遠くの梵鐘

年に… 1度あるかないか、早朝に鐘の音を遠くに聞くことがある。
どこのお寺さんかは判らない。
おそらく毎朝、釣鐘を突いていらっしゃるのだろう。
だろうけど、遠いからか、こちらの耳には届かない。
きっとよほどに空気が澄んで他に音源がない時… それで年に1度あるかないか、ということになるんだろうけど、そのたまに聞く音色というのは、やっぱ… よいもんだ。
凜とした感があるというか、凜という単語1つがクッキリ後光を帯び出すというか、まこと日常にないチョイとしたシャキッとな、それも透明な感覚が兆すから… よいもんだ。



その昔は、寺の鐘の音を鯨鐘ともいったらしい。
ボンショウでなく、ゲイショウ。
鯨のようにデッカイ… ということだろうとは思うが真意は知らん。



寺の鐘は、いつから聞こえなくなったろう?
小学生の頃には、頻繁に耳にしていたような気もするが、いかんせん、その頃はその音に興味を持っていないから… 記憶がさだかでない。
けどもきっと、昭和前期、大正、明治、江戸… くだっていけば、寺の梵鐘は朝昼夕と時間を知らしめる大事なサウンドとして、あるいは暮らしの句読点として、かかせないものであったろう。
そこを思うと何やら、鐘の音が愛おしいような気もしないではない。
時間は、腕に巻くものでもなく柱に吊り下げるものでもなく、山ぎわの黒い瓦の寺から発っせられ、それがつまりは人のiWatchなのだった。


それも、3時45分6秒をお知らせします… てな精緻じゃなくって、ザックリと、だいたい3時ですよ〜なアンバイがいいではないか。
いま、この国で、「時計廃止令」が出たら、きっと面白かろう。
「時間計測は個々人の感覚でヤッちゃって下さい」
となれば、たぶん、8割くらいな人は、自分を失うだろう。



あんがい、ボクはその8割に入らないタイプかもしれない。
飄々と活きてます〜なアンバイではなく、朦朧と生きてるから、むしろ、刻限に追い込くられるのを忌避してきたから… へっちゃらかも知れない。
時間を気にする… というのはストレスなもんだ。
けどもかといって時間から逃れることも出来ずで、そこのバランスがめんど〜い。
実のところ、今、その追い込まれ状態で時間不足を痛感中。
出かけず、騒がず、1日の大半をベンキョ〜机にしがみついてる次第がもどかしい。


上写真はいずれもTVシリーズ「タイムトンネル」から。もう何10年も再見していないけど… 中学生の頃、白黒テレビの中のこの女優さんを「良いなぁ」と思ってたもんだ。



でもって… 高校の頃には、やはりTVシリーズだった「謎の円盤UFO」のその後半になって登場してきた、彼女が「良いなぁ」と思ったもんだ。
ワンダ・ベンサムという名の女優さん。



当時は、月面基地で活躍のエリス中尉に扮したガブリエル・ドレイクがダントツ人気じゃあったけど… ボクの場合はワンダ・ベンサムが1番だった。
ま〜、昨今の人にそんなハナシをしてもシャ〜ない。
このワンダさんが、「シャーロック」のベネディクト・カンパーパッチの実のマザ〜だよ。



ここで使った写真はエピソード24話「TIMELASH」のもの。邦題は"時間凍結作戦"。なかなかこの記事にふさわしげなタイトルじゃんか。
しかし、ベネディクト・カンパーパッチが既によい年齢に達しているように… 当然、そのお母さんもまた時間の中に生きてるワケで、気づくともうワンダさんも80歳なのであるから… 時間というヤツは…、容赦ないもんだわい。