大阪での万国博覧会が決定し、喜んでる方も多々あろうけど、
「よしゃ~いいのに」
開催確定の報に、東京オリンピックが確定したさいと同様、とてもガッカリな気分を体内に充満させたのだった。
『いのち輝く未来社会のデザイン』というテーマ・フレーズが、なんとも陳腐で空虚だし、確定と同時に発した大阪府知事の、
「万博とIR(カジノを中心に置いたリゾート)でベイエリアを開発し、東京五輪後の日本経済を牽引する」
という発言も、結局は銭儲けかい……、てな感想が湧くだけで、砂場に落としたアメ玉をしゃぶらされるようで、ジャリジャリ不快、とても空疎。
テーマなんて実は口実。『祭り事』をでっち上げ、たえず何かヤラなきゃ何も進められない貧寒が目立つ。というか、頑張って進めましょう、と張り切り出すエネルギーの方向性が、変。
そも、万国博覧会を発明し、その発祥地として長く頑張ってたフランスですらが、もはや19世紀的万博の時代じゃ~ないと自国開催から撤退したというに、まだ大時代的な幻想にしがみついて、立候補していたロシアとアゼルバイジャンに勝った~と喜んでるのが、どうにもね。
格好悪くってイケナイんだ。
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ひょんなコトからディケンズの肖像画が南アフリカで見つかった、というニュースをCNNで読んで、
「へ~っ、何でまた南アフリカで?」
数秒立ち止まるような不思議をおぼえた。
その掌サイズの小さな絵は1843年に画家マーガレット・ギリースが描き、後年、所在不明となって、マーガレット自身も晩年までズ~ッと探していたらしい。
ディケンズ31歳。ちょうど『クリスマス・キャロル』を書いてた頃の肖像。彼の肖像画は晩年の頃の、険しげな表情の絵が数点あるのみだから、だから貴重極まりない
それが、英国じゃ~なく南アフリカの、とある家の処分のさなか、ヒョッコリ出て来たというのだから、何だか”物語的”だ。
近頃はもうチャールズ・ディケンズを熱心に読むヒトはこの国では少ないとも思うし、自分とて熱心に読んだおぼえがない。
長編ときたらホントに長~く、4~5冊の分冊というアンバイだから、読むのを途中でやめちゃうコトも多。
ディケンズ原作の映画は幾つもあって、その幾つかを DVDで観てるけど、それとてあくまでも”お勉強”程度な関心での視聴。
けども、欧米でそうやって繰り返し映画化されるというコトは、西洋ではディケンズは今も重要な文化ポジションにあるという次第なのだろう。
直接に原作としなくとも、たとえばイーストウッド監督の不思議な味ある映画『ヒアアフター』を観ると、そこの影響力というか浸透力が垣間見える。
この映画ではマット・ディモン演じる主人公の霊能力者が熱心なディケンズ・フアンであることが前面に置かれてたし、ロンドンのディケンズ博物館を嬉々として訪ねるディモンのシーンなどもあって、おやおやっほほ~ッ、と興をひかされ、顧みれば、このSF的アプローチで多層な人々を描いた『ヒアアフター』は、構成、シリアス、ユーモア、帰結へとの展開を含め、意外やもっとも正統なディケンズ的香気に長けた映画といってよいよう、思えもする。
長編『ニコラス・ニクルビー』に登場の双子を意識してか、この映画でも双子の少年が重要な役回りとして配置されていたり、ジグソーのピースのように配分された人物達すべてが心に傷ある、いわば弱者で、かつ”ごく普通な大衆”視点として置かれ……、それを見ると、程良く勘ぐればクリント・イーストウッドがディケンズに捧げるオマージュと解しても、いいような感触チラリ。
彼の映像作品では、ボクはダントツでこの『ヒアアフター』が好きだけど、その根っこにディケンズがあるかも知れないと考えると、またちょっと観たくもなる。
ディケンズ原作の映画としてはミュージカル仕立てな『オリバー・ツイスト』とジョージ・C・スコット主演の『クリスマス・キャロル』が圧倒的に高名だけど、DVD鑑賞という枠でいえば、かつてBBCが作ったTV版の『デビット・コパーフィールド』がダントツにお薦めだ。
画面は4:3サイズの TVサイズだけど、ま~、これは作られた年代ゆえ仕方ない(1999年作品)。
この作品、あんがい知られていない。
なんちゅ~ても、かのハリー・ポッターのダニエル・ラドクリフ君がハリー・ポッターとなる以前に主演してるんで若さがさらにウナギ登りでツルリンコ、かわゆいったらアリャしない。
それに加え、ハリー・ポッター・シリーズでハリーの良き理解者だったミネルバ先生役のマギー・スミスが『デビット・コパーフィールド』では彼の叔母役なんだから、これは数年後に撮られるコトになる『ハリー・ポッター』シリーズの幕開けみたいなもんだ……。
で、ディケンズそのものを読むなら、ボクならその複数冊に分かれた大長編よりも、短編をおしたい。
かなり怖いホラーあり、しばし笑える滑稽あり、と1冊でたっぷり堪能できるディケンズ・ワールド。
こたび発見された肖像画のクリリンとしたディケンズの眼の光輝を思えば、
「そっか~。この顔でアレやソレを書いたんかぁ~」
妙に感心するコトしばし。
たまさか今月末頃には”新作”として『クリスマス・キャロル』の誕生秘話を描いた映画『Merry Christmas! ロンドンに奇跡を起こした男』が上映されるらしい。
(原題は『The Man Who Invented Christmas』)
邦題の安っぽさは最悪で、日本の配給会社というのは観客の感性を信じていないというか、親切が過ぎて大迷惑というかだけど、けどけど、やはりあちゃらでは、ディケンズは大きな存在なのだニャ、という次第。
ユーライア・ヒープとかミコーバーとか、登場人物の個人名も秀逸で、70年代にゃ、その名のロックバンドもあったね〜。