この1週間ほどで、ここ岡山もジワジワとウイルス感染が拡がって、ヨロシクない。
すでにワクチン接種予約票も頂戴しているけれど、さてさて、ワクチンの入手とて「希望的観測」に過ぎない状況。いずれ確実に……、ではあろうけど、現状じゃ印刷物に書かれた日程通りにゃ、いかないだろう。
結局いまは、閉じこもってるのがイチバンかしら? ぅぅ、閉じこもりたくないんだけど……、オリンピック関係者への優先接種とかいったニュースが耳に入るたび、
「何のための五輪?」
不快もつのる。
強盗に刃物突きつけられてるのに運動会で希望の光を見よう!ってヘンテコりん。
今月は何だか気ぜわしく、ゆったり2時間ほど、映画眺めてウッシッシ~という次第にならなかった。
時間が取れなかったというワケでなく、映画と対面しデートするユトリに欠けた。スクリーンをおろし、部屋の灯りをおとしてプロジェクターでもって眺めるという風には気が進まなかった。
なのでほぼすべて、iMacでPrime Videoをば。
『レディ・プレイヤー1』 Ready Player One 2018 Prime Video
『シャイニング』やら『バック・トゥ・ザ・フューチャー』やら『ガンダム』やらやら……、あれこれのキャラクターやかつての映画の美味しいトコロが幾重と登場し、そのCG技巧でもってキャメロンの来たる新作『アバター』の続編をば凌駕する勢いだったんだろうけど、話の基本が古くさい。かつて80年代の『トロン』の二番煎じというか、その延長程度。
CGの卓越は呆気にとられるけど、これ、ただの借り物競走。スピルバーグが老いた感じ濃厚で、ガッカリだった。『アバター』もずいぶんに古臭いハナシで、先住のインディアンと開拓者の西洋人を描いた西部劇に過ぎなかったことを思うと、内容の薄さはどっこいどっこい。
『ランペイジ巨獣大乱闘』 2018 Prime Video
巻頭から猿が出る。むろんにCGであるからしばしは我慢するも、そのリアルな動きにだんだんウジウジさせられ、その白い猿(ゴリラか)がほぼメイン・キャラクターになるのだなと判ったトタンに幻滅。
観るのをやめる。
猿は……、苦手だ。子供の頃、名古屋のでっかい動物園の、猿の檻の前で、猿の振る舞いを見て嘔吐して以来、ダメなのだ。
1960年代末の『猿の惑星』は人が演じた猿と判ったから楽しめたけど、いかんなぁ、昨今のCG技術は猿でさえリアルに描け、しかもそれに感情移入できるレベルなのだから、困る。
『フッド ザ ビギニング』 Robin Hood 2018 Prime Video
レオナルド・ディカプリオが製作の映画。主役のタロン・エガートンは2012年にデビューし、2015年の『キングスマン』でブレークして2017年の続編『キングスマン:ゴールデン・サークル』で演技が向上、やや注目に値いし、いずれ10年も経てば、この人は007のジェームズ・ボンドを演じられのではないかな……、ともマジに思ってるけど、この映画はさほど面白くなかったぜ。
弓矢の高速度をうまく表現したりで面白いトコロもあるけど、ヒロイン役の女優が今ひとつパッとしない。ロビン・フッドの魅力に見合うだけの技量が乏しく、精彩に欠けてたのが、いけない。U2のボノの娘さんらしいが、正直なところ凡庸、平凡、パンチに欠けた。
Girl with a Pearl Earring 2004 イギリスとルクセンブルグ合作 Prime Video
フェルメールという希有な画家とそのモデルの話。
どのシーンも絵画みたい。
フェルメール役のコリン・ファースは真摯な演技ながら、どこか茫漠として決定打に欠け、一方で、モデル役のスカーレット・ヨハンソンは圧倒的な存在感。
なるほど、この映画が公開されて以後、『青いターバンの少女』と呼ばれていた彼の絵が『真珠の耳飾りの少女』と一変してしまったのも頷ける。
まったくの想像話ながら、説得力ある展開の妙味には感服。”創作の醍醐味”をおぼえるコトしばし。
ただしかし、エッセンスを抽出し煮詰めたのは良しだけど、画家とモデルの間のモヤ~っとした空気感は最後までクリアにされずで、そこに不満をおぼえないワケでもない。フェルメールを描こうとして、結果、そのモデルとしてのスカーレット・ヨハンソンが場をさらった感が濃厚で、主旋律が曖昧。
