3月の映画よもやま

 3日前、4回目だか5回目だかのzoom呑み会。参加6名という賑やかでアッという間に2時間が過ぎてったけど、話を聞くに、やはりというか……、全国各自治体のゴミ処理場はメッチャ忙しいという。

 誰もが自宅にいる機会が多くって、老いも若きもニワカ大工やらリフォームに精出して、結果、粗大ゴミやら不燃ゴミやらやらDIY作業に伴うアレコレが処理場に運ばれる率が高くなっているそうな。

 なるほどねぇ~。

 ま~、当方も結果としてはその内の1人か……。

 

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        タイル剥離後の下地を整え中。まだ乾ききってないんで黒く映ってる

 

 さてと今月に眼にした映画たち。備忘録的に記しておく。

 

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ペリカン文書THE PELICAN BRIEF  1993   Blu-ray

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 VHSの時代頃からもう何度観たことやら。ジュリア・ロバーツ扮するダービー・ショーの頭の良さと、動き廻る記者デンゼル・ワシントンとの組み合わせが良いのは当然だけど、この21歳という設定の法学の学生ダービー・ショーが、かなりのお金持ちの家で育ってると判るのも一興。アメックスをはじめに複数のカードを持っていて、そこいらの学生とは違う。

 逆にいえば、貧乏な苦学生じゃ~、この映画は成立しないんだわ。お金持ち出身ゆえ、カツラ買ったり衣装取っ替えたりで変装し、ホテル転々の逃避行も出来るわけで、ホテルとて部屋が複数あるのをチョイスだぞ。

 この映画でイチバンにいいのは、暗殺者カーメル役のスタンリー・トゥッチだな。ある時はハゲたオカマ、ある時はビシリと決まったスーツでカツラ、ある時はランニング・シャツのジョギング愛好者……多羅尾伴内みたいな変装ヘンゲがいいざんすし、何より人殺しにはまったく見えない目元のかわいらしさがヨロシイなぁ。

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 ダービー・ショー殺害を目論む大がかりなグループも出て、この連中いずれもがおっかない形相で執拗に追っては来るものの、映像的インパクトはスタンリー・トゥッチ1人の方がはるかに上。役者の存在感というもんだろ。

 ホテルにチェックインするや、依頼殺人のメモをチェックしつつ平然とフロントにサンドイッチをオーダーする辺りの描写が、プロの中のプロっぽくていいざんす。我が輩が好きな男優のお一人さんがこのヒトね。

 このトゥッチが監督した『ジャコメッティ 最後の肖像』を観たいとは思ってるけど、いまだかなわない。

 ジュリア・ロバーツに関しては、その後いくつかの映画で彼女を見たけど、どうもいま1つ。

 某BARのママが、『オーシャンズ11』での彼女の姿勢の悪さを指摘し、以後、注視するに確かにその通りで、この人は豪奢な役回りが多い割に、それに見合うセレブリティという感じが出てこない。貧乏だけどコツコツ活きてるというタイプの女性を演じても好いかと思うんだけど、な。

 

 

白雪姫と鏡の女王Mirror Mirror 2012 Amazon Prime

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 そのジュリア・ロバーツが悪い女王を演じてるブラックなファンタジー

 この映画でも彼女はセレブリティ。王族衣装があんがい似合い、かつ、悪役という立ち位置が悪くない。猫背っぽい感じはそのドレスゆえ感じない。

 しかしきっと、映画製作者は彼女の大きな口に拮抗出来うるヒロイン役を探したには、違いない。

 で、結果として、眉がとっても濃ゆ~いスノーホワイト(リリー・コリンズ)が出てきて絶妙なバランスを生んだ。

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 大口 対 濃い眉。

 そこを基点にこの映画をみると、この滑稽劇はセット撮影であることを強調し、色々なシーンで大げさがあり、「映画的」ではなく「大胆に絵本的」であろうと画策した感触がある。誇張が全域に塗布されてる。

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 だからそれで安っぽくもあり、逆に豪奢にも見える。豪奢の1つは衣装デザインが石岡瑛子だからであろうけど……、インド風味たっぷりミュージカル仕立て(監督がインド出身だからか)のエンディングの最後で、この映画が石岡に捧げられているのが判る。公開直前になくなったようだ。

 

アガサ・クリスティー奥様は名探偵』 Mon petit doigt m'a dit... 2005 フランス映画 DVD

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 主役のカトリーヌ・フロは『大統領の料理人』で見事な演技を披露してくれたヒト。この映画でも好感。そこそこ富裕で悠々自適という主人公の立ち位置がヨロシイな。そこをイヤミなくケレンミなく演技としてこなしたカトリーヌ・フロがやはりとてもヨイヨイ。

 彼女が持ち歩いてるバッグ(たぶんエルメスバーキンとか、ちょっとブランド名は判らないけど、良い品をさりげなく使ってるらしき描写も良し好し。

 亭主の車もいいぞ。たぶん60年代初期アストンマーティンのDB4GTだと思う。

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 英国情報部のおなじみ007が乗ってるのが、このDB4GTの後継車となるDB5。

