ミカン

 ミカンの中に種が出て来るようになると、いつもきまって、チョイ淋しいようなシーズンのうつろいを意識させられる。

 それが冬の終わりとイコールではないのが、心地よくない。

 あいかわらす寒いのだから、もすこし冬味覚として食べていたいから。

 

f:id:yoshibey0219:20190124215607j:plain

 

 歩いて3分半ほどの所にジョイフルがあって、年に2~3回利用する。

 チャチャっと食べるに都合がいい。

 この店では、数年前に某スポーツ系大学の大きな寮が出来てから、やったら学生が多くなった。

 たまさか昨日の昼下がりがそうで、前の席、後ろの席、横の席、その向こうの席、いずこも若い子たちなのだった。

 単位取得のレポート提出だか何だか知らないけど、ノートやら資料を広げてる。

 女の子が多い。真面目そうで、ややおとなしい。

 チラリ盗み見るに、本にはピッチャー投球時の分解写真やらが載っていて、フォーム理論? 何だかよく判らないのだけど、Wi-Fiがあるし、窓際の席では電源も取れるし、たいそう便利だろう。

 たいがい、1番安い299円のポテトとか枝豆を発注し、それにドリンクバーをセットにしての安上がり。

 で、途中でドリアとかオーダーしてる子もいる。それが昼食か?

 この子らはきっと2~3時間くらいは、冷めるとまずいポテトフライかじりつつ、寒さを味わうことなくヌクヌクお勉強を続けるんだろう。

 いずれも1回生か? なかなかかわいらしいけど、でもどこか子供っぽい。私服の中学生程度にしか見えない。

 そういうのに囲まれてモグモグ食べると、若さを頂戴できる……、ワケはない。

 ミカンの皮と実のように薄い被膜で隔絶され、ただ同じ店内にいるだけのこと。若い人たちが住むようになると地域の活性化につながる、なんて~コトもいわれるけど、そんなの卓上の夢想。単純でない。

 

f:id:yoshibey0219:20190124215523j:plain


 はるか昔、義務教育を受けてる子供だった頃、弟がミカン1箱を1晩で喰ってしまい、両親激昂という修羅になったことがあるけど、実際は弟と共に兄のワタクシめも加担して大いに喰らい、叱られるさいは、

「ボク、知らない」

 そしらぬ顔。罪を弟に全部きせたのだからタチが悪いというか、そういう子の方が子らしいと……、云えばいえなくもない。

 この正月に弟にその話をしたら、彼は彼でしっかり、自分が全量食べたと思い込んでいて、

「えらく叱られたなぁ」

 大きく笑ってる。

 遠方では光が曲がるらしいが、事実もまた虚実を通せば曲がる。ま~、そんなもんだね。事実というのは脆弱なもんだ。