台風一過


それほどに降っている感じがしなかった。
むしろ風がさほどでない事に安堵してるような按配だった。
2年前の台風で、界隈のランドマーク的見栄えとして高々に直立して密かにチョイと自慢だった棕櫚の大木を失ったもんだから、だから余計に風を怖れてた。
なワケだから、風も雨もたいしたこっちゃナイぜ〜、とニンマリしてたら、甘かった。



※ 2階から隣家を望む。降り始め。


この界隈はかつて雄町米の産地で祗園用水の末端ラインが方々に流れてる。
生活排水のそれではなく、キチリとした農業用の水路。
グーグルだかで詳細を眺めると、地域は網膜のようにこの水路が幾重と巡っているのが判る。
これが氾濫した。


江戸時代に造られたこの農業用水路はボクが子供の頃は、まだ"自然"のままで、水草が茂り、コイにフナにタナゴにライギョ…、魚の宝庫だったし、台風がやって来ても1度たりと氾濫しなかった。
ライン通しがしっかりリンクされ、スムーズに流れるべく設計されて破綻がなかった。





それが昭和の高度成長期からこの方、宅地化が爆裂し、あちゃこちゃが乱的に開発されて、用水は不要の流れとして貶められ、幅を狭くされ、コンクリで護岸され、部分では土管に置き換えられて埋没させられたりで…、水量の大小などは無視をされるまま今に至る。
結果、水がチャンと流れない。
おまけに生活排水がこれに結ばれてるもんだから、汚水化もする。
さらには、バカ者がこの用水にペットボトルなどなど投げ捨てる。
1本のペットボトルにゴミがからみ、それが用水路の土管に置き換えられた付近で停滞し、そこにさらに川上から流れてきたモノがからみ、いよいよ水はけが悪化する。
短時間で雨がドドッと降ると、もはや、まったく対応できない。
高度成長のこれは酷い弊害だ…。
近年は2年に1回くらい、氾濫している。



今回はそれらを上まわった。
あれよあれよと思う間もなく水かさが増し、道路と川が一体になり、我が宅、敷地にまで押し寄せてきた。
うちの小さなガーデンには小池があるけど、たちまち、そこも一体となった。



家でイチバンに低いのは、玄関と、半地下構造の我が部屋なのだけど、その玄関に水が入ってきた。
ビックリしちゃった。
隙間はさほどないよう思えるけど、サッシドアの下から波立ちながら入って来るんだから、水というのはたいしたもんだ。


幸いかな、玄関内に浸食浸透した頃合いで台風が去りはじめたから、それ以上のビックリは味わえなかったけども、翌朝早々には隣り近所の皆さん顔つきあわせ、
「こんなの初めてでしたな〜」
と、被害報告会。
用水沿いの数軒は床下まで浸水。畳をあげるなど…、大騒ぎだったらしい。
だから、水害としては、地域の個々人が慌てた程度で、TVニュースになるようなものではない。
けども、この程度のビックリでも、教わることはアンガイ大きかった。
お江戸時代に苦労して造り上げた水路の活用と運用の、その叡智の配分と気配りをボクらははたして、どれっくらい理解しているんだろう?
お江戸時代からの、"資産運用"にボクらは失敗してるワケだ。
進歩どころか、退化なワケだ。



※ 水が引いた後の玄関内部。新聞紙で防波堤としたがさほど役だたず。右手前は老人介護用のスロープでホントは赤色なんだけど水を吸って茶黒くなってる…。


ちなみに…、界隈はまだ汲み取りのトイレが多い。
当然ながら、そこに水が入る。一体化し、溢れる…。
ここに載せた写真の水はそんな成分もふくまれる。
長靴は常備しておかなきゃ〜いけない。