グリム童話の誕生

今季は何だか寒さ到来が早い。
怪我でグズグズし、手入れ出来なかった庭のパッション・フルーツ。
南洋の植物ゆえ冬のアウトドアでは、この寒さをこえられない。
見れば、急激に色褪せし出している。
講演の後にしようとも思ったけど、もはや限界だろう。
本朝早くより庭にくりだし、枝葉を落としてやり、土中の根をカットし、小ぶりにして鉢ごと室内へ入れる準備。




けど途中で雨が降り出し、作業はそこまで。
明日にでも室内に入れてやろう。


※ これはパッション・フルーツではなく、パッション・フルーツのツルとツルがからみあって育ったフウセンカズラ
半年ほど前の深夜に某BARで遭遇のドクターから頂戴したもの。それなりに育ったけど、これは冬を越すのかなぁ、外で…。
アフリカが原産とかいうしなぁ。



それから書類をまとめ、午後1番で久々にN女子大へ。
銀杏のイエローが雨にうたれつつ、冬の唄を小さく歌ってるようで良い感じ。
古い校舎の深閑とした清廉も心地良い。
U教授の部屋で膝つめあわせて打ち合わせ。




次いで数時間後、路面電車で移動し、神社で打ち合わせ。
こういう"愉しい"時間はアッという間に過ぎるね…。


我が顔の傷をみやって
「思ったより酷くないよ」
と、学校でも神社でも同じコトバ。
「ま〜、元よりさほどよろしくないフェィスなんで」
と、応えて苦笑。
(大きく笑うと唇が痛い…)



途中、イオン岡山に寄り、スパイスをまとめ買い。
(厳密に区分すれば、これは塩の類種だ)
どういうワケか、置いてる店が少ない。
あれこれ試してみたけれど、これがベスト。
キャベツの千切りに実にマッチする。
かかせない。



夜になりかけた頃のバスからの濡れた光景が、妙にファンタジーっぽかった。


帰宅し、唇に化膿止めのオクスリをば塗布し、小澤俊夫の『グリム童話の誕生』を拾い読む。
読み始めて早や数日。ものすごい情報量に当初は困惑したけど、日本の昔話の収集家にしてグリム研究の第一人者の本。
ヴィルフェルムとヤーコブが昔話をがんばって集めたように、小澤もこの兄弟の残した航跡をがんばって拾い集めてらっしゃる。
だから情報量の質が厚い。
"メルヘン"ではなく"メルヒェン"と記し通して、心意気も熱い。



後年、『ドイツ語辞典』を創りはじめたグリム兄弟は、"F"の項目まで書いて没し、その後、弟子たちに意志が継がれて、第1次、第2次大戦が済んでも終わらず、完了したのが123年後の何と1964年…。
ベルリンの壁が壊されて再統一され、1991年に記念のお札がドイツで発行され、グリム兄弟の肖像が使われてるのを見て、
「そうかメルヒェンの父だもんな〜」
などと思ってたけど、ドイツでは、その『ドイツ語辞典』編纂の経緯と業績を高く評価…、ということらしい。
なにしろ東西に分裂していた長く暗い時期にあっても、唯一、東と西に分断されたドイツ語編纂所(ベルリンとゲッティンゲン)だけは電話オッケ〜手紙オッケ〜という特例であったらしく、いわばグリム兄弟は国家再統一のシンボルだったワケなのだ。
そういうことをこの本で学びつつある。
木の葉の下に埋もれた細い枝を見つけるような作業を何十年もコツコツやってこの本を作った、その根気にもまた。



だいぶんと前、amazon プライムで観た映画に『ヘンゼルとグレーテル』があって、SFファンタジーの特撮モノ。青年になったヘンゼルとグレーテルが魔物どもと闘う話。
戦いのさなか、時折りヘンゼルが自分で注射をうつシーンが出てきて、
「何だろな?」
と、思ってたら、幼少時、お菓子の家に幽閉されている間、お菓子ばっかり食べてたもんだから糖尿病を患って…、それでインスリン注射という設定になってて、これには笑わされた。
ま〜、映画そのものはたいしたこっちゃ〜ないけど。
しかし、その注射針が実に昔っぽく、太くって、実に痛そうで…、なんだかそこにオリジナルのグリムが、むろんグリムの話に注射など登場はしないけども、テーストの真味が潜んでるような気がしないでもなかった。


さ〜てと、一気に打ち合わせを済ませ、数日後に講演。
わたしなりの、情報収集を開陳という次第で、どうなるコトか…。
26日の日曜-午後2時より岡山シティミュージアムにて。
よろしくどうぞ。