遊星王子 ~井山君のブギウギ・アコーディオン~


アマゾン・プライムで、若い梅宮辰夫が演じた、1959年の映画『遊星王子』2本を観て、あまりの面白さにメダマとノ〜テンが、ガチョ〜ンと悦んだ。
宇津井健主役の『スーパージャイアンツ』などともダブるケッタイな面白さ。
今やこのような映画は創れない…。
まるで異界の映画を観てるような感覚が生じるけど、まごうかたなき日本の映画。
ダイの大人がテッテ的に学芸会をやってる風情の真面目っぷりが、爽快にして豪快。



小惑星帯の中を遊星王子の宇宙船がガンバッて脱出するシーンなど、むろん今のメダマじゃ…、痛ましい限りの描写だけども、発想の溌剌が炯々していて味わい深い。
王子の日常は、新聞社ビル前路頭の靴磨きというのも、いい。



※ 梅宮演じる遊星王子


なんといっても悪人が素晴らしい。
ケッタイな付け鼻に、タイツ姿。それもベスト・フィットでない点が好もしい。
首領は、「銀星のまぼろし大使」という名で、ま〜ダーズヴェーダーみたいな者だけど、衣装をよく見りゃ、首廻りや腰廻りに大胆にフリルをあしらった装束だ。
これは町を歩けまい…。
ちなみに銀星はギンセイという天体だかんね。



※ 右がまぼろし大使


その部下たちも良いネ。
大量にいて…、いずれも付け鼻にタイツ。
15世紀末ルネサンスと17世紀バロックとの融合に仮面舞踏会を常態化させたようなファッションというと聞こえイイが…、否応もなくメがその下半身に向かう。
いささかあられない個体差ある男性役者らの悲哀も観賞でき、抱腹しちゃ〜いけないけど、ついつい破顔し、かつ大いに馴染んでしまう。
中には下腹がずいぶんに出てるメタボな役者もい、それが懸命に悪役をやってらっしゃるけど、悪人っぽくふるまうホドにその下腹のデッパリと股間のデッパリが…、やたらの滑稽をみせてくれ、
「ダハハハハ」
愉しく笑うっきゃ〜、ない。



そういうカッコウだから、地球の東京で悪さする場合、目立った鼻を隠すために全員、マスクを着用。
マスクにサングラスに作業服と3点セットで化けてはみても、団体行動なのでカルト集団っぽく目立っちゃう。
おまけに首領の「銀星のまぼろし大使」だけは変装せず、フリル付き装束のままなんだから…、世界支配の野望と現実にやってる行為のギャップがでかく、いっそ、シュールな映像を眺めてるような感が深まり、いまどきのTVドラマをはるかに凌駕して"奥深く"、飽きなかった。
カラーでなく、白黒映像なのも、いい。
古くて大袈裟で時代遅れなのを大時代的というけど、なんのなんの、そのオ〜ジダイなテーストこそが今は創れないんだから、『遊星王子』、あなどっちゃ〜いかん。



も1度、「銀星のまぼろし大使」のアップを眺めよう。
上むきの眉毛、口ひげ、首のフリル…、この上むき3点揃いが素晴らしい。
46時中、ヘッドフォンを付け、情報は1つも残さず聞きとるぞな前向きアンテナ姿勢も好感だ。
で意外や、極めて美しい日本語発音をされるんだ、この方は。
部下らがヤヤ品のない発音と発言ゆえ、そこがチョット際立つ。さすが…、アンバサダーを名のるだけのことはある。
ダースヴェーダーが米国英語じゃなくって、古風で格調ある英国英語で話す…、のと同じでこの演出も素敵。
ちなみにこの方のお住まいは、"銀星奇厳城"って〜名のお城だ。
宇宙遺産登録すべきだ、ヨ。



先日某夜、某BARにて、ライブ。
それもカウンター席に向けて厨房に"特設のステージ"を組み上げた、同店としてはいささか希有な構成。
手狭な空間によくぞステージを組み上げたもんだ…。今回はじめてスタッフ的立ち位置でなく観覧の立場に身を置いて、つくづくに、
「わおっ!」
感心させられた。
主催のM氏、店オーナー、裏方に徹したEちゃん、他何人か…、仕込みから本番まで影でもって動いて、その上で本番をチャンとは聞けない立場というそこを濃く感じつつ、楽しませてもらった。


演じるは、かつてモーガンズ・バー(バンドの名だよ)の一員として超絶のキーボードでオーディエンスを釘付けにした井山君。
5〜6年っぷりの再会か?
ライブハウス「MO:GLA」での公演後、朝方まで、あがた森魚について語らって以来…、と思う。けど、お久しぶりの感じなし。
笑いを軸にした今回のライブはアコーデオンを駆使しての独演。井山は日本に数人いるかいないか…、のブギウギ・アコーディオン奏者。
その技巧を誇るでなく、技巧に溺れず、卓越の奏法を下敷きに、客をノセにノセ、気づくと客が勝手に歌い出したり、個々で立ち上がってハシャグという面白み。
観客とミュージシャンがここまで一体化したステージは、ボクの経験上でも、そうあるもんじゃない。
音楽パフォーマンスの持つ醍醐味を久々味わった。
その原初を、久しぶりに堪能、浸かれた夜だった。



今の日本は個性をも消費して喰い散らかす…。
彼はそんな時代に添い寝しない。
そこが凄く、いい。
思えば、銀星のまぼろし大使もそうだった。
梅宮演じる遊星王子がどこか人類に媚びて生きてるようなアンバイに比し、まぼろし大使の勇猛果敢な闊達も、そうだった。
こんな存在こそに宝石の煌めきをおぼえて、好き。