ローグ・ワン


この映画は暗い内容だけど、過去のスターウォーズ・サーガを凌駕するスペース・シップやらの物量的テンコ盛りな登場や、地表すぐそばまで降りたスター・デストロイヤーなど、絵として単純にオモシロかった。
そのDVDが届いたので早速に再見。


イオンシネマ岡山で観たさいは、偶然にも某神社の神主氏と遭遇。
しかもリザーブ席がボクの真後ろという、まことに不都合というか、可笑しいシチュエーションで、観覧後に両者照れ笑うというか、隠れフアンたるが互いにバレちゃって呵々大笑…、印象が変に濃くなってしまったのだけど、あらためてDVDで観ると、ジョージ・ルーカスが参加していないことで、モロモロな表現に伸びが出ているよう思え、妙な得心も感じたんだった。



巻頭でのヒーロー役の薄暗い殺人行為、やがて組織化される反乱側の動向、対する体制側の苛烈で不法な取締りなどなど観察するに、テロという1語を踊らせて共謀罪など作ろうとする今の時世の流れにも血脈が通じるようで、深く考えはしないけども、善と悪という2極な構造ではない、きな臭い感じ悪さだけがアクのように浮く映画じゃ〜あった。
その感じ悪さこそが『ローグ・ワン』の良さとも思える。
しかしルーカスの時代を含め、全作通じて、ただの1つもマスコミという存在が出てこないのはスターウォーズ・サーガの特徴だ。あの広大な星々の合間をどのように情報は行き来してるんだろか? いまさらに訝しむ。



ルーカスは自己作品を溺愛がために、彼がトップとして関われば関わるほどにスターウォーズ・サーガを結果としてつまらなくした元凶、とボクは思って久しい。
4作目たる『ファントム・メナス』でジャンク置き場に『2001年宇宙の旅』のスペース・ポッドを登場させてみたりと…、マニアに媚びた姿勢もいただけなかった。
CG技術が進むと同時に旧作を改変してはDVDで販売披露するというのも、こっちが疲労するばかり…。
なので最初の3部作は映画館にビデオにレーザーディスクにDVDとつきあったけど、『ファントム・メナス』以後の3部作は劇場で観たものの、いまだDVDすら買う気をおこさない。




歳月が流れ、ルーカスがILMを含めて彼の諸権利をディズニーに譲渡したのは、良いことだった。
おそらく、数多がジンワリ圧力をかけ、彼に譲渡決心をさせたのだろう。
20世紀FOXでなく、ディズニーというのも、彼をくすぐった。
ディズニーには、とんでもない大赤字になったものの『ジョン・カーター』という、アップルのスティーブン・ジョブスに献げられた秀逸なのがあって、E・R・バローズ原作のこれはおそらくルーカスがもっとも造りたかったであろうSF(火星のプリンセス)で、彼を大いに刺激しギャフンと云わしめた1本には違いないし、その力量なら委ねてもよいと希望をつながせたのかもしれない。


けども譲渡後、彼なしの新作『フォースの覚醒』を観たルーカスは、公開日のクリスマスに、
スター・ウォーズ全6作は私の子供だ。私が作り、非常に密接に関わり、それを愛している。私はそれを奴隷業者に売ってしまった」
CBSテレビに生出演し、激嘆した。
これに即行で、ILMのトップとなったキャサリーン・ケネデイが猛抗議し、以後、彼を黙らせ、発言を撤回させたところにも、その存在弊害が窺い知れた。
夫のフランク共々にルーカスやスピルバーグの良き仲間でありフレンドであった彼女を烈火させるほどに…、ルーカスはいわば自己愛的偏屈に堕ちているんだと思える。



※ 『帝国の逆襲』公開時に"スケッチブック"に掲載されてた初期モデルをフルスクラッチしたもの。も〜、ずいぶんと昔だね。


ルーカスには気の毒ながら、自分の創作物が自分から離れて歩いているコトに彼は、たぶん本質のところでは今だって、気づこうとしていないんだろう。
インディアナ・ジョーンズのシリーズ最後作でもって、バカげた空飛ぶ円盤を登場させて、監督のスピルバーグはやむなくそれを呑んだけど…、おそらくその辺りからルーカスはもうダメだの空気濃度が昂ぶっていたろうとも、思う…。
時代遅れもまた顕著。彼は1950年代後半あたりのSFカラー、あるいはその時代の甘味な空気に染まりきってそこから出られないんだ。


それを押さえ込むに、ディズニーは4000億弱のマネーを彼に支払った。
数万の職員を抱えた大企業シャープの身売りが8000億弱。たいしてルーカスはたった1人で4000億弱…、の売却なんだから、彼の『スターウォーズ』とその母体会社たるILMがどれだけ価値あるものか…、知れようというもんだ。
金のタマゴを産む創作物をそのままルーカスが所持していると、やがては銀か銅か、あるかはアルミ程度な軽量になるとの危惧が、廻りで働いたんだろう。
ルーカスは毎日フェラーリを4〜5台買い換えてもまだたっぷり余りあるマネーを手にしたけども、しかし子を奪われた気分は、キャサリーン・ケネデイがどれくらい叱咤しようと、たぶん彼を終生苦しめるだろう…。
老人と海』の巨大魚と格闘の末の、かの人物の複雑な老いの悲哀を思わないではいられない。



ま〜、けども、そんなコトはもはやどうでもいいのだ。
ルーカスの子たる"スターウォーズ"はとっくに成人して乳(父)離れ、ルーカス家の居間にいない。
『フォースの覚醒』にしろ、『ローグ・ワン』にしろ、諸手あげて、
「ぁあ〜、オモチレ〜♪」
とは思わないし、ハン・ソロの処遇に関しちゃルーカス同様に、
「ぅぅ〜ん、それって…」
濃く尾を引いて嘆いているワケだけども、この先どのようにスターウォーズ映画が造られ続けていくのかは、ま〜、楽しみじゃあるよ。
007とスターウォーズとボーンは、今の所、映画のお楽しみ3大シリーズ…、かな。
『フォースの覚醒』にカメオ出演してたダニエル・クレイグと『ハムナプトラ』シリーズのレイチェル・ワイズが結婚していたなんてニュースを昨日やっと知ったりして…、
「ふ〜〜〜ん」
感想のない長嘆息をこぼしたりしてる。