勝手にシンドバッド part-1

土井さんと戸井さんが違うように、シンドバッドとシンバッドは違うはず… だ。
したがってシンバッドをシンドバッドと呼んだり書いたりは、人違いも甚だしい… って〜な感触のコトを前回書いたけど、ま〜、どうでもいいコトかもだ。
しかし、カレーライスにラッキョウを添えるか福神漬を添えるか… くらいなケッコ〜大事なポイントのような気がしないでもない。


原作たる『千夜一夜物語』のシンドバッドのローマ字綴りは、実は、Sinbadではない。
Sindibaad と、綴る。
あえて口語で書くと、シンディバァ〜ドがかなり近い音になるようだ。



千夜一夜物語』は、なんせ1000の話で紡がれているから、当然になが〜〜い。
バートン翻訳版が1番にヨロシイというのが定説。
シンドバッド(Sindibaad)は第537夜から第566夜の話として登場します、ヨ。
(挿画がとてもエロチックなちくま文庫の全集では第7巻に載っている)


ちなみにイスラム圏では『千夜一夜物語』は喜ばれない。部分を子供用ノヴェルにというコトもない。
ながい歳月をかけて本としてまとめられる過程でキリスト教的史観や思観が入り込み、正しくアラーの元での生活を活写していないというのが理由らしい…。



さてと今回は、その『千夜一夜物語』を材にした映画について…。
ハリーハウゼンの『シンドバッド黄金の航海』(1973)が今もって日本も含め海外でも多くのフアンがあり、その次ぎの『シンドバッド虎の目大冒険』(1977)はいささかそうでない… というのは、1にも2にも… ヒロインの差でござんしょ〜。
『シンドバッド黄金の航海』のキャロライン・マンローはこの映画で魅力炸裂 ♡
1967年の『007/カジノ・ロワイヤル』や1977年の『007/私を愛したスパイ』などなどでもご活躍ながら、何といっても、この『シンドバッド黄金の航海』の彼女こそが、ハリウッド産アラビアンナイト的エロスの火点ではあるまいか。



エキゾチックなボディと眼のクリクリ感は… のちのアグネス・ラムちゃんの健康ボディと印象ある眼の光輝に引き継がれて、たぶん、そういうのを好みとする日本人男性がケッコウなパーセンテージでもって存在してたって〜ワケでもあろうけど、ま〜、そんな分析はど〜でもよくって、胸元とお臍を大いに強調した衣装をデザインして彼女にまとわせた映画の衣装デザイナーと縫製された方々は、やはり、
「偉い!」
と云わねばいけない。
むろん、それにバッツリ応えて、存分に着こなしたキャロライン・マンローという女優さんは、やはり、月並みな表現ながらスターと云わねばいかんだろう。


対して…、『シンドバッド虎の目大冒険』は2人の女優がガンバッたにも関わらず、はなはだ精彩をかく。
かたや、ポール・マッカートニーの名曲が即座でアタマに浮く『007/死ぬのは奴らだ』でヒロインもやったジェーン・シーモア
かたや、タイロン・パワーの娘。
この2人でもって前作を上廻る予定がフタをあけると、そ〜でない。
2人には気の毒だけど、キャロライン・マンローのオーラがはるかに優る。



そもボクは『007/死ぬのは奴らだ』にジェーン・シーモアが出たさいも、
「なんで、このような魅力ないヒトがヒロインにゃの?」
映画館の暗闇の中でかつて悪態をついたもんだ。
むろん、このヒロインが007シリーズ最初で最後のヴァージンという設定なのだから、艶っぽい女優さんではいけなかったとは判るけどもだ… 当時も今も、どのような角度から眺めても… このジェーン・シーモアにほぼ何も感じられずで、それが『007/死ぬのは奴らだ』の評点を下降一直線にして今に至ってるんだから、ま〜、逆説的にいえば、それがゆえに印象に残ってしまってる… という妙なアンバイな女優さんなのだ。



彼女は大人の女でも子供の女でもない、なんだか中途半端な、通行人女性Aさん程度な存在。魅力に乏しい。
タイロン・パワーの娘にいたっては、これはもう親の七光り… で、さらにジェーンに輪をかけ、大人の女でも子供の女でもないのがいっそ痛々しいレベルで、それゆえダブルスでもって『シンドバッド虎の目大冒険』の足を引っ張った。
ハリーハウゼン達製作者も、その辺りの消息が撮影中に判ったのかもしれない。
キャロライン・マンロー同様な衣装を着けてもジェーンに光輝がないと判ったのかもしれない。
なのでハリーハウゼンの映画には珍しくヌード・シーンまで用立てたものの、それでも… 浮上する揚力に欠けると悟って、
「あんりゃ…」
愕然としたかもしれないが、も〜オソイ。



だからこの映画では、ヒロインよりも、敵対する中年の魔女の方がよほどはるかに注目に価いしたとボクは思ってる。
エロさが体臭レベルで前面に出て妖艶、その上で悪女の気迫がコーティングされて、ヒロインより3倍ほど年齢が上とはいえ、女性としての魅惑がよほど眩く堅牢。
熟年であるがゆえに逆に女であることが光り、このヒトが若い時はさぞや大勢の男が手玉にとられたろう、いや、今もそ〜でないかしらと、そう直感させる深みまで醸されて、結果としてこの魔女な女優こそが『シンドバッド虎の目大冒険』の最大の見所、最高の艶、要めの髄、という意外なコトになってるんではなかろうか…。
演じた女優さんは、本作以外にはめだったものはないようだけど、な〜に、この1本こそが彼女を彼女たらしめる宝石箱。
『シンドバッド虎の目大冒険』といえば、ボクにはこの女優さんの顔が最初に浮く。重厚真紅なビロードの感触で。



しかし、この素晴らしい悪女を最後の対決シーンで、ただのサーベルタイガーもどきに変身させちゃって人形アニメしたのは、これはビッグな誤算だろう。
むしろ、その悪女を、メデューサでもなく多腕な怪物でもなく、彼女の顔のままの未知な怪物に仕立てていたら…、ただもうムチのようなシッポがあるきりでも、身長が通常の3倍になっただけの化け物でも、260万を越える都民が小池百合子をチョイスしたように… 『シンドバッド虎の目大冒険』の点数はバビュ〜ンとアップしたろうと思う。
ぁあツクヅク残念。


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