた取材ツアーが先方の都合で数日延期。
急に日程が空いたんで、一考。
アマゾンのPrime Videoで映画を複数観る。 
配信による映画鑑賞。
未だこの方式に懐疑をおぼえ、それをまさぐってやろうと、立て続けに観る。


が、配信というカタチに不慣れという1点以外、アンガイと懐疑する核心ポイントがない。やはり、映画は映画として観られるワケで…。
iPhoneないしiPad経由でモニターに映し出せる利便性に、逆に不信している程度の自分に気づく。アンプを通せば、サウンドはステレオ。
わずか2500円程度な年会費でもって数多の映画を観られるから、映画が気の毒と思う心情があるのか… その感覚に、ただ違和しているに過ぎないのか。
おそらくは、直きにこの環境に慣れて、DVDと並列でPrime Videoに馴じんでいくんだろうとの予感の方が大きい。
ボクの中の抵抗感は、要は、"お手軽に観られる映画"という新規なカタチへの、いわば着心地の悪さ… みたないもんかもしれない。


ともあれ、せっかくだ… 観た映画を列挙。



ゴーストライター
2010年
ロマン・ボランスキー監督
ユアン・マクレガーとピアース・ブロスナン主演。
いかにもボランスキーらしい、権力不信な運びと顛末。



『真実の行方』
1996年
グレゴリー・ホブリット監督
リチャード・ギア主演。
エドワード・ノートンが多重人格者。
かねてKちゃんより、E・ノートンの演技が凄いとは聞いていたけれど、観る機会がなく、やっとこたび観賞。
たしかに、たしかに… ノートンの演技が強烈。遂にもう1つの人格が出てくる中盤、一挙に、R・ギアがくわれて主役の座から転げてた。
映画の成否は脚本と役者でほぼ半分が、決まるのではなかろうか。ま〜、その意味では敵対する検事役のローラ・リニーのベイビーフェイスが残念。熱演ながら、その幼な顔は丁々発止な法廷の場ではあまりに弱い。



『アデル/ファラオと復活の秘薬』
2010年
リュック・ベンソン監督
過剰に云えば前代未聞のオモシロサ。不要な説明描写が一切ないのもヨロシイ。かつてミイラをこれほどチャーミングにファンタジーしちゃった映画はなかったようだから、愉しさ増幅。
主人公姉妹の興じるテニスのシーン必見。
しかしさすがに仏蘭西映画。かわいい主役も裸をみせる。これは米国じゃ無理。



『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』
2011年
ポール・W・S・アンダーソン監督
『アデル/ファラオと復活の秘薬』もそうだけど、邦題があまりに説明的。なんで日本の映画邦題はこうもくだらないのだろう? センス以前の問題。面白い映画を面白くないものにするマジックみたいでせっかくのファンタジーが舞台裏をサラされて台無し。
しかし映画はオモシロイ。CG多用ながらもヴェルサイユ宮と古式な飛行船。悪くないビジュアル。悪くないどころか、再見したくなる勢い有りな"娯楽ムーヴィ"。
パート2を撮ってくれ、と願いたくなる速度感が頼もしい。
主人公らに対峙するバッキンガム侯爵に扮したオーランド・ブルームが、どこか悪役に徹しきれていない感もあるけど、リーゼント風味なケッタイなヘアスタイルは許す。



孤独のグルメ
シーズン!〜4
ボクはTV受像器を持っていないから、番組は観られない。
配信の利点はリアルタイムではないにしろ、それらに接するコトが出来るという点かしら。
ほぼ無作為に何本かを観て、ニヤニヤする。右手をあげ、
「すいません」
と、何ぞ、オーダーしたくなるような食の旨味がよく伝わって、なるほど、こりゃ人気番組となるワケだと納得。食べてるさいの主役(名を忘れた)の満足げな表情というより… ふきだす直前みたいな顔が、要とみた。
Prime Videoには『バトルスター・ギャラクティカ』も全話あるから、いずれ少しづつ観よう。
DVDを買ってでも… という次第でない映画なり番組を観られるのは、ありがたい。
ぁあああ、しかし、やっぱ… パンもいいけどゴハンだよな。



巷説百物語 狐者異』
2005年
WOWOW 堤幸彦監督
大杉漣片桐はいりなどなど特徴ある役者陣の演技に頼っただけ。『トリック』とそう変わらない堤演出に失望。
DVDを買わずしてこのように評価してしまえる配信という仕組みに、やや悲哀。


巷説百物語 飛縁魔』
2006年
WOWOW 堤幸彦監督
最初の10分で、観るのを止める。



忠臣蔵
1958年
大映 渡辺邦男監督

昭和中期の日本人の心に見事にのっかって、結果、後の"赤穂史観"に多大に影響を及ぼした作品。
長谷川一夫・滝川修・市川雷蔵鶴田浩二若尾文子山本富士子・京まちこ・勝新太郎淡島千景中村玉緒・中村雁治郎・志村喬……。    
錚々きら星の俳優と大掛かりにして絢爛のセットに酔う。
大仰にして古風なセリフ(今は日常に使わない多々の言葉もあって)の講談調も逆に新鮮。
長谷川演じる大石内蔵助が妻子に離縁を申しつけるシーンは、否応もなく、泣ける。
実は、「赤穂浪士」ものをボクは好まない。忠義を御旗にすれば惨劇も賞賛となるようでは今のテロルを非難できない…。史実を曲解して創作された、これはいわばダークサイドの"物語"の力を知る映画。これほどの美談はそうそう創れない。
これほどの予算をかけた絢爛は今の日本じゃ、作れない、観られない。
1964年のNHKの日曜大河ドラマ赤穂浪士』は、この映画の長谷川に滝川が同じ役。リメークだったと知る。



リスボンに誘われて』
2014年作品
ビレ・アウグスト監督
主役は風采あがらない高校教師。けど、その彼が「ダイハード2」のあの鮮烈な印象ある悪役だったジェレミー・アイアンズと判るや、俄然、興がわく。
役者とは空恐ろしいもんだ。あの悪役がこの平凡な教師となって眼前にいるんだから、いや〜〜〜映画は素晴らしい。
1970年代、ポルトガルの人々が圧政に苦しんでいたという事実をこの映画ではじめて学んで、また無知を自覚した。
思えば、『ゴーストライター』のロマン・ボランスキーはその圧政時に米国に脱出したうちの1人なのだった…。
若い人には向かないだろうけど、苦みがある良い映画。タバコのシーンが苦みを印象づける。すでに恋の適齢期をとっくに過ぎた我が身にシミシミ浸透して、こりゃ我がベスト20位いり。
シャーロット・ランプリングが大事な役割を演じているのも得点。(ぁあ、健在だったんだ!)
ベスト10に昇格させてもいい。
あえてDVDを買おうかとも、思う。
そう、たぶん、Prime Videoはその1点で大いに有益。逆にいえば、立ち読み感覚が配信にはあるというコトなのだ。
配信以前はこの感触は映画館での予告編でしか味わえなかったのだけども、本編丸ごと全部をその気分で見通すコトも出来るワケで、だから、配信は"映画を観る"という行為にあらたな概念を加えてしまったというコトにもなるんでしょう、な。