 主人公の亭主はフランス情報局に勤務の役人であるから、この車をチョイスしてるのは、そのあたり、英国人クリスティーや007の英国へのパロディでもあるんだろう。

 ま~、ともあれ、孫がいるこの熟年カップルのラブラブなSEX描写(直接な描写はないよ)を含め、フランスらしいテーストに満ちて好感度高し。

 フランスじゃ随分と評判良く、続編として2008年に『奥さまは名探偵 ~パディントン発4時50分~』が作られ、それがまた秀逸だったようで幾つか賞を取ってるらしいけど、未見。DVDになったもののプレス量が少ないのかしら? 中古品で78000円の値段がついてら。実売で1000円程度な再販をば望む。

 

『バードマン』BiRDMAN  2015   Blu-ray

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 アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督のアカデミー賞受賞作。

 繋ぎ目がない1シーンのように見せる映像は、例の『1917』よりこっちが早く、撮影賞も取ったのは当然な感じ。マイケル・キートンの恥をかなぐり捨てた演技やらエドワード・ノートンの妖しい熱演がたぎり、見事なシーンが連続するけど、ボクが好んで観る映画かといえば……、そうでない。

 

『レヴェナント 蘇りし者』 2016  Amazon Prime 

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 アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の『バードマン』の次作品で、これまたアカデミー賞受賞作。ディカプリオがやっとアカデミー主演男優賞に輝いたという点でも話題になったね。

 効果音に近いような坂本龍一の音楽が何より素晴らしい。映像の流れにうまく溶けて出しゃばらず、画と音楽が限りなく一緒になって、ひたすらに美しい。音符としての音楽というより「耳に届く背景音」といってもイイか。だからことさらにメロディを拾わなくていい。これは好かった。

 が、ボクが好んで観る映画かといえば……、やはり、そうでなかった。

 結局、繰り返して観る確率が低いということになるんだね。良き作品イコール再観賞、という図式はなりたたないんだわ、さ。

 ディカプリオと熊とのシーンやら、悪役に徹したトム・ハーディがもたらす腹立たしさもスゴイんだけど(助演男優賞だね)、それらを座ってジッと眺める根性が今のボクには、ない。『バードマン』もこちらも、人の凄まじさがしっかり描かれちゃ~いるし、ま~、だからこそ2年連続のアカデミー作品賞なんだろうけど、いわゆる「いきざま」のその強烈にタジタジしちゃって、正直、しんどいのだね。

 もちろん『バードマン』も本作も「映画術」としてその映像と紡ぎ方が限りなく頂点付近にあるのはマチガイない。とりわけ本作では雪に覆われた山河の景観が圧倒的に美しいし、圧倒的に厳しいものだと眼にどんどん入って来るし、主人公が逃げつつも追う立場という妙なアンバイや、巻頭から言葉として出てくる「女」が何であったかが劇の終わりに判るという仕掛けやらの醍醐味も、総じて映画でしか描けない性質を濃く濃く帯びているんじゃ~あるけど、いかんせん、こちらのアンバイがよろしくない。見終えて疲れてるんだ。だからま~、1度観たからもう充分という感が濃厚。

 

ザ・ロック THE ROCK   1996 Blu-ray

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 当時映画館で観たさいはそれなりに面白いと思ったけど、こたび久々観るに、いま1つという感がなくはない。

 政府に憤ったエド・ハリス扮する反乱将校の脆さが、アクション映画の醍醐味を減退させているような……

 むろん、その脆さがこの将校(准将)のチャーム・ポイントなんだし、ただのアクション映画にしたくなかったであろう製作者の気分も判らないではないが~ぁ、こちらの気分としては、ただのアクション映画に徹して欲しかったような。

 

インサイド・マンInside Man   2006    Blu-ray

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 先月に思い出し、Blu-ray購入で久々の観なおし。ついこの前、クリストファー・プラマーが亡くなってるんで、追悼もこめて。

 ったく、うまい造り。スパイク・リー監督作品ではイチバンにあげてイイ。

 デンゼル・ワシントンよりも、大半シーンが濃いサングラスとマスクだった犯人役のクライヴ・オーウェンがやはりヨヨイノヨイ。

 2006年当時、仲間と倉敷に出向いて観たさいの記憶も蘇るが、今回の再見ではジョディ・フォスターの良さにもあらためて感心。

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 1度観たあと、特典の監督自身のコメント入りでもう1度観ると、監督もジョディの良さに言及してた。

 

ROMA/ローマ』 ROMA 2018 Blu-ray

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 数年前の弩級な話題作を今やっと観る。監督のアルフォンソ・キュアロンはボクよりちょっと若いけど、自伝的映画なのだそうだ。メキシコのローマというストリート沿いの、ある一軒の家の話。

 とんでもない規模のセットとエキストラと小道具の潤沢に驚く。

 劇中、映画を観にいくシーンがある。それが『宇宙からの脱出』。

 ボクにとっては大きな映画。意外なところで時代の共通性みたいな気分を味わえた。というか、実に単純に、あの時期1971年)、メキシコでもこの映画を観られたのか……、という単純な驚きなのじゃ~あるけど。

