彼岸の失敗

 いつも通りの秋季彼岸。

 すでに坊さんの到来は予告されてたから、けっこ~早朝より準備バンタンなのだった。

 概ねで我が宅へは朝9時半前後にやって来る。

 それを見計らって弟夫妻らもやって来る。

 ちょいと早めにマイ・マザーの朝食のお世話やらも済ませ、抜かりなし、後は待つのみ。

 で、自分の部屋でネットのニュースなんぞを眺め、9時前になったから居間へ出てみると、線香の匂い。

 うん?

 すると、マイ・マザーが自室から、

「お坊さん、来たで。もう帰ったで」

 事もなげに云う。

 

 マイ・マザーの部屋と仏間は隣りあわせゆえ到来を彼女は知ったわけじゃあるけど、足のアンバイが悪いから容易にゃ動けない。

 

f:id:yoshibey0219:20200921095510j:plain



 という次第で、用意した茶も茶菓子もおしぼりも出せず、これまた用意してたお布施も渡せずじまい。

 推察するに僕が自分の部屋にいた僅か15分前後、8時40分あたりから9時前にかけて、坊さんいつもの通り、ささっと上がり込み、ささっと拝んで、

「さて、おばあさましか、おらんな……」

 ささっと帰ってった……、ようなのだ。

 僕の部屋はかなり防音が効き、外の音がほぼ聞こえない。

 くわえてマイ・マザーは耳遠く、おそらくは仏間で坊さんがブツブツ仏と拝んでるさいも、それは聞こえておらず、声がけられて、やっと坊さんの存在に気づいたんじゃあるまいか……。

 この2点が災いした。

 

「なんちゅ~こっちゃ」

 唖然としてるところに弟夫妻や子らがやって来て、

「へっ? もう来て、もう帰ったん?」

「兄ちゃん、アンタ、何しとったん」

 ケツネかキツネにだまされたみたいな顔で苦笑。

 当方も苦笑で、トホホ~、溜息。

 

 こういう場合、翌日だかにお布施をお寺さんに持っていくのが、ま~、常識というもんだろう。

 だども当方、ヒジョ〜シキ。次に来られるさいに渡せばいいやと自己納得。

 ま~、この次はといえば、来春の彼岸時ということになるけど。

 ま~、いいや。

 不要な外出は控えるという最近の傾向をば、ここは適用。