年始のお寺

 君来訪。

 お正月を実家のある福井で過ごし ての土産をば届けてくれる。こういう不意打ちはメチャ嬉しい。

 岡山と福井は縁あるようで意外と希薄。こういう機会に福井を知るのはイイことだ。

 ついぞ今まで知らなかったけど、「とろろ昆布」と「おぼろ昆布」の違いなども知らされて、

「あらま~」

 知恵をつけられお利口さんになったような気も。

 

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 年が明けて今日で、10日……。

 神社の賑わいはまだ継続して、駐車場も車で埋まっている。

 護国神社では拝殿の脇にて、ふるまい酒が施されてたりもしたけど、さて、お寺さんはどうかしら?

 

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 概ねで正月近辺のお寺は閑散。中には三箇日が過ぎるや、ニット帽をかぶり、趣味のゴルフに出向いちゃうようなオチャラケな住職もいるけど、一方では、凛としたお寺さんなんぞもある。

 数日前に曹源寺に行ってみたけど、このお寺さんなんぞは凛たるの代表。

 駐車場はほぼ空っぽでこの時期訪れる人はいないようじゃあるけれど、見事に掃き清められた境内が清々しい。

 枯葉1つ見いだせない圧倒的な清掃。実に清々しい。

 

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 高名な禅寺でもあるから、ひょっとしてと思ってたら、あんのじょう、ひょっとしてだった。

 およそ10名ほどの僧が揃って座しし、禅行のさなかだった。

 この日はいささか冷気が濃くって、シミシミと冷えるようなアンバイだったけど、窓は全部が開かれて外気と変わらない道場にて、身じろぐことなく座しての沈思黙考が行われているのだった。

 だから静まりかえってる。

 

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 広すぎるほどの境内を箒ではいたのも、この僧たちであろうことは間違いなく、それも夜明け前からの清掃であったはず。

 一般来訪者は朝9時から夕刻7時までと門限があって、それ以外の時間は門をくぐれないけど、僧侶たちはその眼にはとまらない時間も研鑽をつんでらっしゃるのは自明。

 (ほとんどが海外から来てる修行僧のようだけど、詳細は知らない)

 浮世の流れにのっかるワケでなく、付和雷同の気配もみせず、冷気の中での禅座の姿を見ると、ハッとしてグッな佇まいの良さにいささか頭が下がるというか、ただもううたれるようなアンバイなのだった。

 ボクにそのような精進は、ない。ないから余計に新鮮をおぼえるし、そも、禅行が自身のためなのか他者のためなのかも……、よくは解っちゃいない。マラソンランナーやボクサーの孤独な日々の精進と、禅僧の精進はどう違うのか……、解っちゃいない。

 

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                 鐘楼のそばで蝋梅が花をつけていた。

 

 久しく愛用した椅子が壊れちまった。

 ギシギシ音をたて支柱が折れかけている。

 しかたない。新調でグレードアップ。

 佇まいがチョット変化でこれはコレで新鮮ながら、まだ馴染んでいないから座ってるというより座らさせられてるみたいな感もチロリ。

 椅子がコチラに馴染むのか、コチラが椅子に馴染むのか? たぶん双方の歩み寄り。

 

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 中区円山の曹源寺を訪ねた晩に、新たな椅子に座って『禅 ZEN』を観る。

 高橋伴明監督の2009年作品。

 巻頭部は今1つながら、中国に渡れば言葉はちゃんと中国語だし、総じて前半は小気味よい。

 町のカタチ、人の往来、貧寒の度合い、僧兵もどきの跋扈など、鎌倉時代初期の世情が映され、あんがい良かった。

 けど後半でダウン。よろしくない。CG活用での悟りの境地への運びが噴飯もの。

 監督高橋がイメージした禅というのはこの程度かい……、大いにガッカリさせられた。

 

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 けどもま~、道元に扮した中村勘九郎と売春でかろうじて生活をつないで一児を育てるおりんに扮した内田有紀が、全般を通じて好演だったのが救い。

 丸坊主中村勘九郎には凛々とした気配があって、自身を律することで欲から遠ざかるその哲学の求道者にふさわしい演技と思えたし、それゆえの道元のエゴイズムのようなものすら垣間見せてくれたような所もある。ま~、それだからこそ監督の力量不足にガッカリしたワケだけど。

 

 いまだ「これだ!」と云える仏教映画、僧侶の伝記的な映画ってないねぇ。数も少ないけど……、惜しいなぁ。実に面白い題材と思うんだけどね。

 

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             曹源寺本堂にて。コインを置きたがりますね〜。