幸災明暗錯綜之国


メチャな災害となった数日前の大雨…。家を失ったり水浸しでまだ茫然とされている方も多かろうし、亡くなった方の口惜しさは計りようもない。
台風のそれなら、中心の接近と離脱が概ねで承知されるからまだしも、こたびのはかなりの難儀もんだった。


東京在で来年に銀座のどっかで個展をやるMOMOちゃんより、「大雨ダイジョウブかぁ?」との問いあって、「だいじょ〜ぶ〜」っぽい返信を送ったりしていたのは前半の頃…。
昼夜4日降り止まない雨というのは、ボクもおぼえがない。気づけば道路が冠水。ジワジワ水位があがるじゃないか。



※ 我が宅門柱の向こうは一気に水路と化す


昨年の豪雨で若干の対処法を学んだから、宅の敷地内でイチバン脆弱な、すなわち道路とつながった門の部分に、横長プランターを複数置いて水の侵入をある程度防ぐというようなコトをやった。
けども、4WD系の座高の高いクルマが強硬に冠水道を通るたび、波がおき、土をいれたプランターはいともたやすく1メートルほど流されちまうのだ。
波のチカラというのは凄い…。
それでさらにブロックやら石をプランター背後におき、プランターの上に水を入れたバケツをおくなどして、固定に務めた…、のはいいけど、さてそのようにすると今度は外に出られない。
ま〜、もとより道路も側溝も水没しているんだから外に出る必然はないし危ないし、結果その後まる一昼夜ほどは籠城状態、軟禁状態となって雨が止むのを待ちぼうけなのだった。



※ 道路向かいの民家は車の水没を危惧し、強硬に玄関横に車を移動…。


4日めとなった土曜の昼前、小雨になって水が引きはじめ、車高の低い我がミニでも何とか駆けられるという頃合いで近所のスーパーへ出向けば、あじゃ〜〜、どえらい客数。車を止めるに待ちぼうけ、店内も人でいっぱい、レジは長蛇の列。正月前の光景より繁華。
皆さん、身動きがつかなかったゆえ、この時とばかりに押し寄せたんだろうが、食パンなど含めて棚の多くがカラッポだ。
被害の大きい真備や総社に食品企業が集中し、製品供給が止まってるわけだ。
表町界隈で音楽イベントのプロデュースをやってるF氏も同じ地域の住人で、彼も買い物列にくわわってた。いわく、
「もう2時間ほど強雨が続いたら、ウチは床上までやられてた」
苦笑する。
苦笑ですまない災にあった方々は本当に気の毒でしかたない。着の身着のままに避難し、家も、そこにある思い出ある品々も失ってる人に、どう声かけたらいい?



※ スーパーの空っぽの棚


今回は10数年に1度の大災害とか報道されているけど…、はたしてそうか?
災害のニュースは毎年繰り返し見聞する。ほぼ毎日どこかで地震もあるし、毎年の台風もある…。だから10年に1回ってなアンバイじゃなく、
「またもや」
と報じた方がいいような、災害が常駐し日常化してるのがホントだろう。
実態としては不安定極まりない国土ゆえ、といった方がいい。そういう地理的条件と気象的条件の上にボクらは住んでることを自覚するためにも。


逆にいえば、その不安定がゆえ世界屈指のメリハリある四季があるわけだ。
自然そのものが安定しようと務めるがゆえの、四季だ。
で、そこにボクらは情緒を見いだして久しい。
四季を愛して久しいし、ありがたがる気分も高い。
だけど、自然そのものは情緒は持ち合わせない。
風が吹くのは大気が自身のバランスを保つためのもの。それゆえ、自然自体の安定がために時に強風になり時に大雨になる。都合良い微風ばかりじゃない。
その頻度が実に高いのが、この国だ。しっぺ返しみたいに情緒を粉砕されて痛いメに遭う。失くすものが大きい。一喜あっても一憂もまたでかい。



※ ネット版朝日新聞スクリーンショット


でも結局、ここにしがみついてなくちゃ〜いけない。
ひどく熱しやすく醒めやすい心情のうつろいは、この風土が根っこにあるのかもしれない。
前にも書いたけど、自然の中に神々を見いだす神道という他国にはちょっと了解出来ない精神世界も、この風土あってのものだろう。
それで…、

倭(やまと)は国のまほろば たたなづく 青垣山ごもれる 倭しうるはし

まほろ」、のような住みよさを表す古語もあれば、

ねぬる夜の夢をはかなめ まどろめば いや はかなにも なりまさるかな

「はかな」、のように無情を謳いあげる心情語も発明されて同居する。
諸々考えさせられる我らが国土と人。揺れる大地に住まって、文字通りに浮いた感もアリアリ。
浮世処世術、なんて江戸時代に出て来たベタベタなコトバも、ある意味、適語とも思う今日この頃だけど、災害に呑まれた方々の折れた心を思うと、コトバはさほど役立たない。
言霊(ことだま)という脅迫観念に裏付けられた平安や鎌倉時代の方がコトバは有益でパワーがあったと思えるけど、
「気の毒でした」
の一語に、今は科学の知見がボクらを赤裸にしちゃって魂を吹き込むことが出来ないから、いささか、もどかしや…。