少年ロケット部隊

某放送局宛にと乞われ…、ほんの数日で提出出来ると思ってた書類作りに手間取ってしまった。
近頃は、1日で出来るコトは数日かけてヤレばよい、というスタンスでいるもんだから、そのクセがここでも出たかとも思ったけど、チョット違う。
アレも含め、コレも含めなくっちゃ〜な、そよぎに加えて、たぶんにいささか緊張が加わっている。
緊張の必然はないんだけども、どこか、
「ボクにしか出来ないじゃん、それって…」
な、おごりがあったからだろう。
それが昂ぶりになって、結果、数日で出来上がるものを、10日費やしてまだ完了しないというテイタラクを産んじまったようだ。始末が悪い。

スイ〜ムスイ〜ム ス〜イム スイムで行こう〜♪

昔、そんな歌詞の歌謡曲があったけど、泳ぐようには事が運ばないのだった。
けど一方で、そうやって時間をはむと、当初にはなかった新規も生じて、書類作りに幅と深みと高みも生じてくるのだった。
寝かせることで、味が増加するみたいな、発酵熟成みたいな、旨味が出てくるのもまた… 否めないのだった。当然にテキスト量も、多くなるけど。


それで、そこをイイことにして、日延べを自ら呑み込んでみるや、ま〜るで大昔に味わった、中間や期末テストの前夜、一夜漬けオベンキョウモードのはずが、やたらとマンガを読みたくなって、しかも読むや、通常よりはるかにマンガの理解と魅惑にひたれるみたいなのと同じ…、奇妙な充実もまた味わうのだった。
実際、こたびもマンガを読んだのだ。
書き仕事を少し進めた後、書棚で埃を被ってた横山光輝御大の本をば取り出して、一巻から順に…、読み出したのだった。



『少年ロケット部隊』は、幼少のボクが津山に生息していた頃、イトコの家で盗み読んだ月刊『日の丸』に連載されてたもんで、子供のボクはこれに相当かなり…、はまってた。
とはいえ、あくまでもイトコの家で、イトコの眼を盗んでの読書。自分で買っちゃ〜いない。
というより、月刊誌を買えるほどのお小遣いをもらってないので、イトコのを盗み読むっきゃ〜なかったんだ。
本誌の真ん中にドッチャリとオマケの冊子とペーパークラフトっぽい型紙なんぞが挟んであって、それがヒモで括られ、とにかく分厚いのを…、自分で買えるのを夢みた頃の淡い昔、だ。



※ 当時の『日の丸』(集英社刊)。のちの「少年ジャンプ」の前身だ。


そういう時代を過ごしたもんだから、はるか後年になって、それが単行本になったさい、
「ワッ!」
てな嬌声あげて、食いついたのだった。
オリジナル原稿が紛失で大手出版社からは出ず、当時の市販本をスキャンしたカタチでまとめられた同人誌みたいな本で、1冊が1600~1800円と高額なのが嬉しくなかったけど…、有り難いことに変わりなし。
全8巻。それを、こたび再読したワケだ。


宇宙人が地球を侵略する。それに対抗するために日本は少年パイロットによる部隊が編成されて活躍するという話。
いまや子供の時のワクワクもドキドキもないけど、懐かしみある親近と、妙な探求心もまた生まれ、しばしホッコリとした次第。
このマンガでは米国の当時の大気圏外飛行に向けての実験機X-15が日本の戦闘機として登場しているのだけど、子供のボクは、黒1色のそれをずいぶんカッコ良く思ったもんだった。



昨年だっけ、『インディペンデンス・デイ』の続編が公開されて、これに出て来たのが、"カッコいい戦闘機"で、前作でやっつけた宇宙人のテクノロジーを人類が吸収し、応用して量産化した宇宙船という設定だ。
大気があろうがなかろうが関係なく飛行出来て、地球から月までが20分ばかりという超速な仕掛けながら、きっちり翼があるのがご愛敬。
そういうテクノロジーを持った人類の前に、また宇宙人たちが攻めよってくる…。
この映画を鑑賞した時、なんだか「少年ロケット部隊」をボクは思い出してた、な。
かたやマンガは50年前、かたや映画は極く最近のものだけど、単純明快というかお気軽な展開は…、一緒。




