多少修正

金曜の朝刊で再び「びわのみ文庫」模型を取り上げてくれ、とってもありがたいとは思うのだけど、若干、誤りがあるので… ここで修正しておきたい。
びわのみ文庫」のコトではなく、模型仕事に関しての記述…。



アポロに関してのコメントに取り違えがある。
「着水時のエアバック…」というくだり。
それはアポロではなく、マーキュリー計画での話なんだ。
記者氏はとても熱心真摯で好感大なのだけど、米国のスペースシップ開発はヒストリーに起伏があって、ちょっと混乱されたようだ。
ま〜、話し手のボクがうまくお伝え出来なかったという次第がヨロシクないんだけど、月へヒトを送るには段階があったワケなのだ。

マーキュリー計画
ジェミニ計画
アポロ計画

この3段階を経て、1969年の7月にヒトは月に降り立った。
マーキュリー計画アイゼンハワー政権だった1959年にはじまり、当初は月に行くなどとは誰も思っていない。ソ連人工衛星を打ち上げて1歩を先んじたから、その対抗として、人間を地球周回軌道に乗せ、無事に帰ってくるというのを目的にNASAが組織され、計画が動きだした。


しかし1961年の4月にソ連ガガーリンを打ち上げ、地球周回に成功する。
あわてる米国。
2ヶ月後。アラン・シェパードを搭乗させたマーキュリー3号で、15分に満たない弾道飛行に、やっと成功する。
すでに1957年の時点でスプートニクを周回させ、さらにガガーリンを周回させたソ連と、たった15分の弾道飛行が出来ただけの差は大きい。
ソ連に負ける… という恐怖と萎縮にプルプル震えた米国民を鼓舞したのが、共和党から民主党にと政権が変わっての、ケネディだった。
たった15分の飛行が出来た月の月末(5/25)、ケネディは、
「60年代が終わるまでに月にいく」
議会で、ぶちあげた。
あと、9年しかないに関わらず、だ…。
技術も組織も施設も何もない状況で、ある意味、これはホラ吹き男爵の、あるいはドンキホーテの誇大妄想そのものだったけど、ライス大学の演説(ライス大所有の広大な土地がNASAに提供されたさいの記念スピーチ)でケネディはさらに畳みかける。
「ないからこそ、やるんだ」
意志を決定的にした。
そして加え、
「莫大な経費がかかるかもしれない。しかしそれはあなた方が消費するタバコの税でまかなえるんだ」
夢想と現実を実に巧妙に合体させ、国民一同を納得させ、かつヤルキをおこさせた。



※ 大統領に就任した朝のケネディ。背中にいるのはこの前まで駐日大使だったキャロライン・ケネディ


それでマーキュリー計画の性質が変わった。計画そのものが目標でなく、計画はあくまでも第1段階のものというコトになってった。
よく誤解されるけど、3つの計画は順次に遂行されたけど、計画そのものは同時進行で動いた。
マーキュリーで周回回数を増しつつ実技実績を積みつつ、同時に、アポロ計画のための技術開発としてのジェミニ計画、そして、アポロ計画での月に向けての打ち上げ企画も動いているのだった。
今も使われ続けるお馴染みのケープカナべラルの発射場の建造も、マーキュリー計画を遂行している時期にはじまっている。
建造がはじまったのは1962年の7月。翌年の11月にケネディは暗殺され、建造完了を見届けちゃ〜いないが… ま〜、それゆえ、今はそこを「ケネディ宇宙センター」と呼ぶワケだ。



で、ここでの本題。
マーキュリー・カプセルは戻るさい、コントロールは出来ない。
まだその技術がない。
パラシュートで速度は落とせるが、あくまで自由落下…。
着水時、重力法則でカプセルは当然に重い部分が下に位置し、それはお尻部分の丸いところなんだけど、海面にまともに"衝突"をする。
そこいらのプールでお腹から飛び込んだヒトなら判る通り、とても痛いぞ、ときにお腹がマッカになったりするぜ… くらいだから、重い金属はなおさら衝撃が凄まじい。
その衝撃を緩和すために開発されたのがエアバックだ。
当時はインパクト・カーテンとかインパクト・スカートと呼んでいたりもした。
これで宇宙飛行士の着水時の安全を確保したワケなのだ。
しかし、月に行って帰って来る宇宙船はマーキュリー・カプセルの比ではない大きさと重さ。
スカートみたいな、空気で膨らませた風船じゃ、心もとない。
実際、マーキュリーで使われたそれは着水と共に破裂し、100パーセント機能したとは云いがたい。




それで次ぎのジェミニ計画では、着水時のポジションを変え衝撃をやわらげる策が練られ、実証される。
まともにお尻をぶつける着水ではなく、底面の角ッコから海面に突入させて衝撃を吸収させるという手法。
これはパラシュートにテンションをかけ、ジェミニそのものの姿勢を変えることで実現させた。


次ぎの本番たるアポロ計画で、姿勢を制御コントロールする技術を確保。飛行士そのものが"斜め運転"出来るようになる。
斜め、すなわちアポロ司令船のお尻部分をジェミニで実証実験したのと同角度で海面に突っ込ませるというのを人力で行えるようになった…。
そう、アポロは、落下してるんではなく、あれはチャンと"運転"しているんだ。



と、以上の次第をこの前、記者氏にお話をしたわけだ。
記者さんは大変ですな〜。これだけでも長いハナシなんだから…、それをテッテ的に刈り込まなきゃ〜いかんので。


ま〜、しかし、また同じ写真(ボクの嫌いな)が使われたのは何とも… だけど。
すかさず、Eっちゃんが、紙上写真は、
「フィルターなしだからな〜」
と笑い、しかし、れっきとした堂々たるジ〜サンであるコトもまた自覚せよ… とのメッセージをくれて、何やら和んだりほころんだりした、ゾ。
ありがたいね〜。
今度あったら、1杯おごろう。
で、すぐに2杯おごってもらおう。うん、これでバランスがとれる。
で、一緒に唄おうジャン。
「じぃ〜じぃばぁ〜ばぁ じぃ〜ばぁ〜ばぁ♪」
「バランスとりよが おっかしかネェ〜♪」



※ スペースシップのサイズ比較