マックのハードディスクが復旧した翌朝、電子レンジが、
「ポンッ!」
乾いた音たてて、ウンともスンともいわなくなった。
もう何年も使ってたもの。ポンッ!はおそらく電源部が逝った音なんだろう。「壊れ連鎖」にガックリさせられるけど、コンピュータのように修復とはいかない。
やむなく新たなのを買った。
しかしね~、電子レンジが壊れると、たちまち、ミルク1つあっためるにも、面倒なことになるんだなぁ。小さい鍋にコンロ、使うたび鍋は洗わなきゃ~いけね。
いかにレンジが重宝してたか、失ってよ~く判る。
山下和美の漫画『天才柳沢教授の生活』で、主人公がミルクをコンロで沸かすシーンがあって、沸騰寸前に火を落とそうとする教授のカタチが、好もしい。
この漫画が描かれた1980年頃はIH製品はないけれどレンジでチンが全盛時代。
けども67歳の教授はレンジ使わずコンロと対峙してるワケで、そこでの、機械にお任せしない、火加減のこだわりが好もしい。
当方チョイスでベスト10映画の1本『リスボンに誘われて』では、ジェレミー・アイアンズ扮する国語教授が朝の紅茶を沸かそうとして、キッチンにティーパックの在庫がないのに気づく。
季節は真冬。それでゴミ箱をあけ、イチバン上にのってる、おそらく前日朝に使ったと思われるティーパックを回収し、実に無造作にカップに浸けて一杯のティーを作り出すというのが巻頭にあって、教授の生活の一端を垣間見せるという仕掛けになっていたけど、ここでもレンジは使われない。
前日朝食時のゴミがゴミ箱の最上部にあるのは、彼が夕食を外食で済ませている事を物語る。
調理しないから、いわゆる生ゴミがなく、孤独なシングル・ライフを送っているのが、この巻頭でアリアリ判るわけだ。
本に囲まれたアパートの中、寝起きでまずは、1人、チェスの駒を動かして、アタマの体操というか、これが彼の趣味であろうコトが判る描写。
時計のアラームが鳴って着替え、学校へ出向く準備をし、朝食を用意する。ゴミ箱に入った空のパッケージがほんの僅かに映って、その図柄から想像するに、それはトワイニングのじゃなく、ドイツのロンネフェルト紅茶のダージリン徳用パッケージと思われけど、いかんせんBlu-ray画質じゃないんで、わかんない。(この徳用は日本では売ってないのかな?)
当日の授業の書類を見つつ小さなテーブルで朝食をとる。冬のスイス(ベルン市)の朝はまだまだ暗い。
当然に紅茶はデガラシだが、仔細を眺めるに、教授はチェス用の小テーブルと朝食用のテーブル、2つを使い分けて、そこはそこでチャンとしてこだわりを持ってる生活だというのも、わかる……。
山下和美の漫画もそうだけど、良い作品はたいがい、細部のディティール描写に妙味あり。
我が宅には、さて? いつ電子レンジが入ったかしら?
いつ初めてコーヒーをチンしたかしら?
今は2~3万円で買えちゃうけど、その昔は10倍ほどの値段だったような気がする……。
レンジは床が回転するのと、しないのと、2種類があるけど、どっちがイイのだろ? 判らんまんま、「ポンッ!」で昇天したのと同じく、回転しないのを買った。
コンビニ弁当をあっためるに、回転式は弁当のサイズにもよるけど、フチが庫内の壁にあたってモーターに負荷をかけるゆえ、ペケね。
ペケといえば、『リスボンに誘われて』、DVDどまりで、なんでBlu-ray化しないんだろ、焦れったいな……。