ひさびさ倉敷。
ギャラリー「十露」で友人の作品を観る。
かつてはアニメーションのキャラクターを彼独自の視線と卓越技巧でもって「フィギュア模型」としてではなく「フィギュア・アート」にまで昇華させ、モデル・グラフィックス誌上とかでも特集が組まれるほど話題になったけど、いかんせん版権の壁がある。アニメーションの会社とてキャラクターの独自解釈なりは未知領域。結果、あいまいに敬遠される。
そんな悩ましきを経て、今はパブやキャットをモチーフにした造型焼き物作家。
PUGLAND。こちらに情報あり。
サイズは小さきものだけど、まったく見事。
いま本人宅には犬もネコもいないけど、確実に彼ら彼女らのチャーミーなところをとらえてる。
コンピュターとマシンによる3Dモデルでは吹き込めない指先の入魂が際立つ。ただ可愛いというようなつまらないのは造らない。モチーフとなった犬もネコも個々が屹立し、何だか長く生きた末の知恵みたいなのを眼にやどしてる。
だから1つ1つをイヌだのネコとの種族では云えないような感が湧いて、万が一、ひとつを手にいれたら、あえてそれに名前をつけてやらねば……、と妙な気がおきる。
関節が可動しポーズを決められる仕様 photo by PUGLAND 2020
磁器にウッド、若干の縫製、素材幅も拡がり、鮮烈で繊細。しかも進化を続けて、こたびの展示では蝶をモチーフにした驚きな作品も有り。
蝶というカタチのはかなさと、それゆえの脆い優美までが刻まれて、実に、す・ば・ら・し・い。
羽はちゃんと2枚に分離してる photo by PUGLAND 2020
むろん、こうなると日常に使う小物というジャンルではなく、眼を悦ばせる、よりアート嗜好な小物ということになるけど、そこもまた良し。
上と下の写真。台座は磁器で蝶はヒノキだか……。そのウッド部分にアロマ液を沁ませて香りをも愉しもうというカタチ。ちなみに蝶の高さはわずか5センチほど。けど小さな中にディティールが詰まってる。木製台座部の螺髪状の造型に密かに唖然とさせられた。根気と集中と丹念さがなきゃ~、これは造れない。
我が宅にあるPUGLANDの小品。実に小さいが存在感がでかい。ただ愛らしい小物でなく、対象となる生き物のはかなさへのいとおしさにくるまれた造りと塗装と焼き具合の妙味が素晴らしい。
このコにはカネオモリコと名付けてる。 金御守子……、ベタな名だけどぅ。
美観地区は、県内屈指の観光地ゆえウィルス騒動の影響が露骨。
ガラ〜ンと空しい音がするほど。
若干の欧米人らしきは見るものの、久々の”鎖国”状態ゆえ、通り過ぎる人のコトバに異国語がない。
密度高きな繁華より、この少なめが好ましいよう思いもするけど、福山からやって来た知友とも合流し、オトコ3人で昼食。
いつもなら外にヒトが並んでいる店もガラ~ン、アッという間に着座出来、逆に拍子抜け。
食べつつ、しばし造型に関する談義。
みやけ亭で
シングルモルトな連中ゆえ、共通点も多いけど、噛み合ってるんだか噛み合ってないのだかよく判らんカークにマッコイにスポックの『スタートレック』みたいな、友愛に基づく不一致もまた愉しい。
むしろ個々のキャラクター発揮こそ面白く、た・の・も・し・い。
市川崑の晩年作に言及しての、感性と老いの談義も可笑しく哀しく、当然にそれは自分らの未来の姿でもあるとの認識でヒリヒリしつつ、話しては笑う。
そう、まだ老いた感性のことを笑えるのだ……。
倉敷川沿いの珈琲館に場所換え。ここも客数少なし。濃いめなモカ飲みつつ、鼎談継続。
Pugland君から『エミリーローズ』なる映画を推薦される。
このシトが推薦するのだから、まず間違いない。奇妙に歪んだ異界と正常と思われている世界、いわば遠近両用メガネの境あたりの不思議像が見える作品に違いない……、DVD買ってみようかな。
ま~、しかし当然にウィルスの話が出てきますわな~。
「どぅしたらエエもんかねぇ」
と、帰り道に福山在住が云い、そっから先はコトバが続かない。思考停止に陥るのは自明。ほとんど実態が判らず実感も伴わないのだからシャ~ない。
県内でウィルスが出ていないせいもあってか、だから倉敷行きの普通列車内では、マスク着用者は半分くらいで、あんがいノンビリした光景をマノアタリにし、「あらまっ」と感嘆もする。メッタと電車に乗らないので、逆にこの弛緩したような光景が眼に焼きつく。
米国の研究チームが、
「このニュータイプなウィルスはヒトの体内に入らず大気中にある場合は3時間ほどは生存出来、プラスチックの表面などに付着の場合は3日はいきる」
というコトを発表してたけど、さぁ~、それが判ったからといって、どぅしていいか判らない。
浮遊するなり、そこいらのタンスの隅にうずくまってるかもしれないのがホタルみたいに光るなり、点滅してくれてりゃ、こっちとて吸い込まないよう、身体に付着させないよう、かなり明確に努力できるけど、そうでないから困ったもんだ。
でも、3時間くらい宿主なしで生きる、というのがホントなら、これは「知る」という意味では大きなニュースだろね。
かつて昔々のアフリカじゃ、ヒトを襲撃する超おそろしい大きな魔物がいることに戦々恐々でビビッてたけど、それに「ライオン」という名を与えた途端に、やはりビビるべきものじゃあるけど、ただのでっかい獣という風に認識が更新されたように。
えびす商店街の一画に出来てたトイレ。なかなか気がきいたカタチとハイチで、こういうのは岡山市にない。というか、商店街ってあんがいとパブリックなトイレはないもんね。
あえて眼をひくよう設置されてるのがチョイ好感。ひっそり置くよりドド~ンと見せてしまう逆転発想や良し。個室は4つあって明るくクリーン、広さも結構あり。
ただし車椅子の方などにはステップをあがる構造ゆえ不向き。もちろん、そこは倉敷市とて考えてのことだろう。障害ある方も笑むようなのを、この先さらに別途で造るはずと思いたい。