 劇中に登場するシーンで、宇宙空間に浮いてるのはジーン・ハックマン。

 

 13年前にこのブログに載せた『宇宙からの脱出』記事。

 さらに2014年の1月にも同じタイトルで、またこの映画を取り上げてる。この記事は模型がメインの話。

 

ゼロ・グラビティ GRAVITY   2013   Blu-ray

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 キュアロンの前作。あらためて再見。『ROMA/ローマ』で出てきた『宇宙からの脱出』が幼少時の体験として彼にあるなら……、この『ゼロ・グラビティ』は彼なりの自身へのオマージュなのかもしれない。

 まさに宇宙からの脱出劇

 これが公開された直後だったか、劇作家の坂手洋二氏と某BARでたまたま席同じくし、氏が、

「あんな映像が撮れるんだねぇ」

 と素直に感嘆していたのを思い出す。キュアロンと氏はほぼ同い年くらいのはず。ひょっとすると岡山出身の坂手も岡山グランド劇場で『宇宙からの脱出』を観たかもだけど、ま~、それはどうでもいい。人それぞれに同じ時間、同じ映画を過去味わっていたことにチョット、感慨したまでだ。

 

月世界旅行&メリエスの素晴らしき映画魔術』 2020 Amazon Prime

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 1902年にジョルジュ・メリエスが造った映画の研究と修復の結果としての記録映画。

 Blu-rayが販売されているけど、1万2千円を超える。高過ぎ……

 幸いかな、今現在は、Amazon Primeで観ることが出来る。

 素晴らしい。

 メリエスの素晴らしさと、最新の復活技術による努力の素晴らしさ。

 セルロイド・フィルムは物質としては実に短命で脆く、ロールに巻かれて缶の中に保存していても劣化が進む。フィルム同士がくっつき、とけあってく。それを1コマ1コマ何とか取り出し、デジタルに置き換え、欠損部を補修していく根気の本気作業が数年……。

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 119年前のメリエスの卓越と、現在の修復技術者たち(大勢ではない。ごく少数の徹底した努力)の根性と卓越。この2艘の舟の進捗を同時に眺められる贅沢をば味わう。

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 フランス人メリエスはこの『月世界旅行』に全霊をそそぎ全財産をかけて製作にいそしむ。しかし製作途中のフィルムのコピーが米国に流出。エジソンはそれを手に入れ、さらに大量コピーし、経営する多数の映画館で上映し大儲け。

 一方のメリエスはそんなコトになってるとも知らず映画を完成させるも、事態を知って愕然……。財産を失いプライドも蹴破られ破産する。

 そういう顛末を踏まえて復活した『月世界旅行』を眺めると、この作品、やはりフランスの宝だとは思う。

 

NEXT -ネクス- NEXT 2008 Amazon Prime

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 ニコラス・ケイジ主演のSF。2分先の未来が見える男の話。原作はフィリップ・K・ディックの「ゴールドマン」。

 この作品、あんがいと好き。ヒロインとなる女性にどう接近するかを映像として見せてく導入部のくだりは、笑える。

 時間を行き来するのを主題にしたSF映画は、たいがいどこか破綻しているし、この映画とてツッコミどころ多々ありなんだけど、そうそう深刻に受け取らず、愉しく眺めりゃヨロシイのではないかしら。

 ヒロイン役のジェシカ・ピールがいいし、女性FBI捜査官のジュリアン・ムーアもいい。ぴったりと役にはまってる。

 ニコラス・ケイジは最近5回目の結婚で相手は日本人の元女優とかで、盛んだなぁ。しかし過去4回離婚したということは……、2分どころか、数年先も読めなかったのじゃね。

 ま、そんなもんだワ。

 

『宇宙人東京に現わる』 1956 Blu-ray

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 5年ほど前、本ブログでこの映画劇中に出てくる居酒屋「宇宙軒」のことを書いたら、多数のアクセスがあって驚いたことがあるけど、その頃はやっとDVDが出た程度だったねっ。

 今やBlu-rayで観られる。

 万人に勧める気はない。あくまで我が嗜好に基づく好みな映画。劇中の「宇宙軒」は最高だ。

 見返すたび、いっぱい呑みたくなる。というかホントにこの店が我が宅の近くにあったらなぁ、と真顔で思う。

 5年前の記事は下記の通り。

 テニスコートがある軽井沢と思われる大きな娯楽施設、清流に遊ぶ若い男女の嬌声、刻々と動く電車……、などなど、この映画は1956年に創られ、当時の日本のカタチを記録している側面もあるのだけど、その僅か11年前までは、「打ちてし止まぬ」な勢いの、無謀な戦争で遂には焦土と化したようなアンバイであったのが、まったく感じられないという……、日本人の「忘れっぽさ」というか「あっけから~ん」というか、そういうところが垣間見えるようでもあって、感慨の深さが観るたび深くなる。

 そこを踏まえて今を思うに、オリンピックできるの? できないの? と一喜一憂してはいるけど、どちらに転ぼうとも、それはそれなりでスト~ンと受け入れちまって平然としちゃえるボクらではないかしら? 

 既に始まっている聖火リレーの報道を眺め……、そんな風にも思ったり。