けど一方で映画製作者はそのモヤ~っとしたところを、あえて観客には曖昧を呑み込んでもらおうと企んだような感じもあって、さぁ~、この映画をアタマの中のどこに置こう。
印象に残るという点はなかなか良さげだけど、結局、フェルメールには近寄れず、かの絵も、結局モデルが良かったから……、みたいなアンバイになりかねない。
『ワイルド・スピード-スカイミッション』
Fast & Furious 7 2015 Prime Video
重量級の大軽量。な~んも考えずともイイ。
だから逆に、これはデートで観るような映画じゃない。
「おもろかったね~」
「うん」
これで映画後の会話が終わってしまうんで、1人で観るべきなアンリアル・リアリティー。ま〜、そこが醍醐味。
『ワイルド・スピード-スーパーコンボ』
Fast & Furious Presents: Hobbs & Shaw 2019 Prime Video
娯楽、この一語に尽きる。
な~んも考えずともイイのが、とにかく良い。
ジェイソン・ステイサム演じるデッカードの車コレクションの中に、ミニがあるのも良かったわ。
ま~、ステイサムはかつて『ミニミニ大作戦』のリメーク版でミニに乗っかり大活躍だったから、それへのオマージュなんだろうけど、チョイっと顔がほころんだ。
いうまでもなく、デート向きでない。
米国では来たる8月にこのシリーズの新作が公開予定で、今日(米国時間ね)から6月末まで毎週金曜に今までのシリーズ8作を順次、劇場で無料公開とのこと。
コロナ禍で映画館は青息吐息だったゆえ、こういうプロモーション企画はウェルカムだろう。ポップコーンとコーラが売れるはずだから……。なので、このさいデートも好い好い。劇場のポップコーン買って売り上げ貢献だねっ。
『ガガーリン 世界を変えた108分』
Aгарин. Первый в космосе 2014 Prime Video
今月でガガーリンの宇宙初飛行から60年。(1961年4月12日に人類史はじめて宇宙に出た)
という次第ゆえ、観る。
飛行時間108分の合間、回想としての彼の履歴が描かれる。
なかなか魅力的なガガーリン役の役者さん。
ボストークという小型宇宙船のカタチもよく伝わる。複数のアンテナがスス〜っと伸びるところとか。あるいは、ソビエトの宇宙計画で指揮をとってたコロリョフが良い人っぽく描写されてるところとか、米国映画にはない味を味わえる。
実に残念なことに、放尿エピソードが描かれない。
ガガーリンは発射場へ向かう専用バスに乗車時、途中で止めてもらい、バスのタイヤに放尿した。
どういう次第か、以後のボストーク打ち上げ時、ソ連の宇宙飛行士たちはこぞってこれを真似、儀式化した。女性飛行士は小瓶にオシッコを入れておき、それをひっかけた。
米国も似たようなもんだ。同国初の宇宙フライトを成功させたアラン・シェパードは打ち上げ日の朝、ステーキを喰ったが……、これが成功の秘訣とでもいうか、慣習化し、マーキュリー計画、ジェミニ計画、アポロ計画と、飛行士たちがモーニングにステーキを食べるのが儀式化した。
ま~、そういうジンクスの大元となるシーンなのだから、この映画でも描かれているだろうと思って眺めてたのだけど、ざ~んねん。出てこなかった。
宇宙飛行士と縁起担ぎ。その辺りの心理が面白いと思うのだけどねぇ、あえて外したのかなっ。
『風雲児信長』
1940年作の『織田信長』を改訂し、戦後の1954年に再公開した作品 Prime Video
いささか判りにくい。セリフがすべて古い日本語だから余計にそうなんだけど、その古い日本語ゆえ、判りにくい。けども、古い日本語の言い回しを愉しめるという点は、とてもグッド。
行列のシーンやら葬儀のシーンでは、けっこうな数量のエキストラ。そこも愉しめる。
史実として高名な、斎藤道三との初会合シーンも、愉しめた。
が、愉しめる反面、退屈な感も常にあって、大昔の映画という点を考慮しても……、再見に価いするかといえば、ヤヤ難しい。いっそ、戦前の1940年当時の編集がどんなものだったか、そっちに興味がわいた。
