「水戸黄門(60)」やら「火天の城」やら

 昨日15日の講演は無事終了。

 予想していたけど、やはりパート2というタイトルをつけると、映画でもそうだけど……、観客動員数が減りますなぁ(苦笑)。

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 第2部トーク中の大塚氏をステージ側よりパチリ。

 かつて道路も鉄路も整備されてない明治以前の時代、岡山県北の勝山からは同じ県北の津山方面に木材を運送できず、筏に組んで旭川をくだり、瀬戸内海に出て、今度は吉井川を登ってやっと津山に運び入れ、それで津山城を造ったという、実に信じ難いような実話など……、メチャに面白かったですニャ。

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              打ち上げで喰って呑んで……

 映画のパート2と書いたんで、備忘としてついでに書いとくが……、講演の前夜を含め数日どっぷり、日本映画をば続けて観てた。

 かねてより好感持ってた1960年の『水戸黄門』がamazon primeでまた観られるようになってるもんだから、この機会を逃しちゃいけね~、前半部で木材商の仕事場が出てくるのを再見したかった。

 なぜかこの映画はDVDで市販されてない。だからと……、見ちゃったら、ちょっとブリがついた。講演前ではあるし、講演題目の木材がらみでの目線を意識的に働かせての観賞じゃ~あったけど、感ずるところ大なりだった。

 ちょいと感想をば羅列しておこう。

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         上4枚、『水戸黄門』の巨大セットと多数の役者での能。ただもう圧巻。
 

水戸黄門1960

 とにかく圧倒される名品。時代劇を1本選べといわれたら、黒澤の『七人の侍』かこれのどちらか。黒澤のリアリズムではない別次元なリアリズムに充ち満ちてアッケにとられる。

 役者がいい。セットがすごい。セリフはすべて古風な言い回しでヒアリングするに難しい。この3要素がからんで別次元リアルが生じてる。

 なによりこの黄門さんは印籠出したりしない。最後まで身元を証さないのがヨロシイ。

 若い中村錦之助扮する火消しの四郎吉が月形竜之介の黄門さんを、

「てめ~この爺いッ」

 殴りつけるところなんぞも明るく笑えて素晴らしいし、熊本方面(?)のローカル言語の大友柳太郎がまたすごい。悠々、豪快、爽快、天晴、絢爛……、そういう単語が常に点滅明滅して飽きるところがないんだから、すごすぎ。

 画面上では数分のシーンなのに、巻頭での町が燃えるシーン、木材商の職場のセット、江戸城内での能舞台のセット、などなど圧巻に次ぐ圧巻。「マジかよ?」と感嘆のため息がこぼれ続ける。

 ブルーレイなりDVDなりで、なぜに販売しないんだろ東映は?

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         カメラはパンしてさらに多数の木材と職人が映る

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    水路の筏、橋向こうの干されている木材……、素晴らしい描写の連打に見惚れる

 

火天の城』 2009

 安土城築城のハナシというので既に原作はだいぶんと前に読んでたけど、映画はさて? とこれまたamazon prime

 西田敏行の主人公や良し。椎名桔平の信長も悪くない。今やれいわ新撰組でしっかり時のヒトである山本太郎の鍛えあげられた上半身も素晴らしい。CGでの安土の山が次第に城郭になっていく様相も良い。エキストラもけっこう使い、重厚さもある。

 けど反対に、ダメ部分もいっぱい。

 戦国さなかの時代というに、信長配下の武士どもが江戸時代後半のサラリーマン化した役所仕事の連中にしか思えない描写にはガックリ。信長という希有な個性の配下の者どもがサラリーマンであろうハズがない。

