「鉄道のまち おかやま」展

 小パーツを2点作りあげ、シティミュージアムへ。

 明治の路面電車の集電ポールと昭和の路面電車パンタグラフ

 工作そのものはさほど面白くもないけど、明治のカタチと昭和のカタチを再び掌握するのは、お・も・し・ろ・い。

 ”進歩”としか云いようのないカタチの変遷が興味深い。

 

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                    新旧のパーツ

 

 とくにパンタグラフは、軽量で伸縮性が高い構造をした岡山電気軌道にしかない独自なもので、当時の社長の名をとって「石津式パンタグラフ」とも云われ、今なお一部の車輌で使われる。チャギントンは使ってないけど)

 パンタグラフはその構造上、バネを用いて電線との接点を維持するけど、このパンタグラフはバネでなく重しが下部にあり、その重みで接点を維持させる。なのでひし形の構造体そのものが軽量でなくてはならない。

 

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 だから実際はとても細い線で構成されてる。そこをペーパー・モデルではあえてヤヤ太い線で作った。「石津式」を見せるというより、パンタグラフの普遍的カタチを誇張ぎみに見せるということを前面にディフォルメだ。

 展示室のケースから2つの模型をだしてもらい、バックヤードの一室で談笑しつつ、工作続行。

 既存パーツをヤヤ慎重に取り外し、新たなパーツを取り付けて完了。

 またショーケースへ。

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 こたびの岡山シティミュージアムでの『鉄道のまち おかやま』展は、6/9から8/2までの開催だけど、コロナウィルス騒動で規模は半分になっている。

 大きなモノ、派手で見栄えあるモノ。そういう展示はない。9割方は古い書類や写真での構成。

 ウィルス騒動で他者との接触を避けるということになっちまったから、展示予定だった諸々をもってこれなくなったわけだ。

 よって、同じ市が運営の図書館が収蔵している紙モノをメインにせざるを得なくなった。

 図書館という場所はミュージアム同様、一般の眼に触れないアレコレを収蔵していて、たいがいは「死蔵」に等しい状態……。もちろん図書館が怠慢なわけじゃない。

 今回展示はそのほとんどヒトの眼に触れられないモノモノなのだけど、驚くべきものだった。

「あっりゃ~!」

 実はショーケースの前で幾度か感嘆させられた。

 

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 ○ 岡山における「弾丸列車」構想の具体的線路配置図。

 ○ 明治期の鉄道線路施工に伴う用地買収のための精緻な図面。

 ○ 空襲で焼けた後の岡山に昭和天皇が来られたさい、市の復興計画を具体に図化した屏風絵。

  

 などなど……、眼を見開かされ、ワクワクさせられた。

 ま~、悪しくいえば、

「かなり興味を持ってるヒトでないと、さほど面白くはない」

 かも知れないのだけども、展示価値充分なボリュームと内容のマニアックさが素晴らしくよいのが、こたびの「鉄道のまち おかやま」展なのだった。

 マニアックという表現はよろしくない。

 ツボを押さえ、何を見せたいかが明白なのだ。

 こういう仕業は、担当の学芸員の力量次第でGoodにもなるしBadにもなる。

 

 派手な展示ではないが、ちょっと興味をそよがせれば、

「へ~、こんなのあったのねぇ」

 きっと誰しもが感嘆を風船玉みたいに膨らませるに、違いない。

 ミュージアムも図書館もあるもの全てを展示してるわけじゃない。見えているのは氷山の一角。こたびはその見えていない部分を見せてくれてもいるわけだ。

 

 ま~、そのような企画展の末席に当方の模型が置かれているのは相当にくすぐったくもあるけど、あえて見学を勧めるならば、上記した、明治期の用地買収のための図面だな。

 明治40年代、宇野線敷設のために土地所有者に見せて、

「ここをこのように買い取りたい……」

 という請願(?)やらに使ったもののようであるけど、手描きの地図上に米粒ほどのサイズで描き込まれた文字の精妙と懸命さには、

「マジかよ、これっ!」

 コチラの脳天ガ~ンな、明治のヒトの真摯っぷりに眼もクラクラさせられるんだった。

 この長大な図にはかなりの面積というか地所が文字情報と共に描き込まれているんだけど、もし、一文字でも失敗したら、全部最初っからやり直しだぜ……。

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上の部分写真は5〜6センチのサイズでしかない。筆者が指さす通り、絵巻みたいに、その細かいのが連なってる。

 コンピュータ的カット&ペーストもない時代の、手作業、極細な筆による一発勝負の筆跡と魂魄をば、目の当たりにするがいい。アートな作品じゃない。用地買収の過程における図画面ながら、近頃なアートなんぞは軽る~く吹っ飛んじゃうエネルギーがそこにあって、ただもう驚くこと確実なり。

 規模の大幅縮小と展示物の再選択を強いられた結果ながら、その結果は意外や、

「災いが福を招いた」

 ような良いアンバイ。

 

 全国津々浦々で以上のような小さな福もあれば、それを上廻る不幸も多々。

 騒動収束でもなく、首相本人いわく「100年に1度の事態」であるに関わらず、さっさっと国会を閉会して店じまい。会期延長をしない理由として、「新型コロナウィルス感染症対策に注力する」ためという怪奇な理由付け。

 100年と持たない嘘を上塗って、ちっとも真摯でない。

 

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 毎日新聞は18日にこのような見出しでニュースしてたけど、マスクとて遺産にも価いしないのは明白……。

 ま~、もっとも、100年先ミュージアムにて、そのマスク2枚入りが展示され、

「こんな愚策を本気でやったリーダーと時代があったのかぁ」

 薄寒い暗い笑いを得るには値いするかも、でしょう。