明治の感染症騒動

 

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          ↑ 7月13日新聞休刊日の毎日新聞ネット記事の見出し

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       ↑ 昭和18年日本陸軍省が発行し全国に配布した標語ポスター

 

 イヤな匂いの感じ悪さ……。 

 上記の2つ。雰囲気、似ていなくもない……。

  

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 亜公園のことを調べていくと、芋づる式に、あれこれな当時の姿が立ち上がってくる。

 ま~、それが面白くもあり、同時に、いつまでも調べ続けなきゃいけないというアンバイになって、ゴールが見えなくもなるのだけど。

 とはいえ別にレースに参加しているんじゃないから、あせる事もない。自分の中での区切りをどの辺りに置くか……、という一点のみが問題かな。

 

 亜公園がオープンした明治25年。開園後4ヶ月めの7月、大きな台風が岡山にやって来た話は、前回の岡山シティミュージアムの講演で披露した。

 岡山市全域がほぼ床上浸水という悪しきな事になっちまった。

 亜公園は高台だから、水にやられなかったものの、オーナーの片山儀太郎は京橋のすぐそばに住まっている関係上、レッド・アラートな場所。

 家から出られず、大量に抱え持つ材木の流出や京橋倒壊を心配でやきもきしてた、というような事を話した。

 一方で、この時岡山の親戚宅に滞在していた夏目金之助は、親戚宅が浸水。縁あって知人の光藤亀吉が金之助のところに馳せ参じさせた弟(後に2代目亀吉を名乗り岡山ガスの社長になる)の誘導で、高台たる県庁ないしは亜公園に丸2晩ほど避難していたという事も、話した。

 ま~、その辺り、来月のRSK山陽放送でのトークでは、やや長い話になるから言わないかも知れないけど。

 

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 さ~、その水害の後だ。

 台風後、実は、コレラ赤痢が発生し、かなりの被害が出ているようなのだ。

 明治半ばという事もあり、統計数字としての被害者数など、詳細は判らない。

 けど、死者もかなり出たようである……。

 当時、上水道・下水道ともに未発達というか、水道なんか、ない

 

 誰しもが、飲料は井戸に頼る。

 トイレはすべてくみ取り。

 市内はほぼ全域が床上浸水だ……。

 さて。そうすると、どうなる?

 要は井戸の水もトイレの中身もごっちゃに混ざるわけだ。

 その水をナマで飲む。

 コレラ赤痢は経口感染するから、当然に、てんでワヤな状況になるワケだ。

 グツグツ水を沸騰させて飲むならまだしも、なにぶん夏だ、チメテ~のを飲みたいじゃないか。

 それで井戸の濁りがないのを見てから、

「茶碗いっぱいくれ~ならデェ~ジョウブじゃろう」

 飲んじまう。

 大丈夫なはずがない……。

 菌は彼ないし彼女の小腸に蚕食にかかり、その彼ないし彼女の排泄物が地中からまた井戸水へと移動し、次いで家族が感染し、今でいうクラスターみたいな事となる。

 

 今回の、我々が経験中のウィルス騒動ではオリンピックの前にワクチン開発完了、といった希望的ニュースが耳に届くけど、はたして、そんなお薬、出来るのかしら?

 実は、赤痢コレラも、いまだ特効薬は、ない

 出来ていないんだ。

 昭和の半ばころに両者は日本から急減し、なにやら良く効く薬があるよう思いがちなれど、実態はそうでない。

 要は上下水道が発達して、飲料水とトイレを含む汚水とが分離され、人間にとっての衛生面が大きく向上したのがポイント中のポイントだ。

 コレラ菌赤痢菌も、今もウジャラカ、いる事はいるのだね。

 

 明治の半ば、開業した亜公園はそういう伝染病蔓延をも経験しているワケだ。

 ということは、今とあんまり変わらないじゃないの。

 (亜公園で伝染病が出たという話はない)

 ニュータイプのコロナ・ウィルスは、コレラ菌なんぞよりはるかに微細なものらしいが、そのコレラですら完治薬ができないのに、はたしてウィルスに効く薬が数ヶ月で開発出来るんだろうか……。

 難儀は続くと思った方が気がラクかも、だ。

 だから呼吸器系衛生面の充実が結局は要めって~コトかな……。コレラ達と人間達同様に、このさきは共存するっきゃ~ないのかも、だなぁ。ヤだなぁ。

 

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 ちなみに、岡山での上水道のスタート時を顧みるに……、明治21年に自費でもって上水道を構築して市民に提供しようとした人があったけど、大掛かりで予算も甚大ゆえ断念。

 明治33年には市役所に水道工事課を設けたものの、意外や、市民の半数は水道設置に反対。市議会がそれで二分して、何も進まない。

 明治35年。全国的コレラ蔓延。水道敷設がコレラ赤痢に対抗する手段という知識が広まり、反対の方々も賛成へと意見を変える。

 明治38年岡山市は申し込みのあった7434戸に向け水道給水を開始。以後、徐々に拡大……。

 その拡大と共に赤痢などの発生がカク〜ンと減少する。

 

 上記の通り、かつて、水道なんぞは要らない、というピープルがけっこういたのですなぁ。

 ヘンテコだけど、お・も・し・ろ・い

 水道を整備してやっとコレラ赤痢蔓延をコントロール出来たというのを今に適用すれば、さ~、わたし達はどういう社会整備をやったらいいか?

 今やどの店でもやってる透明ビニールの間仕切りのみが、”効能あり”とは思えない。共存となるなら、生活スタイルの根幹にある何かを変えなきゃいけない。

 けど、決定的となる何かがまだ判ってないというのが、ま~、ペケなところでしょうなぁ。この状態でオリンピック開催なんて、ありえないでしょ。

 それでもヤリタイという人があれば、それは明治時代の、水道施設に反対を唱えたヒトに逆説的に似るなぁ。

 

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 という次第で、次の講演は8月20日

 申し込みはRSK山陽放送へどうぞ。当初は250名様を予定でしたがソーシャルディスタンスにて、50名様限定。

 7月末が締め切りだそうですから、興味ある方はお早めによろしくどうぞ。