メダマの手術前


あと数日。
… そう、メダマを手術してもらうワケなのだ。
かねてより妙なアンバイだったけど、ジワジワ蚕食されてるような不穏があったんで… ジャズフェス前の9月頃からこっそり眼科に出向き、アレコレ調べてもらって、白内障+眼底部異常と診断されているのだった。


白内障だけならば、過去、おふくろさん含め何人かの手術とその経緯を知ってるから、そ〜過度に心配はないけど、眼底に障害ありとのコトゆえ、いささか気が重い。
けども、いま、右の眼では、その2重の障害ゆえに、例えばテーブル上の1万円札が2万円に見えるというなかなか裕福な心持ちが兆す反面、ドライブすると対向車が2台やってくるという、かなり危なっかしいアンバイになってるんで… こりゃ、治さなきゃ、ど〜にもはじまらない。


イヤなものを後回しするように、手術はジャズフェスを終えてから… というコトで日程調整してもらってたんだけど、ジャズフェスの熱狂は早や過ぎて、早いもんで… も〜期日が迫ってきた。
術の数日前からのお薬の点眼とかとか…、滝の急峻に向けてソロリソロリと近寄り流れるようで、ど〜も… 落ち着かない。


術前数日かけての定期点眼、手術、その後およそ1週間毎日の通院…。
面倒だなァと思うけどシカタない。
むしろ、手術期日が迫ってくるほどに、不安な気分が湧いてくるのがヨロシクない。
どうかすると、最悪のバヤイ失明… とかな余計が頭をよぎり、ま〜、押しつぶされるホドではないにしろ、まるで… 子供の奴隷が、買われた先で、怯えて竦んでる… みたいな頼りなさが兆してくる。

そこをうっちゃるため、立て続けてあれこれDVDで映画を観たりする。
かえって、眼に負担かけてんじゃん!… なオチがつくけどね。



その1本、『グランド・ブタペスト・ホテル』はずいぶん良かったな〜。
最近の007映画でM役のレイフ・ファインズが主役でジュード・ロウやらエドワード・ノートンなどなどが脇を固めて、かなり豪奢、絢爛。
わけても、キアヌ・リーブス主演のなんだか禁煙映画みたいな味もあった『コンスタンティン』で、天使ガブリエルに扮して実にまったくチャーミングだったティルダ・スウィトンが、80歳過ぎた貴族の婆さんで登場したのは、
「ワオ〜ッ、嘘ッそ〜!」
いささか衝撃で、ビックリ喝采ものだった。
すごいね特殊メイクは… というよりも、この女優はイイね〜。




次いで、ロビーボーイ役のホントはこの映画の主人公たる… 無名の役者がメチャにヨロシイ。
この映画のそこはかとしたユーモアはすべてこの役者から香りでる…。



しかし何より、『グランド・ブタペスト・ホテル』は主題の描き方がとても良いね。
第1次と2次の大戦を挟みつつ、ヨーロピアンな貴族的デカダンを郷愁と描かず、悪しきとも描かず、高齢者の恋心というか肉欲を含め、いささかなブラックな笑いでもって時代の激変の中の人間を描いたという点で、なんだか前例のない秀逸。



おそらくこの映画の美味しさは、30代くらいの若者にゃ味わえない性質の滋味と滋養がタップリンコン… と思えて、なんだか妙に、年とってその味が判るような気がする自分が嬉しくもなる。
こりゃまた再見だわ、そ〜コッソリ北叟笑む。
むろん、それはメダマが良くなってから、だけどサ。