 秀吉役の河本準一はまったく意味ないミスキャスト。

 主人公の娘(原作では男子だ)の描写にはゲッソリ。福田沙紀扮するこの娘だけが宙に浮き、登場シーンごとに映画が壊れてく。福田沙紀が悪いんじゃなく、この娘のキャラクター造りがひどすぎ。方言活用なし。今どきの髪形でオマケに付け睫毛。「男子に産まれりゃよかった」と嘆かせつつも着物は映画内イチバンにかわゆく女っぽく着させ、さらに糊がきいたみたいに綺麗過ぎ。これはたぶん、映画出資にイオン化粧品が入ってる関係上とは思われるけど、綺麗キレイが逆効果の噴飯腐臭もの……。

 この娘が好いていた死んだはずの若者がクライマックスに突如現れる脚本のエエ加減さには、怒りを越えてただ失笑。

 原作は原作、映画は映画。あくまで別なものだし、原作から何を引っ張り、何を

捨てるかで映画の厚み加減が知れるけれど、この映画脚本はひどく浅くすごく醜い。

 下のスチールみたいに良いシーンも散見するけれど、別脚本家+別監督で是非に再映画化してもらいたいねッ、題材が面白いんだから。

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関ヶ原』 2017

 原田眞人作品。映画館で観たさいにはストーリーを追っかけるのに懸命で、味わうというには遠かった。DVD購入後も観ずに過ごしてたけど、今回チラリ前半のみ。

 原田は観客に媚を売らない。特にセリフは極力に天然に聴かせようとする。一言一句すべては聞き取れない。だから良い。実際の我々の生活だって、しゃべってる相手の言葉すべてを聞き取っちゃ~いないんだ。ましてや東軍西軍いりまじり全国からヒトが集結なんだから国言葉、方言がとっ散らかって当然。

 木材にからむ題材じゃ~ないけど、関ヶ原の戦の混乱、その判りにくさを映像に定着させた稀な作品とボクは解釈する。要は観終えて、「判りにくい」と思えたらいいのだ。

 チラッと登場の、キムラ緑子扮するネネ(北政所)の早口方言が秀逸。そのわめくような高速な流れに、原田流のネネ像を見、愉しんじゃえばいい。座してジャジャジャっとしゃべくるだけに見せる彼女がある意味で関ヶ原の勝者……。

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梟の城』 1999

 今年の4月だかに福山に出向いたさい、「みろくの里」で久しぶりにこの映画のミニチュア・セットの城を再見。けっこう壊れてたんで哀愁をおぼえたけど……、こたび映画もついでダ~とDVDで再見。

 ケッタイな効果音を大袈裟に用いる篠田監督の老いっぷりが痛々しいが、忍者が大阪城の屋根で対峙するシーンのCGは、いいなぁ。CGのくせに屋根瓦の1枚1枚に躍動感がある。

 しかし、フフフ。やはり、何を演じても中井貴一。役になりきっていようが、いまいが、どこまで追っても中井貴一でしかないこの特異な役者が、あんがいボクは好きな方。中井貴一こちらでも言及

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 『壬生義士伝』2003 

 amazon prime で観る。新撰組のハナシ。主役は中井貴一だからフフフ。あんのじょう、中井貴一中井貴一。この中井扮する主人公を嫌いつつもその人格にうたれる佐藤浩市がすこぶる良い。木材とはまったく関係ない映画だし、個人的には新撰組って好みじゃないけども、京の都で暗躍した組の1部のヒトは明治になっても生きていて、その過去を引きずりながら晩年を過ごしている様相が佐藤浩市を通じて描かれ、けっこ~感慨深い。お江戸の時代から明治への大転換の悲哀が佐藤浩市の眼と肩のあたりで舞っていて、そこを感ずるとちょっと批判できない良性の何かが観終えても残る。

 ぁあ、でも主人公(中井)の死に至るシーンはひっぱり過ぎでダレダレ。

 あぁ、けど夏川結衣が2役演じてもいて、そこは文句なし。このヒトのふっくら笑顔には批判の余地なし。

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写真が反転してるワケじゃない。佐藤演じるのは左ききという設定ゆえに刀の位置が反対なだけ。

 

 って~~な次第で、講演の直前まで時代劇特集で眼を養っていたのでありんしたァ。