※『インディペンデンス・デイ リサージェンス』の宇宙戦闘機


『インディペンデンズ・デイ リサージェンス』は、前作同様にニヤッと笑って観る程度の映画だし、20年ぶりの続編ながらウィル・スミス以外の登場人物が一同にかいし、なかなかの同窓会っぷりにいっそうニタニタし、それらベテランの役者と今回の主役の若者(戦闘機のパイロット達)に扮した役者たちとの演技力の差が際立ってた。
特にダメなのがリーダー役の若い人ね。眼ジカラがまったくなくって、とてもパイロット達のリーダーに見えないんで、これはミスキャスト。
そんなアラ探しもまた愉しめるという妙なアンバイな映画なのじゃ〜あったけど、中国人を意識しての映画の造りには、時代の流れを感じないワケでもないのだった。
マット・ディモンが1人火星で苦労する『オデッセイ』もそうだった、ね。
市場原理、というヤツだ。
90年代あたりの映画じゃ、『ブレードランナー』を含め、日本市場を意識したシーンが散見し、中には『アルマゲドン』だったっけ…、松田聖子が嬉々として渡米して撮影に挑んだら、隕石にグチャリ潰されるだけの役だった〜、なんて〜のも含めて、日本が意識されてたもんだけど、少子化で観客動員が衰退な国よりも、政治事情はどうあれ、所得水準があがってより多数が観る国向けの描写にシフトするのは、これはもう仕方ないこと…。
なのでボクらは人口減少による衰退をよく考慮した上で地球上の国家としての立ち位置を踏まえ、憲法改正だのがホントに今すぐ必要なコトなのかどうか、などなど、考えた方がいい。


『インディペンデンズ・デイ リサージェンス』は興業収入はとても良かったらしいが、誉めるには難アリの映画だった。
その源泉は、戦いが済んでの最後の顛末だ。
2度目の襲撃を打破した人類は、2度目の襲来でさらに宇宙人達の技術を"獲得"し、今度は、
「ヤツらを滅ぼそう」
独立自衛から一転、宇宙人の星への侵略宣言しちゃって映画が終わるんだから…、これは始末が悪い。



さてと『少年ロケット部隊』だけど、今読み返すと、子供の頃に関心したり感心したところとは違うところで、おや? と思えたりして、ま〜、そこが面白かった。
主人公の少年パイロットは撃ち落とされ、地表でもって市民のレジスタンスな方々に会い、そこからはX-15での痛快な活躍じゃ〜なくって、仲間を疑うしかない疑心暗鬼なドンヨリした話になる。
人間が宇宙人に浸食され、浸食された人間の血液は緑色…、なのでたえず血液検査を強いるというような、単純ながら濃厚味ある展開がゲリラ戦のさなかに折り込まれて、今のボクにはおもしろかったワケだ。
ま〜、おもしろいたっても…、そこは横山光輝流の軽量配分が優った描写なんでスルスル読めてしまうけど、ビールのおつまみにアンマンジュウを喰ったみたいな妙は味わえ、おもしろかった。



思えば昭和20年で敗戦し、大いに"反省"のさなかの15年目のマンガ(1960〜63に連載)だよこれは。
根底には横山流の平和主義と希求があるんだけども、世界平和に貢献するための武装が描かれてるワケで、ま〜、頼もしいというか、何というか奇妙に矛盾したバランスを思わないではなかった。
昭和30年代は今と違い、憲法9条がぶれたりせず、"活きた"時代だったとふり返られるけど、マンガ世界では、「紫電改の鷹」にしろ「サブマリン707」にしろ、平和主義と武装の引き裂けそうな狭間でもってケッコ〜見事な花が咲いてたな〜と、そこを考察する論者が出てくれないもんかしら…、とも思ったりもした。

ともあれ作業しつつ、読了。
こういうのは息抜き…、なんだろうか? 充塡なんだろうか?
ま〜、そんなコトはどうでもよろしい。
マンガ読みつつも、ともあれ、どうにか書類をまとめて本日に提出しました、めでたしめでたし、という次第なのでした。