幸せ在庫

某日。奉還町某所。
某教育関連プロジェクト・チームの年度末会合と打ち上げ。
会議後、馴染んだ顔ぶれでの乾杯。
「最近セイジ乱れちょるね〜」
笑みつつ苦々しいのをガジガジ噛む。



※ 乾杯前にもう干しちゃってる方もありますが。


その会合前に駅前ビッグカメラでDVD1マイを購入。
近頃どうも、「在庫」としての映画がないと落ち着かない。
それで10本前後の、いわば未封切りなDVDを常駐させているワケながら、1本観ると当然に未封切りが1本減るから…、補充しておくという…、何だか手間なことになっちゃってる。
DVDはすでにあるけどBlu-ray版も買い増すという場合もあるんで、それの観賞は後に廻されるであろうから、え〜っと、ここはもう1マイ買っとくか…、というアンバイもあって、かなりバカっぽい。
Amazon プライムで無料で映画も観るけど、奇妙に落ち着かない。
映画が配信されるという今時のカタチに心が馴染まないというか、集中して観賞できない。
それは旧世代に属した感性なんだろうけど、映像という実体のないカタチがゆえ、せめてフィルムを想起するもの、すなわちVTR TAPEだのDVDだのの"固形物"がないと、雲をはむようでイカンのですわ。



つい先日に発表の国連2018年版世界幸福度ランキング
公開された書類はPDFで172ページというボリューム。レポートの23ページめにランク一覧がある。書類はココ


1位  フィンランド
2位  ノルウェー
3位  デンマーク
4位  アイスランド
5位  スイス
6位  オランダ
7位  カナダ 
8位  ニュージランド
9位  スウェーデン
10位  オーストラリア


ドイツ15位。
英国19位。
フランス23位。
台湾26位。
などなど…。


今回の踏査では移民の幸福度も対象で、列挙した10位あたりまではいずれも好成績。フィンランドはそこでもトップでアイスランドデンマークなども地元生まれのヒトと移民のヒトの幸せ感覚はほぼ一致する。
米国はトランプ政権になって順位をカクンと下げて18位。



我が国はどうかしら?
かなり下に位置してる。
54位。
59位のロシアに近く、移民に関してはランク圏外。
中国を含めさらに下はあるけど…、先進国を気取りたいなら、54位の幸せでしかないコトをかなり真剣に考察しなきゃ〜いけない。



たまさか椎名誠の『アイスランド 絶景と幸福の国へ』を読んで気づいたけど、幸福は物資量では計れません。
ま〜、だから、DVDの在庫が10本ばかりナイと落ち着かんというのは、たぶん物資に振り回されているニンゲンの証しでもあるんだろう。例えそれが趣味的情景でろうと、根っこには物質依存の病巣っぽいのがあるんだろう。
いかん。
けど…、如何ともしがたい。…などと語呂合わせってる場合でないけど、アイスランドは日本同様の火山大国。
といっても、火山の性質が違う。かたや岩盤硬きな大陸の端っこのいわば地底のガス抜き場としての比較的安定した噴火地帯、かたや地震頻繁で超絶に不安定の火山帯…。
平たく火山地帯だからペケというワケでもなさそうで、どう暮らしと向き合っているかがきっと大事なポイントなんだろう。
国連ランキングで眺めるに、2013年度の調査では日本は43位で、アイスランドは9位だった。
かたやランクが落ち、かたやアップなのである。



TABIZINEのHPより転載。レイキャビック市街。模型ディオラマではなく実写。


椎名誠はこう記述する。

我々の国に住んでいる人は、おそらくいまの自分が幸せなのか不幸なのか本気で考えていないような気がする。考える尺度がわからないからだろう。
強いていえば「どっちだっていい、と思っている」ような気がする。だからその無知に乗じて政治家は好きなようなことができる。

アイスランドに出向き2ヶ月を過ごしてアイスランドを書こうとした椎名誠は…、同書のかなりのページで日本に触れる。
2ヶ月の日々で見えたのは哀しいまでの日本との差、だったんだろう。
そこはま〜、同書を買って読んでいただくのがベストと思える。