『アニアーラ』 ANIARA 2019 Prime Video
今月に観た映画としてはダントツ1番にあげていい、スウェーデンの映画。
ノーベル文学賞受賞作家ハリー・マーティンソン(1904~1978)の原作『アニアーラ』をアカデミー賞受賞製作陣で映像化。放射能汚染された地球から火星へ移住するため、8000人の乗客を乗せ旅立った巨大宇宙船アニアーラ号。だが不慮の事故により燃料を失い、軌道を外れ、こと座の方面に向けて彷徨うことに。
と、そういう流れの中、最終シーンでは500万年を越えた時間が提示される。
女性の視点で描かれている。
破滅に至るゆるやかな時間。厭世的な死生観。テクノロジー。正常と狂気。暴力。カルト。同性愛。歓喜と寒気。楽観者と達観者と悲観者、従順と強情。喜劇と悲劇。未知なモノとの遭遇。
ありとあらゆる要素が超巨大な宇宙船の中に閉じ込められ、いわば宇宙船自体が”人類が頂点にいる地球”という次第。
劇中、登場人物の1人(やはり女性)が、
「人類はしょせんグラスの中の泡」
と諦観気味に云う。ま~、おそらくはこのセリフが物語の核なのではあろう。『2001年宇宙の旅』を、観るのでなく体感する映画として位置づけるなら、この『アニアーラ』もまた同じ。違うアプローチでもって傑出しているオデッセイ(叙事詩-長い冒険旅行)と……、思う。
ただ断固違うのは、『2001年宇宙の旅』が結末を視聴者自身が考えなきゃいけない仕掛けになってるけど、こちらは明瞭に結末を見せていること。ペシミズム気分で終わらせず、諦観と達観をからめた仏教的な感触に近い未来を開示している。
どこかで味わったような感触だなぁと思ったけど、諸星大二郎がかつて『暗黒神話』の最終コマで描いてたなぁ、誰ぁ~れもいない地球。たかだか100年弱しか生きられない人間と、何100万年という時間の流れにある星々との差異。それを1コマで描写した諸星の跳躍が、この映画にもあるような。
『オデッセイ』 THE MARTIAN 2015 Blu-ray
NASAが火星で小型ヘリコプターの飛行に成功、というニュースがこの前にあったけど、それでちょっと火星に出向きたくなって本作再見。
月末になってやっと、プロジェクターで観た1本。
数年前、封切りの初日だかにイオンシネマで観たさいは、中国が友好的に描かれ過ぎて鼻白んだけど……、その後にDVD、さらにBlu-rayと買い換えて何度か観て、そこのシーンは
「まっ、いいや」
おおらかに見過ごしている。“欠点”を意識的に除外して眺めている。
火星でただ1人の孤独の中のユーモア。地球上での見解相違や保身やらのニンゲンっぽい闘争。その対比もおもしろい。
面白さの多くは、この映画の速度からきている。余計な部分がなく(中国とのくだりは除く)、そのアップテンポの中、アバの歌もボウイの歌もタイミングが素晴らしい。
何度観てもあきないのは、その速度に負けない個性発揮の、マット・デイモンを筆頭に登場のキャラクター全てが良いからだろう。どの人物にも真摯と滑稽があり、誰に焦点を合わせても存分にたのしめる。
Blu-rayでは、この火星での物語の数年後の後日談というか、ドキュメンタリー番組が収録されたという設定でリドリー・スコット自らが監督した小品などが収録されていて、これは美味しいデザート。映画本編の旨味を増量させる役を担い、な~かなかヨロシイ。いわゆるメーキングにはやや食滞してるんで、こういう、映画延長上での小品は実に気がきいていて好かアンバイ。
コロナ禍、映画視聴がDVDなんぞに頼らざるを得ない時、ハンバーガーに添えられたポテトチップスみたいに、今後、補完コンテンツが、増えてくんじゃないかしら?
それにしても、邦題の無残。原題『THE MARTIAN(火星人)』を換骨奪胎し、“オデッセイ”とした浅はかな愚鈍は犯罪的。
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昨日、マイケル・コリンズさんが亡くなったようだ……。
我がヒーローの1人。合唱。
下は2019年7月に書いた記事。