月は東に日は西へ

 18日、水曜の午後8時よりの、山陽放送の番組『メッセージ』をお見逃しなく。

 なんてね……。

 まっ、これは番組に自分が出るんで……、自分宛の備忘的-記述。ローカルな話。

 長時間取材され録画され、10日ほど前も追加の録音取材があったたけど、おそらく4分ほどに縮められているだろうとの予測があたっているかどうかが、ま~、愉しみというか、同じ出てくるなら10秒でも長いほ~が良かないかぁ……、とか。

 番組詳細は下記へ

www.rsk.co.jp

 

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 ほぼ定期的に、模型を作りたい気分になる。

 お腹がすいて何ぞ欲しい、という感じに似てる。

 模型屋さんだから習癖としてそうなるのかどうか知らないけど、こういう時はたいがい、仕事モードの模型製作じゃなくって、市販のプラスチック・モデルが念頭に浮いている。

 かといって、作るわけでない。

 いざ作業に入れば本気になっちまって、他の諸々が出来なくなる。

 それは困るので、なのでいつも回避……、ボックスアートを眺めるだけに留めて自分をうっちゃる。

 

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 X-15のプラスチック・モデル。

 子供の頃に横山光輝の『少年ロケット部隊』に遭遇し、一気に魅了され、この機体が大好きになって、いまだ自分の中にあってはカッコいい飛行機の代名詞なのじゃあるけど、漫画と違い、これは飛行機は飛行機でも、地上から発進は出来ない実験機……。

 ほぼ、弾丸に近い。

 この弾丸ロケット機を人間が操縦し、大気圏と宇宙の端境付近まで一気に駆け上がって燃料を使いきり、後は滑空して降りてくるだけの飛行体だ。

 それゆえパイロットは宇宙服(スペーススーツの開発初期なので不格好。着座を前提にしてデザインされたようだ)とその維持装置を身につける。

 X-15はマッハ7に近い速度記録を持つ。

 

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                      photo:NASA

 

 音速の7倍というのはどういうことかしら? 

 音は1秒でおよそ340m進むから、たとえば椎名林檎が「あ~」と声を出した瞬間にはマイクは2.38 ㎞ 先に飛んでってる事になる。いくら彼女が頑張ってもマイクは声を拾わない……、という感じ悪さ。

 快適な乗り物であろうはずがなく、危なっかしいモノの代名詞になりうるのがX-15だった。

 アポロ11号のアームストロングがなぜ船長に指名されたかといえば、このX-15の操縦に長けて見事に危機を回避したという事があげられる。

 いったん宇宙空間まで飛び出したものの、戻ろうとするや空気の層に阻まれて、いわゆる進入角度が取れない状況に追いこくられたのを、途方もない速度のさなか、自力での再突入に成功したのが、彼だった。

 同氏はジェミニ計画でも超ヤバの危機回避に成功。映画『ファースト・マン』ではこの両エピソードも描写されているけど、ちょいと判りにくいのが難だったな。

 

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           アームストロングとX-15 photo:NASA

 

 宇宙空間ぎりぎりまで一気に駆け上がるさい、X-15は空気摩擦で機体が焼ける。鍛冶の炉の中で灼熱した刀みたいに、先端部付近はオレンジ色にまで燃焼する。

 無事に戻って来たX-15はボロボロといってよいくらい焼け焦げ、部分が剥離しているが、その損傷を軽減させていくのも実験研究の1つであったろう。

 飛行回数を増すたびに改良され、X-15は全部で3機が作られた。2号機は損傷激しく修復不能、3号機は空中分解しパイロットのアダムズが殉職し、現存する1号機は今はスミソニアンに展示されている。

 操縦したのはアームストロングを含めた12名のエキスパートだけだったが、200回近い実験飛行がもたらしたデータの積み重ねは大きかった。

 X-15の翼はやたら小さい。滑空にまったく適していない。降下時には激しくグラグラする。その抑止に翼の両端に噴射装置があって、滑空降下時、パイロットは不安定な機体をその噴射によってコントロールし、向きを変えたり姿勢を制御したりした。

 アポロ司令船はこれを応用している。大気圏突入から着水までの間、宇宙飛行士はジッと座ってたわけじゃない、着水予定地に降りるべく噴射装置を駆使し、実は「運転」していたわけなのだ。

 これはスペースシャトルの滑空で大々的に使われたし、ISS国際宇宙ステーションにも似た機能装置がある。

 シャトルはX-15が産んだでっかい実の子供といっていい。

 

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                降下中のX-15 photo:NASA

 

 というような史実を踏まえ、模型工作するなら、飛行した後での、アチャコチャ焼け焦げたカタチでのX-15をば、壊れた2号機のそれを作ってみたいにゃ~、などと空想の羽をパタパタ羽ばたかせるのだった。

 でも、工作には突入しない。

 現状、その空想で模型を作った気持ちになって小さく満足するわけだ。

 しかしたぶん、いずれ、いつか、こういう状態は破綻するわいね~。フラストレーションがたまって貯まってマイ・レージ、我を忘れて工作に突き進むやもしれない。

 けどまた一方で、結局は作らず終いで、作る想像だけを膨らませ、それがすなわち、“愉しみ”という次第で決着するのかも知れない。

 プラスチック模型は夢をはぐくむ装置。トリッキーなマジシャンの帽子みたいなところが、ある。

 

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  MONOGRAM社製X-15のパッケージやらパーツを眺めつつ、で、なぜかこの句が浮くのだった。

 

 菜の花や月は東に日は西に

 

 蕪村は神戸は六甲、摩耶山でそう俳句しちゃったけど、月に太陽に地球に自分……、ずいぶん雄大だ。

 彼は眼下に菜の花を見つつ、沈む太陽と登る月を同時に味わっているわけだ。これを絵に描くなら、遠近180度全開光景の、その中心に存在としての自分を置くという構図。天体と地上と自分、三方位を17文字で結んでる。

 ま~、その雄大に1機の黒い機体を飛ばして、句にロケット時代の速度的アクセントを加えちゃいたいような感じかしらん。