同国の警官は銃を持っていないそうだ。NATO加盟国ながら軍隊もない。
ソビエトに近いというワケで米国が大掛かりな基地を設けてたけど2005年に出てってもらった。当然に米国は戦略的云々で反撥したらしきだけど、そこを意志が貫いた。
さらには他国の流儀押しつけに左右されず、商業捕鯨をおこなって毅然としている。
原子力発電所もない。豊富な火山を逆手にとっての地熱発電(だから温泉も多数)で電力をまかなう。



Discovery-icelandのHPより転載。露天温泉ブルーラグーンと水蒸気モクモクな隣接のスヴァルスエインギ地熱発電所。


税は高いが医療費無料。町にケッタイな広告看板はなく、家電回収業者の軽トラックのボリュームでっかいアナウンスもない。
この本を読むと…、24時間あいてる店なんか1軒もなく、珍しいモノを食べられるワケでもないけど、ささやかな生活の中で2本の足でスックと立って自身で躍れるアイスランドの人達がみえる。



TABIZINEのHPより転載。レイキャビック市街。


そこでボクも…、DVD在庫10本前後アリやナシやの物質的度合いとは別に、自分で躍れるか、それともアレコレに刺激されて躍らされるか…、まずはそこを踏まえなきゃ〜、などと自問する。
国民愚弄の茶番な政治がまかり通るのは何故? やはりホントに愚衆ゆえにかとも。当然自分もそこにいる…、などとも。


前記したランクの11位は、意外やイガイや、イスラエル
前回調査(2016)でも、その順位。
紛争の先端国といっていい。非難の矢面に立たされることも多。
それが何故に幸福度11位なのか?



※ kurashi-no.jpより転載。テルアビブ市内。


同国では日曜〜木曜がワーキングデーで、金曜土曜はシャパネット(安息日)。
平日の仕事は概ね4時までで、その後は家族と過ごすのを常とする。
安息の2日間は鉄道もバスも動かない。(1部タクシーは別)
当然この2日間は家族の時間となる。
ユダヤ教徒が国民の75%を占め、安息日は車は運転しない。電気製品のスイッチを入れるというコトなども休止する…。
生活慣習とその優先順位がここではまったく違い、家族がイチバンのライフスタイルが定着している。
アイスランドとうって変わり、ここでは軍兵士が街中いたる所にいたり、ガザ地区への爆撃などなど…、批判的感触もなくはないにしろ外からのそのイメージと違い、住まっての日々として、そこイスラエルのヒトは充足してらっしゃる。当然にそれが数字として出てきて幸福度を押し上げている。
※ イスラエルの兵役は男子3年。女子1年半。パレスチナ解放地区への扱いに反対して兵役拒否をするヒトも一定の割合であるようで、その場合は禁固10日くらいの処罰といい、2年めも拒否すると禁固日も倍増らしい。



※ kurashi-no.jpより転載。エルサレム市内。女子兵士は髪を切れ…、なんて〜拘束はないからご覧の通り。


仕事疲れで自殺…、というようなハナシはアイスランドのヒトもイスラエルのヒトにも、
「何それっ?」
でしかないようなのだ。椎名誠もそのことを書いている。
ましてや、

働けど働けど我が暮らしラクにならず…

と、我が国じゃ〜かなり前から自嘲するけど、ランキング上位の国々の方々には、やはり、
「何で?」
逆に訝しまれるようなアンバイで、
「自嘲する前に、楽にならない暮らしのその根本理由を考えないの? 是正しないの?」
そんな視線が、このランキングの順位には透けてるような気がしてしかたない。
2月に恵方巻食べちゃえば幸せが来る…、わけはない。



※ 丸2日の雨天のさなか、今年のユスラウメが開花。
陽が照れば、1週間としないうちに満開となるだろな。この開花を毎年愉しみにしている…、これはごく個人的小さな幸せ。